μSRを使って行われた銅酸化物高温超伝導体の磁性に関する研究を紹介する。具体的には,(1)超伝導相に隣接する反強磁性秩序相,(2)1/8異常とそれに関連するスピンと電荷のストライプ秩序,(3)不純物誘起磁性,(4)磁場誘起磁性,(5)擬ギャップ,(6)超オーバードープ領域における強磁性,(7)T′型銅酸化物におけるノンドープ超伝導について紹介する。さらに,超伝導体とその周辺物質の磁性を調べるためにμSR実験を始めようとする初心者がμSRのスペクトルを理解するために必要な最小限の事柄も紹介する。
銅酸化物以後に見出された3d電子系超伝導体であるNaxCoO2水和物や鉄系物質の超伝導の起源に関する研究において,中性子非弾性散乱がどのように関わってきたかを記述する。特に,強相関電子系の持つ磁気的活性さに注目した実験の結果とともに,銅酸化物とは異なる物質的特徴をも考慮に入れた研究をもとに,新しい固体電子論の構築への期待等を紹介する。
銅酸化物高温超伝導体系のひとつであるYBa2Cu3O6+xに対して,その超伝導発現機構や,その背後にある“異常な”物性現象の解明を目指して進められた研究の進展を,その初期からの研究を振り返りながら中性子非弾性散乱実験結果を中心に概観する。そこでは,モット絶縁体の金属化によって現われた強い磁性を中心に眺めるが,格子系に対してなされた実験結果をも同時に紹介する。