実験結果を要約すればつぎの如くである。
1) X-線Cathode rayおよびα-粒子を照射した場合と同様に
60Coγ-線照射により水は分解され過酸化水素の生成とpHの低下等, 複雑な変化が起るが一定照射線量以上の照射条件では過酸化水素の生成とpHの低下は平衡に達する傾向を示す。
2) 塩類溶液は一般に過酸化水素の生成ならびにpHの低下が少い。特に濃度の高い場合にこの傾向が強い (例えば食塩溶液)
3) 砂糖, 葡萄糖および寒天溶液等は過酸化水素の生成とpHの低下大である。
4)
60Coγ-線はX-線やCathode rayをpure waterとaerated waterに照射の場合と同じく後者の方が過酸化水素の生成とpHの低下大である。
5) 鮪鮮肉および蒲鉾等を殺菌するに十分な線量を照射しても過酸化水素の生成とpHの低下は明らかには認められないが色沢や香味等の変化が少し起った。これは色沢や香味の成分中には水の分解によって生じたfree radicalに対するfree radical acceptorかまたは変化されやすいものを含むためかと思惟される。
6) 以上, 水におよぼすγ一線の実験結果より食品の種類や成分の差により照射された結果, 生成される物質が異るが故に各種食品について個々に詳細に照射条件等につき研究する必要がある。
7) 筆者等の本報告および前報において発表したビタミンC, ビタミンA, 油脂およびグルタチオン等におよぼす作用について研究した結果より, 水溶液中における溶質の変化等についての放射線の作用機作についてはradical theoryが合理的であると思惟される。 (ウニ卵の二分裂時間の延長におけるdirectかまたはindirect actionかについての論議は別として)
終りに種々御援助をいただいた国立東京第二病院放射線科ならびに宝化学KK, 大沢政一., 田村重正の両氏と東京水産大学, 福島清氏, 学生, 鳥海重之, 近沢重男の両氏に厚く感謝の意を表する次第である。
なお本研究費の一部は厚生科学研究費ならびに文部省科学研究費による, ここに記して感謝の意を表す。
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