RADIOISOTOPES
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58 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 冨田 浩子, 林 克己, 渡邊 定弘, 喜多 保, 曽我 茂義, 新本 弘, 小須田 茂
    2009 年 58 巻 11 号 p. 719-726
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/28
    ジャーナル オープンアクセス
    非外傷性急性胸腰椎圧迫骨折患者84例(男27,女57,平均年齢71.3歳,年齢分布52~89歳)の脊椎骨SPECTを後向きに検討した。84例中,59例(70.2%)に悪性腫瘍の既往があった。12例(14.3%)が脊椎転移,72例(85.7%)が骨粗鬆症であった。馬蹄型集積が骨粗鬆症患者にみられる傾向があったが(脊椎転移25%,骨粗鬆症42%),脊椎転移と骨粗鬆症のみの各患者群において椎体集積分布パターンに明らかな差はみられなかった。20例(23.8%,20/84)に椎弓根集積がみられ,そのうち,9例(75.0%,9/12)が脊椎転移,11例(15.3%,11/72)が脊椎転移ではなかった(p<0.001)。単純X線写真またはCTでのpedicleサインあるいは椎弓根浸潤が脊椎転移9例(100%)にみられ,骨粗鬆症のみの11例にはみられなかった。84例に,SPECTでの椎弓根集積とpedicleサイン,椎弓根浸潤の所見を骨転移診断に用いると,感度,特異度,陽性反応適中度,陰性反応適中度はそれぞれ,75.0%(9/12),84.7%(61/72),45.0%(9/20),95.3%(61/64)であった。脊椎骨SPECTは非外傷性急性胸腰椎圧迫骨折に付加的情報を提供するが,単純X線写真,CTはその診断に依然重要な検査である。
  • 狩野 直樹, 土田 利幸, 坂本 信生, 廬 鶴, 西村 孔一, 小倉 大知, 今泉 洋, 高 立〓
    2009 年 58 巻 11 号 p. 727-741
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/28
    ジャーナル オープンアクセス
    土壌環境中における希土類元素(REEs),トリウム(Th),ウラン(U)の動態を把握するため,農耕土壌中のこれらの元素を水溶態F(ws),交換態F(ec),炭酸塩結合態F(cb),有機物結合態F(om),Fe-Mn酸化物結合態F(fm),残留態F(rd)の六つのフラクションに分別し定量した。土壌試料は,山形県酒田市豊里下藤塚,新潟県長岡市寺泊蛇塚の2か所における水田,畑及び各周辺の非耕作地で2005年4月,10月及び2006年4月に採取した。更に,土壌環境中の作物やこの農耕地で使われた肥料についてもいくつか分析を行った。
    その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)土壌中のREEは,大部分がF(rd)(すなわち,ケイ酸塩)で存在しており,ついでF(om)(8~28%),F(fm)(6~20%)の割合が比較的大きい。一方,Uに関しては,F(rd)(60~70%)の他,炭酸塩結合態F(cb)が多く見られた。(2)農耕地(水田,畑)における土壌中のU濃度は,非耕作地に比べて顕著に高濃度(約2倍)を示した。一方,REE,Thに関しては,土壌の利用形態(すなわち,水田,畑,非耕作地)間で大きな濃度変動は見られなかった。(3)畑の土壌におけるpH(H2O)-pH(KCl)値が,最も小さい。また,畑の土壌のEC(電気伝導度)は水田や非耕作地に比べて顕著に高い。(4)希土類元素濃度は,土壌>肥料>作物の順に大きいものの,作物及び肥料における希土類パターンは,土壌におけるパターンと概ね似ている。
ノート
  • 菅野 里美, 田野井 慶太朗, 中西 友子
    2009 年 58 巻 11 号 p. 743-747
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/28
    ジャーナル オープンアクセス
    リン酸は,植物のリン酸栄養環境応答時の認識機構に関わる重要な因子である。そこで,植物体内のリン酸吸収移行の特徴について知るためにリン酸欠乏下のダイズを用い32Pトレーサ実験を行った。トレーサ実験では,従来のImaging Plateと,リン酸の速い動きを定量的にイメージングできるリアルタイムRIイメージングシステムを用いた。その結果,リン酸は通常条件で栽培した場合には常に新葉への移行が古い葉への移行よりも約3倍高くなるのに対して,リン酸欠乏環境下では古い葉へも積極的に移行することが示された。
  • RAFIQUE Muhammad, RAHMAN Saeed ur, Shahida JABEEN, SHAHZAD Muhammad Ik ...
    2009 年 58 巻 11 号 p. 749-760
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/28
    ジャーナル オープンアクセス
    パキスタンを襲った2005年の地震後,カシミール州アジャド・ジャムの首都ムザファラバード市内の住宅でラドン濃度を測定した。居住者の理解と協力の下に場所と構造を考慮して35軒の住宅を選出し,2007年5月中旬から7月中旬の期間,各住宅の客間,寝室,食堂に検出器(CN-85を使用したパッシブ型)を設置した。ラドン濃度は,寝室,客間,食堂でそれぞれ24 ~ 518Bq m-3,41 ~ 380Bq m-3,32 ~ 67Bq m-3であった。地震前からある古い住宅の加重平均濃度は51 ~ 334Bq m-3であったが,地震後に建てられた新しい住宅では14 ~ 102Bq m-3とかなり低い値であった。パキスタンでは,住宅内のラドンについてまだ国の基準(あるいは対策レベル)がないことから,今回のデータを他国の値と比較した。高ラドン濃度の家屋がいくつかあったが,その原因は,換気状態が悪いことと,地震によって亀裂が生じたことによるラドンの新たな流入経路の出現が考えられる。
  • 竹内 淨, 柾 一成, 江本 勇治
    2009 年 58 巻 11 号 p. 761-766
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/28
    ジャーナル オープンアクセス
    2006年4月に川崎でテープろ紙に捕集した浮遊粒子状物質(粒径10μm以下)について,エネルギー分散型X線解析装置付き走査電子顕微鏡を用いて,粒子ごとの元素分析を行った。捕集した粒子の元素検出率は,硫黄を除くと,中国の黄土高原の黄砂とよく一致した。硫黄は,捕集した粒子からは検出されたが,黄土高原の黄砂では検出されなかった。以上の結果から,捕集した粒子は中国大陸から飛来した黄砂であり,輸送中の黄砂において二酸化硫黄の吸着や硫酸塩の付着が起きたと考えられた。
総説
  • 国岡 正雄
    2009 年 58 巻 11 号 p. 767-779
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/28
    ジャーナル オープンアクセス
    放射性炭素14濃度によるバイオマス製品におけるバイオマス炭素含有率測定法を詳細に報告した。バイオマス製品中のバイオマス炭素含有率を測定することは,市場において信頼性を確保するうえで非常に重要である。バイオマス炭素含有率は,ASTM D6866法に基づき現代炭素率(pMC,percent of Modern Carbon)から求めることができる。現代炭素率(pMC)の値は,標準物質中に含まれる放射性炭素14濃度とサンプル中に含まれる放射性炭素14濃度を比較することにより求めることができる。化成品中の放射性炭素14濃度は,液体シンチレーションカウンタ(LSC)と加速器質量分析(AMS)装置により求めることができる。LSCはバイオエタノール入りガソリン(E5,E10)のような液体サンプル中のバイオマス炭素含有率を求めることができる。一方,AMSは,ほとんどの有機,無機化合物,例えば,でんぷん,セルロース,エタノール,ガソリン,無機添加剤を含むポリマー複合体のサンプル中のバイオマス炭素含有率を求めることができる。AMSはガス状や固体状のサンプルを測定することができる。これは,AMSが上記サンプルを化学変換を含む前処理により作成したグラファイトを測定するためである。木質系バイオマスを原料とするバイオマス製品は,100%以上のバイオマス炭素含有率が得られることが示された。これは,1950年頃に行われた大気圏核実験により人工的に放射性炭素14が大気圏に注入されたためである。今後,国際標準規格(ISO規格)としての測定法とするために,より多くのデータ収集と補正法の開発が必要である。
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