土壌環境中における希土類元素(REEs),トリウム(Th),ウラン(U)の動態を把握するため,農耕土壌中のこれらの元素を水溶態F(ws),交換態F(ec),炭酸塩結合態F(cb),有機物結合態F(om),Fe-Mn酸化物結合態F(fm),残留態F(rd)の六つのフラクションに分別し定量した。土壌試料は,山形県酒田市豊里下藤塚,新潟県長岡市寺泊蛇塚の2か所における水田,畑及び各周辺の非耕作地で2005年4月,10月及び2006年4月に採取した。更に,土壌環境中の作物やこの農耕地で使われた肥料についてもいくつか分析を行った。
その結果,主として以下のことが明らかになった。(1)土壌中のREEは,大部分がF(rd)(すなわち,ケイ酸塩)で存在しており,ついでF(om)(8~28%),F(fm)(6~20%)の割合が比較的大きい。一方,Uに関しては,F(rd)(60~70%)の他,炭酸塩結合態F(cb)が多く見られた。(2)農耕地(水田,畑)における土壌中のU濃度は,非耕作地に比べて顕著に高濃度(約2倍)を示した。一方,REE,Thに関しては,土壌の利用形態(すなわち,水田,畑,非耕作地)間で大きな濃度変動は見られなかった。(3)畑の土壌におけるpH(H
2O)-pH(KCl)値が,最も小さい。また,畑の土壌のEC(電気伝導度)は水田や非耕作地に比べて顕著に高い。(4)希土類元素濃度は,土壌>肥料>作物の順に大きいものの,作物及び肥料における希土類パターンは,土壌におけるパターンと概ね似ている。
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