海水の微量のコバルトの鉄, アルミニウム, マンガン, ケイ素の水酸化物, 海底堆積物およびイオン交換樹脂への吸着挙動を検討した。水酸化物への吸着の程度はpHが6から9に上昇するにつれて増加し, アルミニウムの水酸化物への吸着が最も著しかった。水酸化アルミニウムへのコバルトの吸着はpH9において自然海水よりも人工海水で高い値を示し, 一方海水中の農度100μg/
lのコバルトはpH8以上でそれより低濃度の場合よりも低い吸着を示した。
pH5~9の範囲において, 海底堆積物へのコバルトの分配係数はpH7で最小であったが, 陽イオン交換樹脂では海水のpHの上昇とともにわずかに減少した。種々の濃度の堆積物およびイオン交換樹脂への分配係数の値から, 堆積物の1つへの吸着は陽イオン交換樹脂への吸着と同様の単一種の吸着機構によるが, 他の堆積物では陽イオン交換樹脂とは異なる他の吸着機構も存在することが予想された。有機物の影響については, グリシンおよびグリコール酸の濃度の増加とともに海底堆積物および陽イオン交換樹脂への吸着は減少した。他のアミノ酸では, アスパラギン酸の阻害が最も著しく, アラニン, ロイシンおよびグルタミン酸はグリシンと同程度の影響を示した。他方, リジンでは他のアミノ酸と異なってコバルトの吸着はいっそう強まる傾向が認められた。コバルトの吸着へのアミノ酸の阻害の傾向はCo
2+と各アミノ酸のキレート生成定数の順とほぼ一致した。
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