新しいGM管として,計数ガスに空気を,クエンチングガスにエタノール蒸気を,陽極に“とじ針”を,そして陰極にプラスチック円筒容器の内側へ挿入した導電性の紙を用いたGM管を作製した。針先端の電位分布やガス増倍度を計算によって求めた結果,及び実験的に調べたプラトー特性,ならびにβ線の入射位置や針の先端の位置と検出効率との関係などから,この計数管の動作特性について検討した。プラトー特性の比較的大きな勾配は,印加電圧の上昇につれて検出有効体積が増大するためであることを明らかにした。針陽極型と線陽極同軸型ではガス増倍の様子が異なることを示した。この計数管は極めて容易に手作りでき,かつ計数動作は十分な安定性を持っているので,放射線教育実験に適している。
“とじ針”を陽極にした放射線教育用の空気GM管は窓を自由に開閉できるので,GM管の内部に試料を入れることができる。このことによってアルファ線の吸収実験や,放射線以外の各種の科学教育実験が可能になった。放射線以外の教育実験としては,各種の金属板からの光電子放出の実験,アルミニウム表面の酸化による光電子放出の減衰の実験,種々のフィルムの紫外線吸収の実験及び金属板の表面からのエキゾ電子放出の実験などを行った。提案した実験は放射線教育実験及び他の科学教育実験に有用であると思われる。
鳥取県鳥取市にある鳥取砂丘海岸の砂浜及びそれに続く砂丘上94地点で自然γ線の線量率を測定した。線量率は汀線から砂浜終端部にかけて漸増し,斜面と砂丘全域でほぼ一定の値を示した。スペクトル測定の結果,カリウム及びウラン濃度は砂浜と砂丘でほぼ同じレベルであったが,トリウム濃度は砂丘の方が高い値であった。以前に測定した遠州灘海岸にある三つの砂丘の事例と比較し,砂浜–砂丘系における自然γ線の線量率分布に関して個々の砂丘の特異性と共通性について述べた。