RADIOISOTOPES
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62 巻, 7 号
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原著
速報
  • 石井 伸昌, 田上 恵子, 川口 勇生, 内田 滋夫
    2013 年 62 巻 7 号 p. 447-453
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    放射性セシウムで汚染された浄水発生土を用い,コマツナによる137Csの経根吸収について検討した。赤玉土,黒土,腐葉土からなる土壌(0S土壌),0S土壌4.5Lに対して浄水発生土を0.5L混合した土壌(0.5S土壌),及び0S土壌3.5Lに浄水発生土1.5L混合した土壌(1.5S土壌)を調整し,コマツナを栽培した。栽培過程において各土壌で栽培したコマツナの草丈に差はなく,また収穫時の生重量は0S土壌よりも浄水発生土を含む土壌で栽培したコマツナで重くなった。これらの結果から,浄水発生土はコマツナの成長を抑制しなかったことがわかった。0S土壌,0.5S土壌,1.5S土壌で栽培したコマツナの収穫時における乾燥重量あたりの137Cs濃度は,それぞれ1.89Bq/kg,153Bq/kg,400Bq/kgであった。これらを生重量あたりに換算し134Csの濃度との和から放射性セシウムの濃度を求めたが,いずれも新基準値である100Bq/kgを超えることはなかった。また,浄水発生土を含む土壌からコマツナの乾燥重量あたりの137Cs移行係数は,混合した浄水発生土の容積比にかかわらず0.1であり,生重量あたりの移行係数は0.007であった。これらの値は,我が国の農地で栽培した葉菜類の137Cs移行係数の範囲内であった。
  • 高田 大輔, 佐藤 守, 阿部 和博, 安永 円理子, 田野井 慶太朗
    2013 年 62 巻 7 号 p. 455-459
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    ブドウ旧器官に存在する放射性セシウムの他器官への移行について,汚染穂木を非汚染樹体に接ぎ木することで調査した。137Csのうち穂木中の約20%が新生器官に移行した。穂木の樹皮の濃度はほとんど変化しなかったが,材の濃度が低下した。旧枝から果実への移行の寄与は,既存の研究による土壌からの移行と比べると,極めて高いことを考察した。
  • 佐々木 侑輝, 浅木 了, 岩田 高広, 田島 靖久, 松田 達郎, 宮地 義之, 中島 和夫, 糠塚 元気, 吉田 浩司
    2013 年 62 巻 7 号 p. 461-464
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    福島第一原子力発電所事故後(2011年4月30日)に福島県で採取した土壌に対して,磁石に吸引された土壌成分(磁性成分)とそれ以外の成分(非磁性成分)に分離後,それぞれの成分の放射性セシウム濃度分析を行った。磁性成分の単位重量あたりの放射性セシウム濃度は非磁性成分に比べ高く,その比は最大4倍近くに達した。
総説
  • 石榑 信人
    2013 年 62 巻 7 号 p. 465-492
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    内部被ばくの線量評価は,そのシステムにヒトの生理学的・解剖学的特性が組み込まれており,本質的に複雑である。さらに,被ばく源である放射性物質に関しても,化合物の種類,エアロゾルの粒子径など,その物理・化学的性質の多様性が被ばくの状況を一層複雑なものとしている。本稿では,内部被ばくの防護量について,外部被ばくとの本質的な相違点をいくつか取り上げ,それらに対してどのような考え方に立ち内部被ばくの防護量の概念が確立されているかについて述べるとともに,実効線量係数を,それを構成する要素に腑分けし解説した。
連載講座
メスバウアースペクトロメトリーの基礎と応用
  • 小島 憲道
    2013 年 62 巻 7 号 p. 493-507
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル オープンアクセス
    電子配置がdn(n=4-7)の八面体配位遷移金属錯体の中には,基底状態が高スピン状態と低スピン状態の境界領域にあり,温度や圧力などの外部条件を変えることにより基底スピン状態が変化する錯体があり,このような錯体をスピンクロスオーバー錯体と呼んでいる。これらの金属錯体のうち,[Fe(ptz)6](BF4)2(ptz=1-propyltetrazole)において,d-d遷移に相当する光を低温で照射することにより,基底状態が低スピン状態から高スピン状態に転移し,これが凍結されるという光誘起相転移現象(LIESST: Light Induced Excited Spin State Trapping)が発見され,これがブレークスルーとなりLIESSTを示すスピンクロスオーバー錯体が数多く報告されてきた。
    一方,配位子場がスピンクロスオーバー領域にある混合原子価錯体では,系全体の自由エネルギーが最も安定になるようにスピンと電荷が連動して起こる新しい型の相転移現象が期待される。近年,筆者らは,強磁性を示す鉄混合原子価錯体(n-C3H7)4N[FeIIFeIII(dto)3](dto=C2O2S2)において,120K付近でスピンエントロピーを駆動力とした新しい型の相転移である電荷移動相転移が起こることをメスバウアースペクトロメトリーで発見した。この電荷移動相転移及び強磁性は対イオンのサイズに大きく依存することから,光で電荷移動相転移及び強磁性を制御することを目的として,光異性化分子であるスピロピランを対イオンとして導入した光応答性有機・無機複合錯体(SP)[FeIIFeIII(dto)3](SP=spiropyran)を開発した。この系では,(SP)[FeIIFeIII(dto)3]に紫外光を照射することにより,SPの光異性化を媒介として[FeIIFeIII(dto)3]層で電荷移動相転移が起こり,強磁性転移温度が増幅されることを見出した。また,(n-CnH2n+1)4N[FeIIFeIII(mto)3](mto=C2O3S)では,FeIIIO3S3サイトにおいて,57Feメスバウアースペクトロメトリーより速い時間スケールで低スピン状態(S=1/2)―高スピン状態(S=5/2)間のスピン平衡が起こること,FeIIIO3S3サイトの低スピン状態を媒介としてFeII-FeIIIの価数揺動が誘起されることを,メスバウアースペクトロメトリーにより見出した。
中性子散乱による原子・分子のダイナミクスの観測
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