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64 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集
ホウ素中性子捕捉療法BNCT
  • 古林 徹
    2015 年 64 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    特集の背景,目的と構成を概説した後,40年以上に亘るBNCTの放射線医学物理工学の研究開発の経験を踏まえて,BNCTの歴史,原理と特徴,BNCTが岐路に立っている状況,BNCTそのものの将来性などについて述べた。原子炉から加速器BNCT治療システムへ移行しようとしている今だからこそ,BNCTの長所だけでなく,二次発がん性などの短所も積極的に説明することが不可欠である,という認識に立っている。
  • 古林 徹
    2015 年 64 巻 1 号 p. 13-28
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    放射線医学物理工学の視点から,(1)現在利用されている原子炉BNCT照射システム,(2)今後のBNCTの発展に不可欠な加速器BNCT照射システムの特徴,開発の現状と課題,(3)望ましい次世代加速器BNCT照射システム,(4)研究開発における研究分野間の協力関係の重要性,などについて,40年以上に亘るBNCT研究開発の経験を踏まえて概説した。本報告も序説と同様BNCTの長所と短所の両面から検討した。
  • 田中 浩基
    2015 年 64 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    中性子捕捉療法を実施するためには,ホウ素薬剤と強力な中性子源が必要である。1951年に米国ブルックヘブン国立研究所において世界初のBNCTが実施されてから,これまでに世界中で1000例を超える臨床研究の照射が実施されてきた。研究用原子炉において臨床研究が実施されてきたが,経年化が進み廃炉を決定した研究用原子炉が多くなってきた。2014年9月現在で積極的にBNCTの臨床研究を実施しているのは京都大学研究用原子炉と台湾国立清華大学原子炉の二つのみである。<br>1980年代から研究用原子炉に代わるBNCT用中性子源として加速器を用いた中性子源の研究開発が世界中で進められてきた。加速器の電流不足,ターゲットの健全性,などの課題がありBNCTを実施可能な中性子源は実現しなかった。そこで2007年3月に京都大学と住友重機械工業は加速器中性子源に関する共同研究を開始し,30MeV陽子サイクロトロンとベリリウムターゲットの組み合わせによる中性子源の実現に成功した。本稿ではこのシステムの紹介を行うとともに,国内のBNCT用加速器中性子源の現状について述べる。
  • 熊田 博明
    2015 年 64 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    BNCTの線量評価は,まずホウ素(10B)と中性子との反応によって生じるホウ素線量を評価する。さらに生体組織を構成する窒素や水素と中性子との反応で生じる線量や,ビームに混入するγ線による付随線量も評価しなければならない。中性子の粒子挙動は複雑であるため,BNCTの線量評価にはモンテカルロ法が用いられる。したがってBNCT用の治療計画システムには開発当初からモンテカルロ線量計算エンジンが実用化されている。
  • 中村 浩之
    2015 年 64 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では,現在ホウ素薬剤としてBSHとBPAが,脳腫瘍,悪性黒色腫,そして頭頸部癌に用いられているが,本治療法の適応疾患拡大及び治療効果を高めるためにも,がん組織に選択的に10Bを送達する新しい薬剤の開発は吃緊の課題である。薬剤開発では,がん細胞親和性を持つ低分子ホウ素化合物と,抗体やリポソーム,エマルジョンなど生体高分子や分子集合体を利用したホウ素デリバリーシステムの2つの戦略に分類できる。本稿では,最近のBNCT用ホウ素薬剤の開発について紹介する。
  • 鈴木 実
    2015 年 64 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    ホウ素中性子捕捉療法(以下BNCT)は,現在まで中性子源として,研究用原子炉を使用してきた。近年,小型加速器による中性子源の開発に成功し,加速器BNCTシステムが多くの病院に普及することが期待される。今後BNCTが,より多くの患者に対して適応できる可能性がある。BNCTの適応拡大のためには,加速器BNCTシステムを使用すること,新しいホウ素化合物の開発などの様々な観点からの研究を推進していかなければならない。
  • 増永 慎一郎
    2015 年 64 巻 1 号 p. 67-77
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    根治的放射線治療の原則は,患者に急性障害をぎりぎりまで耐えさせ,晩期障害を引き起こさない限界の耐用線量までの線量で局所制御を達成することである。治療可能比が,1以上の場合には放射線照射のみで正常組織の晩期障害を引き起こさずに病変部を治癒させることができるが,1以下の場合には病変部の治癒の前に正常組織の晩期障害が引き起こされ,放射線照射のみでは病変部の制御は不可能である。病変部に選択的に十分量の10B(Boron-10)を均一に分布させた中性子捕捉療法では,治療可能比が非常に大きく,正常組織の有害事象をほとんど引き起こさずに病変部を治癒させ得る。
  • 山本 哲哉
    2015 年 64 巻 1 号 p. 79-91
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は従来の放射線治療と全く異なる腫瘍細胞選択的粒子線治療である。悪性神経膠腫,特に神経膠芽腫は脳内で浸潤性に広がる性質を有するため外科的な摘出が不可能であり,また有効な薬物治療がなかったことから,BNCT研究開始当初より重要な研究対象とされてきた。近年,悪性神経膠腫の集学的治療の各分野,すなわち手術支援システムを中心とした外科治療,放射線治療法,化学療法剤の各領域での目覚ましい発展がみられている。本稿では,現在の集学的治療の状況を踏まえ,悪性神経膠腫のBNCTの概要とその役割の変化について概説する。
  • 川端 信司
    2015 年 64 巻 1 号 p. 93-102
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    これまでのホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は,研究用原子炉を中性子源として行われてきた。このため,非常に注目される放射線がん治療法でありながら,その利用者は限定的で広くは普及していない。しかし最近,小型加速器を中性子源とした原子炉不要のBNCTが可能となり,これを用いた治療の試みが開始されるに至った。ここでは,筆者らが原子炉BNCTによって治療を行った脳腫瘍患者の良好な治療成績を紹介し,今後標準的治療法を目指す,加速器を中性子源としたBNCTへの期待を述べたい。
  • 加藤 逸郎
    2015 年 64 巻 1 号 p. 103-114
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    筆者らは,腫瘍選択性のあるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が難治性の頭頸部癌の治療に適すると考え,2001年に京都大学原子炉実験所で世界最初に実施した。以来2013年2月まで治療法がない再発した37例に対しBNCTを実施した。全37例の奏効度は完全奏効:19例(51%),部分的奏効:14例(38%)(奏効率89%),増悪:3例(8%),未評価:1例(3%)であった。生存率は4年:42%,7年:36%で,3人に1人は,7年以上生存している。BNCTは,再発患者の生存率だけでなく,機能温存にも寄与する有望な治療法である。
  • 平塚 純一, 神谷 伸彦, 笹岡 俊輔, 桑原 千晶
    2015 年 64 巻 1 号 p. 115-121
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/01/28
    ジャーナル オープンアクセス
    BPAは皮膚悪性黒色腫BNCTのために採用されたホウ素キャリアーである。BPAは必須アミノ酸のチロシンにホウ素原子が結合したもので,チロシンがメラニン合成の前駆物質であることから,メラニン合成能の亢進している黒色腫で選択的集積性を認めている。黒色腫BNCTは,1987年神戸大学の三嶋豊らのグループによりその臨床研究が始まった。川崎医科大学でも2003年から皮膚悪性黒色腫BNCTを10例に実施してきた。今回,皮膚悪性黒色腫に対するBNCTの現状を自験例を中心に概略する。
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