福島第一原子力発電所(FDNPP)からの放射性セシウムの移行経路を同定するため,新潟及び山形県の沖合において海底土を採取し,放射能を測定した。福島第一原子力発電所に由来する134Csは酒田沖及び加茂沖の海底土から検出(0.16±0.03〜0.68±0.02 Bq/kg)されたが,直江津沖の海底土からは検出されなかった。これらの結果より,FDNPP事故由来の放射性セシウムの流出源が直江津の北東地域から阿賀野,最上川を含む酒田までの地域である可能性が示唆された。
認証標準物質を用いて環境試料の放射能濃度定量を行う放射線教育用教材の開発を行った。この教材では,放射性セシウムの一般食品の基準値程度の低い放射能濃度を定量できる。様々な土壌試料と食品試料の137Csの放射能濃度を定量する試みを,東京学芸大学大学院修士課程正規授業で実践した。その結果,土壌の汚染や食品の安全に関して受講者の理解が進んだだけでなく,放射線災害に対するリスク認知の主観性や対策の公平性の観点からも意識向上が図られていることがわかった。
2011年3月に発生した東京電力福島第一発電所事故に関して,燃料デブリの性状評価や含まれている核燃料物質や核分裂生成物,マイナーアクチノイドの炉内への移行挙動評価,環境中の汚染状況評価とデブリを含む廃棄物の処理・処分についての研究例を紹介した。さらに,当該研究の核燃料サイクルのおける位置づけと,研究展開に必要な核燃及びRI使用施設の在り方についても述べた。
東京大学原子核研究所は,1997年に高エネルギー加速器研究機構に統合され,その役割を終えた。研究所を廃止するに当たり放射線施設の除染と管理区域解除,有害物質の除去を行い,跡地は西東京市に売却され,西東京市の憩いの森公園として利用されている。ここでは,放射性汚染の除染,有害物質除去,住民説明会について記載する。