平成10年, 岩手山周辺で火山性地震が頻発し, 気象庁等が噴火予知のための様々な観測を開始した。日本アイソトープ協会滝沢研究所は, 岩手山麓に位置しており, 岩手山周辺の定点から定期的にサンプリングした湧水及び温泉水の水温, 導電率, pH, 微量元素濃度及びラドン濃度を測定し, その変化と火山活動の関係を調査してきた。微量元素濃度は仁科記念サイクロトロンセンターに設置したPIXE分析装置を用い, ラドン濃度は鉱泉分析指針に従って分析した。水温は, 湧水が10℃前後, 温泉水が30~40℃であった。導電率は, 湧水は10~20mS/m (一か所: 70mS/m) , 温泉水は150~250mS/m (一か所: 70mS/m) であった。pHはどの地点でもほぼ中性であった。微量元素は全ての場所で, Mg, Na, Si, S, Cl, K, Ca, Fe, Br及びSr (0.01~1000ppm) が検出された。ラドン濃度は0.5~7.0Bq/Lで, 温泉水と湧水で濃度の違いは見られなかった。この期間の測定結果からは火山活動と試料中の水温, 導電率, pH, 微量元素濃度及びラドン濃度との明確な因果関係は観察できなかった。
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