シーベルトメータによる中性子線量率の直接的な読み取りと比べて, 減速材中に挿入されたパッシブ熱中性子検出器は, 中速エネルギーや高速エネルギー中性子測定とともに, モニタリング期間にわたる低レベル中性子線量率の長期集積線量測定の可能性を示している。ここでは, 直径10cm, 厚さ0.5cmの円板状アクリル樹脂板を15cm重ね, その間0.5cm毎に熱中性子検出器としてCaSO
4: Tm+
6LiF及びCaSO
4: Tm+
7LiFからなる熱蛍光素子の対を挿入した簡易パッシブ中性子線量計を作製し,
252CfやPu-Be中性子源を用いたいろいろな減速中性子場でその中性子線量計の性能並びに特徴について考察した。更に, その中性子線量計の10
-9MeVから20MeVまでの応答関数を作成した。最後に, その中性子線量計の読み取り値から中性子エネルギースペクトルを推定し, 精度の良い中性子線量評価法を開発するとともにその適応性について検討した。
中性子線量計の読み取り値と作成した応答関数を用いてアジャストメントされた中性子エネルギースペクトルは,
252Cf並びにPu-Be中性子源の中性子エネルギースペクトルを精度良く再現した。また, 推定された中性子エネルギースペクトルにもとづき評価した中性子線量は, いろいろな減速中性子場において, 1.06×10
-4から1.45×10
-4Gy/Sv, 平均 (1.26±0.14) ×10
-4Gy/Svであり, シーベルトメータとほぼ同じ中性子線量応答 (中性子線量に対する
60Coγ線に等価な吸収線量) を示した。その結果, 今回開発した簡易パッシブ中性子線量計は, いろいろな放射線場における熱中性子から数MeVの範囲の中性子エネルギーに対する平常時中性子モニタリングのための有用な測定器であることを示唆している。
抄録全体を表示