生態系は放射線以外のさまざまな有害因子にも曝露されているので, 放射線の生態系影響を評価する際には, 放射線とそれ以外の有害因子の複合影響を考慮する必要がある。本研究では, 水圏微生物生態系を模擬したモデル実験生態系 (マイクロコズム) に対する放射線と酸性化の複合影響を調べた。
生産者として鞭毛藻
Euglena gracllis Z, 消費者として繊毛虫
Tetrahymena thermophila B, 分解者としてバクテリア.
Escherichia coli DH5αから成るマイクロコズムに, (1)
60Coγ線を100Gy照射, (2) 酸性雨を模擬した0.1N HNO
3と0.1N H
2SO
4の等量 (v/v) 混合酸を加えてpH4.0に酸性化, (3) γ線100Gy照射直後にpH4.0に酸性化する処理をそれぞれ行った。
γ線単独処理では, E.coliの細胞数が, 一時的ではあるが対照よりも有意に減少した。その他の生物種の細胞数やクロロフィル
aおよびATP濃度には影響が見られなかった。酸性化単独処理では, 細胞数については
T.thermophllaが有意に減少し,
E.coliはわずかに減少し,
Eu.gracihsはわずかに増加した。また, マイクロコズムのクロロフィル
a濃度はわずかに増加し,
Eu.graclhs細胞のクロロフィル
a含量は減少した。ATP濃度は増加した。γ線と酸性化複合処理では,
E.coliは一時的ではあるが有意に減少し,
T.thermophllaは有意に減少し,
Eu.gracilisはわずかに増加した。また, マイクロコズムのクロロフィル
a濃度はわずかに増加し,
Eu.gracilis細胞のクロロフィル
a含量は減少した。ATP濃度は増加した。したがって, γ線と酸性化の複合処理は, マイクロコズムの細胞数, クロロフィル
aおよびATP濃度に相加的な影響を与えたと結論できる。
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