RADIOISOTOPES
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58 巻, 10 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • 田上 恵子, 石井 伸昌, 内田 滋夫
    2009 年 58 巻 10 号 p. 641-648
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    放射性炭素(14C)の土壌-水稲間移行係数(TF)を得るために,炭素安定同位体のTFを,日本全国から採取したコメと,同時にサンプリングした土壌試料中の安定同位体比(12Cと13C)及び全炭素量を測定することで推定した。炭素の同位体比については,δ13C値で示した。まず玄米,白米及び糠についてδ13C値を比較した。結果,白米は光合成産物をそのまま蓄積していることから,本研究目的に適していることがわかった。白米と土壌のδ13C値には相関係数は低いが相関があったことから,土壌中の炭素が水稲に利用された可能性が示唆された。そこで,統計的なアプローチにより,土壌起源の炭素の水稲中割合を求めてみた。その結果,水稲の光合成による13Cフラクショネーションを-19‰,大気中δ13C値を-8‰という,最も実際に適した値に設定したときに,水稲中炭素は最大で1.6%が土壌起源となることがわかった。この結果と全炭素濃度の結果から,安定炭素の移行係数として0.05~0.5が得られ,14Cの植物によるフラクショネーションが無視できることから,この値をそのまま14Cの移行係数として用いることができると考えられた。
ノート
  • 佐藤 千文, 網谷 美里, 今本 奈津美, 山田 明史, 桃崎 壮太郎, 細井 理恵, 井上 修
    2009 年 58 巻 10 号 p. 649-654
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    グリア代謝抑制時において99mTc-HMPAOの脳におけるretentionが変化するか否かについて,14C-N-イソプロピルパラヨードアンフェタミン(14C-IMP)とのダブルトレーサオートラジオグラフィ法により検討した。ラット右側線条体にフルオロクエン酸(FC,1nmol/μL,2μL)を微量注入し,4時間後に99mTc-HMPAO(74MBq)と14C-IMP(185kBq)とを同時に尾静脈より投与し,5分後に断頭した。迅速に冷凍切片を作成し,イメージングプレートに6時間コンタクトして99mTc-HMPAOのオートラジオグラムを得た。99mTcを減衰させた後,同一切片を再度1週間コンタクトして14C-IMPの画像を得た。画像上の左右の大脳皮質と線条体に関心領域を設定し,それぞれの部位における放射能濃度(PSL/mm2)を求めた。FC注入側の線条体では99mTc-HMPAO,14C-IMP共に対側と比較して約160%に集積が増加した。グリア細胞のTCAサイクルを完全に抑制しても99mTc-HMPAOのretentionには全く影響を与えないことが判明した。したがって,神経細胞において99mTc-HMPAOを極性化させる十分なグルタチオンが存在するものと推測される。各画像を20×25の小分画に分割し,各分画における99mTc-HMPAOと14C-IMPの放射能濃度をプロットした結果,正常部位においても,グリア代謝抑制部位においても両者の間に良好な相関関係を認めた。
資料
  • 社団法人 日本アイソトープ協会 医学・薬学部会 インビトロテスト専門委員会 イムノアッセイ研究会
    2009 年 58 巻 10 号 p. 655-708
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    第30回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ結果を報告した。参加施設数は108,サーベイ対象は,ホルモン,腫瘍マーカー,薬物など35項目であった。non-RI法による参加が約90%を占めた。試料は,市販の管理血清5種類及び20施設に対してはヒトプール血清を同時に配布し,調査した。結果は,全項目キット内・キット間変動ともほぼ例年通りのばらつきを示した。今回と前回とでは測定試料が変わっている項目があり,全く同じには比較できないが,今回はキット内変動(CV%)が10%以内の項目が88%であった。これはほぼ満足できる結果であった。ヒトプール血清を使用したとき,キット間差の程度が多くの項目で改善したことは,市販管理血清を用いたサーベイについては再評価を要する部分のあることが示唆された。
講座
医療用PET薬剤
  • 伊藤 浩
    2009 年 58 巻 10 号 p. 709-717
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    PET(positron emission tomography)で測定可能な脳神経伝達機能には大別すると前シナプスと後シナプスの機能があり,ドーパミン作動性神経系の後シナプス機能であるドーパミンD2レセプターの結合能や分布密度の指標は[11C]racloprideや[11C]N-methylspiperoneを用いて測定することができる。ドーパミン作動性神経系は,統合失調症やパーキンソン病などの病態に深く関与しており,パーキンソン病に関しては他の変性疾患との鑑別診断におけるドーパミンD2レセプター結合能の測定の有用性が報告されている。統合失調症に関しては,その治療薬である抗精神病薬の主な作用がドーパミンD2レセプターの遮断作用であるため,その遮断作用をPETによりレセプター占有率として定量的に評価することが可能であり,薬物治療効果の判定に応用されている。この手法は臨床試験における新規治療薬の用量設定にも応用可能であり,今後のPETの新しい活用法としての発展が期待されている。
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