本研究は, 1本針3本糸縁かがりミシン (ステッチ形式: 504) の縫製における動的縫糸張力を測定し, それがステッチ形態やシームの特性, すなわちシームの伸長性や笑いなどと, どのように関係するのかを検討したものである.得られた結果は, 次のとおりである.
1) 縫製時の針糸, 上ルーパ糸および下ルーパ糸の動的な縫糸張力を測定した結果, それぞれの縫糸に特徴ある張力ピークが観察された.張力設定条件によりステッチは様々な形態をとるが, 各縫糸の張力ピークとステッチ長さを説明変数として判別分析を行い, 生じるステッチ形態を2つおよび4つのグループに分けることができた.また, 動的縫糸張力の代わりに静的縫糸張力を用いても, ステッチ形態の判別をある程度行うことができた.
2) 単位長さあたりの縫糸消費長を目的変数とし, 各縫糸張力ピーク及びステッチ長さを説明変数として重回帰分析を行った.その結果, これら変数により縫糸消費長さの推定が可能であった.判別分析の場合と同様, 静的縫糸張力によっても縫糸消費長の傾向がおおむね推定可能であった.
3) シームの伸長率は, 3本の縫糸の中で最も短い糸の消費長により決定される.一般に両者の間には直線関係が成り立ち, それぞれの縫糸消費長を把握することによりシームの伸長率が推定できる.
4) シームの笑いの量には, 針糸の状態が大きな意味を持つ.針糸の消費長に着目することにより, 笑いをある程度定量的に把握することが可能であった.
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