1本針本縫ミシンにおいて, 2種類の送り長さによる縫速度と共に変化する縫目形成を調べている.送り長さがダイヤル目盛りで3の場合 (静的縫目長さは3.1mm) , 縫速度の増大に伴って縫目の交絡点が上方へ移動し, 縫目も締まる.しかし, ダイヤル2 (静的縫目長さは2.0mm) では, 交絡点は2, 000spmまでは上方に移動するが, その後は下方へ動く.前者のダイヤル位置で生じている現象は上糸と下糸の締まり率に及ぼす引締張力と送り長さ (縫目長さ) の依存性によって説明することができる.すなわち, 引締張力の増加が縫目に存在する上糸長の減少を引き起こし縫目を締め, 一方において送り長さの増加が縫目中の下糸長を長くするので, 縫目の交絡点が上方に移動する.ダイヤル位置2の場合には, 低速においては引締張力によって, 高速においては縫速度に支配された送り長さによって, 縫目の交絡点の位置が変化する.本研究から, 押さえによる縫目の押さえ状態が縫目形成に影響を与えていると結論付けられる.
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