衣生活において重ね着の場合の滑り具合を知るために, 各種の織物表面に現われる分岐繊維を中心に, その滑り摩擦 (傾斜角) を測定した.
その結果, 絹織物 (朱子 (サテンクレープ) , 羽二重, 縮緬) はもちろん, 他の繊維類で製織したモスリン, タフタ等においても, 織物相互をたて糸の同一の方向に滑らせた場合は, 分岐繊維がからみやすいため傾斜角は大きく滑りが悪いが, たて糸とよこ糸を直角方向に滑らせた場合は, 傾斜角が小さく, 比較的滑りがよい,
また荷重を増加するほど傾斜角は小さく, 滑りは良好の傾向を示した.
朱子織物相互間では使用原糸の分岐繊維の状態と滑り摩擦とは, 多少関連性があるように見受けられるが, 羽二重, 縮緬のそれぞれの間においては明確には分かりにくい.
朱子の上にモスリンを滑らせた場合は, 構成繊維の種類に関係なく滑りが悪いが, タフタ等は滑りがよい.
また, たて糸とよこ糸のクリンプ角と滑り摩擦との間には, 織物をよこ方向に滑らせた場合は負の相関を示すが, たて方向に滑らせた場合は正の相関を示し, クリンプ角も滑り摩擦と影響をあたえる一因子であること等の知見を得た.
抄録全体を表示