ポリエステル繊維をカセイソーダ水溶液で処理すると, 表面から逐次溶解され, それに伴って諸性質が変化する.
本実験では, カセイソーダ水溶液を用いて種々の条件で処理したポリエステルフィルムへの分散染料の平衡染着量を測定し, さらにアルカリ処理したフィルムの染色性をフィルムの内部構造の変化との関連において検討した.その結果
(1) 弱い処理条件では, フィルムは表面からかなり均一に溶解され, 繊維構造にほとんど変化はみられなかった.しかし強い条件ではOH
-の攻撃は内部までおよび, 内部構造に変化が認められた.これらの結果はフィルムの密度変化によく対応している.
また, 加水分解に伴いフィルムの引張強度はフィルムの減量率の上昇につれて低下した.強度低下は減量率の低いところで目立ち, 減量率の上昇に伴って強度の低下は緩慢となった.この事実は, 加水分解が進行するにつれてフィルムが高密度化すること, すなわち結晶化度の向上に関連づけることができる.
(2) フィルムの減量率上昇に伴い染着量は増大した.この結果はボイド容積の増大と対応すると考えられる.
(3) アルカリ処理布の色濃度の低下は, 繊維のfine化や繊維表面の凹凸化により, 布表面での乱反射が増大したものと説明することができる.
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