本報告では3.11(東北地方の大震災)の震災前と震災後の消費者の意識や行動を比較した.本報告の調査対象者は関西圏に在住している大学生たちとした.調査方法としては,質問紙によるアンケートを実施した.
結果,大学生たちは将来に備える気持ちとエコに対する意識を持っていた.彼らは震災前と比較すると,今は必要なものしか買わなくなった.また使い捨てのものも買わなくなった.特に装飾品や高額品は買わないという結果が得られた.彼らが購入するものは小さくて軽いものが多くなった.具体的には,雑貨が大学生には人気であった.大学生たちは,雑貨を購入することが,震災前よりも増えた.
シーツとベッドパッドの違いが暑熱環境での入眠過程および寝床内気候に及ぼす影響を検討した.被験者は成人男性8名とし,29℃70%RHの環境で綿のシーツとポリエステルのベッドパッド(条件C)と麻のシーツとベッドパッド(条件A)を夫々使用した場合の2条件で13:30~15:30まで就寝した.測定項目は睡眠脳波記録,皮膚温,衣服内気候,寝床内気候,温冷感,眠気,睡眠感,寝具の主観評価であった.条件Cで条件Aよりも有意に覚醒回数と睡眠段階1が増加した.腰部の寝床内湿度は条件Cで条件Aよりも有意に高かった.主観申告では,条件Cで条件Aよりも寝ている時の温冷感が有意に暑い側であり,発汗も汗をかいている側であった.暑熱環境下でのシーツとベッドパッドの違いは,寝床内湿度を上昇させることから,覚醒回数や睡眠段階1を増加させ,寝ている時の温冷感を暑い側,発汗も汗をかいている側の申告にする可能性が示唆された.
本研究では,暑熱環境下の剣道の稽古における熱中症予防に適したウエアを検討するため,通常着用されている剣道着(COT)と夏用剣道着(PET)の2種を対象とし,フィールド実験と人工気候室実験を行い,暑熱環境下での着衣条件の違いが人体生理に与える温熱負荷を比較した.それに加え,トレーサガス法による換気速度測定および素材物性実験を行い,2種の剣道着の素材・構造上の違いの寄与についても比較した.フィールド実験では平均皮膚温で,人工気候室実験では,平均皮膚温・衣服内温湿度・耳孔内温・直腸温,総発汗量・交感神経指標において,PETに比してCOTが有意に高値を示し,PETよりCOTが温熱ストレスを生じさせやすいことが明らかとなった.素材の通気性およびトレーサガス法による換気速度では,COTに比してPETが高い値を示し,剣道着2種に素材や構造上の違いが身体に与える温熱ストレスの軽減に影響していることが示唆された.これらの結果から,剣道着PETはCOT より暑熱環境下での剣道の稽古において熱中症予防ウエアとして適していることが明らかとなった.熱中症予防のためのコア温,皮膚温等を計測できる無線センサを開発し,その有効性についても検討した.耳孔内温は運動負荷を反映して直腸温と比べて即応性が高く上昇が大きいため,温熱指標として有効である可能性が示唆された.
災害時に水洗トイレが使用不可能となった場合,主に女性や災害弱者が公共に設置されるトイレに依存せずに排泄処理の自立が可能となる事をめざし,給水部に紙おむつを利用した「マイ・トイレ」に向けた検討を行った.一般的な生活用品(クエン酸,衣料用酸素系漂白剤,ペット用トイレの木材ペレット,トイレ消臭剤)を併用する効果を把握するために,尿500cc を用いた実験を段階的に行い,臭気強度の判定,快・不快強度の判定,臭気測定,アンモニアガス濃度の測定を行った.
その結果,木材ペレットまたは酸素漂白剤を併用することで,不快臭の抑制およびアンモニアガスの発生を遅延抑制する効果が認められた.木材ペレットではこの効果が高く,酸素漂白剤では排尿面の変色防止効果が認められた.今後は実用化に向けて,試料の併用方法,不快臭と保管環境との関連性,使い心地の検討が必要となる.
平成23年9月3日,和歌山県那智勝浦町は台風12号により甚大な被害を受けた.台風災害直後より,町立病院と町保健師が協力し被災地支援活動を行った.病院スタッフと町保健師により,被災地に開設した救護所と避難所において医療支援活動を行った.この活動を通して,避難所における環境不備による健康問題が明らかになった.また,衣料支援における問題点も明らかとなり,下着,靴下,男性用のズボンの供給不足などが問題となった.
1992年のリオサミットにおいて持続可能な発展に向ってリオ宣言とアジェンダ21が採択されてから20年が経過し,我国はその間,産業界,行政,市民が協働して持続可能な社会を目指して努力をしてきた.しかしながら,今回の東日本大震災で生活者の価値観に対する考え方が少しは変化したと思えるが,現状では持続可能な社会の到来は程遠いと考える.
アジェンダ21以降の努力を「気づき・啓発」の第一段階とするなら,これからの20年は「具現化・環境負荷低減(定量把握)」に向かっての第二段階としなければならない. そして持続可能な社会に向うための方法は環境科学・技術を含めて数多くあるが,生活者の道徳心と価値観の変革なくしては成し遂げることができない.
それゆえ本項は持続可能な社会に向けての生活者のあり方について提言をしている.