化学処理によって廃羊毛繊維に消臭機能を付与し消臭材料として再利用することを最終目的として,塩酸で羊毛繊維を部分加水分解しtrans-2- ノネナールに対する消臭性能の向上を試みた.この結果,部分加水分解によって羊毛繊維の消臭性能は明らかに向上し,さらにこの羊毛繊維を含水させると,消臭性能は顕著に高くなることを見出した.またこの処理羊毛の消臭性は羊毛中の1 級アミノ基量と高い相関関係を示した.6mol/l 塩酸で部分加水分解し含水した羊毛の消臭性能はノネナールの高濃度雰囲気下での消臭試験を20 回繰り返しても低下しなかった.消臭試験でのノネナールの減少量は,試験後の処理羊毛繊維に吸着したノネナール量と等しかったことから,ノネナールは化学結合を形成せずに繊維に吸着すると考えられる.ノネナールの処理羊毛繊維への吸着は物理吸着に加え,繊維基質とノネナールの間での静電引力に起因すると推測された.
本研究では,夏用靴下の設計と開発に向けた基礎的指針を導出することを目的として,はじめに市販靴下12 種を用いて,熱・水分移動特性に及ぼす要因を分析した.次に,靴下素材および編構造の異なる靴下12 種を試作・追加して計24 種を用い,乾熱損失量Hd および水蒸気移動を伴う総熱損失量Ht を目的変数として,変数増減法にて重回帰分析を行った.その結果,Hd およびHt ともに,厚さが最も寄与度が高く,次に質量の寄与度が高かった.また,水分率や気孔率の寄与も認められた.得られた重回帰式を用いて算出された予測値は,Hd およびHt の実測値との誤差平均が各々4.0 %,1.7 %であり,高い精度が認められた.また,親水性繊維の混用率を高め,メッシュ編を採用した靴下を試作し,導出された重回帰式の妥当性を検証した結果,その有用性を確認することができるとともに,かなり高い熱損失量を示すことがわかった.