アントシアニン類色素のデルフィニジン—3—グルコシドとシアニジン—3—グルコシドが主な含有色素である黒ブドウ「スチューベン」の冷凍果皮を染色材料とし,Mg2+,Al3+,Ca2+,Ti4+,Fe3+,Cu2+ の6 種類の金属を媒染剤として,絹布,綿布ならびに羊毛布の染色を行った.繊維,媒染剤および媒染液濃度を変えることにより種々の色彩の染色布が得られた.これらの染色布の色彩は分光式色彩計でCIE L*a*b* 値を測定し,ΔE* で表した.Al3+,Ti4+,Fe3+ およびCu2+ 媒染により染色布の洗濯堅ろう度(変退色)ならびに抗菌性が,Fe3+ およびCu2+ 媒染により耐光堅ろう度が格段に向上することがわかった.これらの染色布について,結晶構造,表面形態,表面原子濃度および熱挙動等の構造を種々の方法で調べた.その結果,染色による大きな損傷や構造変化は認められなかった.
2012-13 年に小・中・高生の男女749 名を対象にして,24 形容詞それぞれにふさわしい色を56 色のカラー表の中から2 色選択するという調査を行い,各形容詞がイメージする色をトーン・色相に分けて男女別学年別に集計し度数表を作成した.これらをデータとして小・中・高生の色彩感情と被服色彩嗜好(特に,「好きな」色と「着たい」色)をコレスポンデンス分析およびクラスター分析を使用して検討した.その結果,(1)Pink は,女性的で甘いイメージであり,暗いイメージ,つめたいイメージ,鮮やかなイメージとは対照的なイメージとして定着していること,(2)男女共に「好きな」色のトーンは集中が顕著であること,「好きな」色の年齢による違いは少ないが,「着たい」色は年齢と共に多様化し,特に高校生で大きく変化すること,(3)男子に比べて女子は,好きな色・嫌いな色を色のトーンで判断しており,着たい色の色相が若年から多様化していること 等が明らかになった.