湿式紡糸工程で原料ビスコースにβ- シクロデキストリンパウダーを添加し,レーヨン繊維(以下,“β-CD レーヨン繊維”と記す)を製造した.得られたβ-CD レーヨン繊維の包接機能に関して, フェノールフタレイン溶液を滴下してその色相変化に着目して調べた.その結果,フェノールフタレイン分子のシクロデキストリンへの包接は時間の経過に従って進み,1~2 日後になると最も良く包接するようになることがわかった.また,β-CD レーヨン繊維の包接機能に対する加熱による影響についても調べたところ,シクロデキストリンに包接されていたフェノールフタレイン分子が50℃以上の温度で加熱することによって脱離し,室温にまで冷却されることによって再び包接されることもわかった.ガス吸着性についても調べるべく,β-CD レーヨン繊維を飽和アンモニアガスに3 時間曝した.その後,その繊維をピュアーな空気中に放置した.12 日間が経過した後,新たなテドラー® バッグ中にその繊維を入れ,ピュアーな空気も再注入し,テドラー® バッグごと100℃で30 分間の加熱を行った.その結果,β-CD レーヨン繊維から再び大量のアンモニアガスを放出することがわかった.