本研究は,個人体型に適合するローライズストレートスカート作図法を提案することを目的とした.成人女子(20~29歳)52人を対象に,下半身人体計測及びローライズストレートスカートの立体裁断を行った.次に,立体裁断展開図の座標計測項目を目的変数として,人体計測項目を説明変数として作図予測式を求めた.ローライズストレートスカート立体裁断展開図の平均図形の作成結果より,前中心腰丈は後ろ中心腰丈より短く,ウエストダーツ量は前より後ろが多く,前・後ウエストダーツ位置は,ストレートスカート基本作図のウエストダーツ位置と異なり,前・後中心寄りになった.単回帰及び重回帰分析の結果,前・後スカート幅はヒップ囲を用いて予測することができた.前・後中心腰丈は,側面視腰部後面下部斜線長,下半身体軸傾斜角度に影響されることが分かった.前・後ウエストダーツロ1(前・後中心寄り)Ⅹ軸値及び脇ダーツロⅩ軸値は,腰部の横径,厚径,周径を用いた予測式が得られた.前・後ウエストダーツ先端Y軸値は,正面視腰部側面下部斜線長,臀囲に対する腹囲のサイズ,臀部突出度等に影響されることが確認された.最後に,これらの予測式を用いて6名の被験者による検証実験を行った結果,ローライズストレートスカート作図予測値の誤差は1%以下を示し,個人体型に適合していることが確認された.
左右どちらかの乳房を全摘または温存(部分摘出)手術した乳がん術後女性を対象として,上肢挙動に伴うブラジャーフレームのずれを明らかにすることを目的とした.被験者は乳がん術後女性12名(全摘7名,温存5名)である.実験は,試料Iのパッド有無と試料Ⅱのパッド有無の4条件で,上肢挙動を繰り返す間の動きを,CCDカメラで取り込んで,運動画像解析システムで解析した.ブラジャーフレームのずれ量は,上辺より下辺が多く,特に前面カップ下のずれ上がりが顕著であった.上肢挙動中でずれ量が多かったのは,上挙時で,次いで側挙,前挙となった.動作終了時のずれ量は,温存より全摘が多く,特に術側で多くなった.術側はアンダーからトップにかけての形状が平滑であるため,上肢挙動でずり上がった量がそのまま残留する結果となった.しかし,パッドを装着すると,全摘,温存にかかわらず,ずれ量が減少し,特に術側のずれ量が少なくなった.ブラジャーフレームのずれは,パッドを装着することで少なくなり,ずれ難くなることが分かった.