本研究では袖パターンの構成因子である袖山の高さ, 袖幅および袖山幅を中心に, 人体腕付け根周辺の形態計測データとの関係について検討した.方法としては, 個体差のはっきりしているモデル7体について一定の条件設定をした上で立体裁断法により密着型袖と, 原型として利用できるゆとりの入った袖 (原型用袖) を作製してその結果から考察した.人体形態データと原型用袖パターン寸法の関係から, それらの部分の作図法の算出式の基となる回帰式を求めた.結果は以下の通りである.
1) 袖山の高さにかかわる人体因子はSP~a点上腕上部外側長などが高い相関を示し, 従来のものとの比較でいえば, 身頃AH寸法より写真からの形態計測データとの相関が高い結果となっている.
2) 原型用袖の袖幅は上腕最大囲に平均4.52cmを加えた寸法となっており, 密着型袖では上腕最大囲に平均3.40cmを加えた寸法となっている.
袖幅にかかわる人体因子は上腕最大囲が最も大きく, 上腕最大囲はウエストとも相関が高い.身頃AH寸法より実測値を採用した方が誤差が少ないであろうと考えられる.
3) 袖山幅は袖幅にかかわる因子とほぼ同様の因子が高い相関を示している.
いせ分は袖で形作る肩先部複曲面構成面の大小にかかわるSP~c点間距離によって増減し, またかぶり分に影響を及ぼすことが明らかになった.
袖山部設計の作図理論の裏づけになる有効なデータが抽出できたと考えられる.これらから得た回帰式を用いて汎用性のある算出式を今後研究する.
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