1986年4月より5年間, 当院において脳CTスキャンで脳梗塞像を認めた糖尿病患者103名についての臨床像を報告する. 内5名がインスリン依存型で98名がインスリン非依存型であった. 性別では男68名, 女35名で, 両者の脳梗塞平均発症年齢は, それぞれ64 (45~85) 歳および66 (39~80) 歳で, 両者若年齢と共に梗塞合併率は増加した. 糖尿病発症から脳梗塞発症までの平均期間は男16 (-1~55) 年, 女13 (-8~35) 年であった. この期間と糖尿病発症年齢との間には負の相関を認めた. 高血圧症合併者は66%で, 非合併者に比し, 上記期間は有意に短かった. 年齢, 性, 罹病期間をマッチさせた脳梗塞非合併糖尿病対照群に比し初診時血圧は収縮期圧, 拡張期圧とも梗塞群が有意に高かった. 他の危険因子 (肥満, 喫煙, 血清脂質, 血糖コントロール) には両群間に差はなかった. また網膜症, 腎症, 虚血性心電図変化および大動脈石灰化像の出現率にも両群間に差を認めなかった. 治療法は両群間に有意差があり, 梗塞群は対照群に比し, 食事療法と経口剤使用者が多く, インスリン治療者が少なかった. 梗塞巣は55%がラクナ型で, 26%は多発型であった. 23名は軽微な自覚症のみ訴え, 12名は自覚症を欠き, 腱反射異常のみ認めた. 死亡者は10名で, 死因は心不全5, 脳梗塞3, 脳出血1, 癌1名だった.
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