糖尿病
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52 巻, 2 号
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原著
  • 生山 祥一郎, 大庭 功一, 豊田 美夏, 西村 純二
    2009 年 52 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    大分県北地域における糖尿病性末梢神経障害の実態を明らかにするために質問票調査を行い,36医療機関の980例より調査票を回収した.このうち自覚症状,アキレス腱反射,振動覚のすべてに記載のある673例(男性359例,女性307例,不明7例)を解析した.末梢神経障害に基づくと思われる足の症状(しびれ,痛み,異常感覚,こむらがえり)を認める患者は333例(49.5%)で,罹病年数が長いほど,また調査時のHbA1cが高いほど割合は増加した.VASで評価したしびれ・痛みの強さの自覚の程度は「最近出現した」ものに比べ,「以前からあった」もので有意に強かった.アキレス腱反射と振動覚の異常は各々47.8%と44.0%で認められ,アキレス腱反射異常の割合は罹病年数・HbA1cとともに増加する傾向を示した.「糖尿病性神経障害を考える会」の簡易診断基準で「神経障害あり」と診断される患者は300例(44.6%)を占めた.これは本診断基準を適用された国内の他の地域の調査成績とほぼ同等であった.
  • 宗像 正徳, 本間 浩樹, 荒木 高明, 明石 實次, 河村 孝彦, 久保田 昌詞, 横川 朋子, 沼田 義弘, 豊永 敏宏
    2009 年 52 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    全国の労災病院勤労者予防医療センター9施設において,メタボリックシンドローム400名と年齢,性を一致させた健常対照群399名にアンケートを行い,メタボリックシンドロームの幼少時の行動学的特徴,現在の食行動ならびにそれらの関連を検討した.メタボリックシンドロームと関連する幼少時の要因は,男性では,「肥満」,「大食」,「野菜を摂取しない」,「きまったスポーツをしていた」ことであり,女性では,「肥満」,「きまったスポーツをしていた」ことであった.さらに,これら幼少時の行動特性は,メタボリックシンドロームと関連する現在の不健康な食行動と関連がみられた.本研究は,メタボリックシンドロームの幼少時の行動と現在の食行動異常に関連があることを示した.
  • 竹越 忠美, 北 義人, 松本 洋, 土田 真之, 品川 誠
    2009 年 52 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    能登半島地震前後での糖尿病患者の血糖管理の変化を検証した.(1)当院通院糖尿病患者373名につき地震前後6カ月間のHbA1cの変動をみると,地震直前の7.32±1.41%に比して2カ月後7.35±1.46%と上昇傾向を示したが,6カ月後(7.19±1.33)有意に低下した.(2)地震直前と地震後のHbA1cの変化量を比べた.地震2カ月後の悪化群(+0.5%以上)は12.1%であり,4, 6カ月後にはその割合はやや増加,また改善群(-0.5%以下)は16.4%であり,4, 6カ月後には若干増加した.(3) HbA1cの変化量(改善・不変・悪化)の3項を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った結果,食事量の減少,コレステロールの低下,HDL-Cの上昇は改善要因であり,体重増加や薬剤中断は悪化要因であった.(4)以上の結果から,平時より食事療法の重要性と血糖管理,薬剤管理を徹底することが必要である.
  • 島 健二, 小松 まち子, 田中 俊夫
    2009 年 52 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    歩数計にカウントされない身体活動,強度が普通歩行(3メッツ)以上の身体活動を,それぞれのメッツ数(健康づくりのための運動指針2006による)から歩数に換算し,これを歩数計にカウントされた歩数に加算する歩数記録表(以下ダイアリーと略す)を作成した.このダイアリーを外来通院糖尿病患者174名に約20週間利用してもらい,その臨床的有用性を検討した.1日の平均歩数は8,611±3,785 (1,069∼32,972)であった.174名中126名(74.2%)が少なくとも20週間記録を継続した.ダイアリー記入後体重減少群(N=103)の平均歩数は9,154±4,271で,非減少群(N=71)の7,823±2,786に比し有意(p=0.022)に大であった.BMIと平均歩数の間には有意な逆相関関係(r=-0.254, p=0.0007)が認められた.HbA1c値は記録前,後で差がなかった.ダイアリーは身体活動をある程度定量化し,また,歩行の習慣化を助長する媒体として,その臨床的有用性が示唆された.
症例報告
  • 末次 麻里子, 麻生 好正, 竹林 晃三, 今井 康雄, 上田 善彦, 犬飼 敏彦
    2009 年 52 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.20年前より糖尿病にて加療中にあった.2007年3月24日,低血糖による意識障害にて当科入院となる.血糖値34 mg/dl, 白血球数22,400/μl, CRP 9.75 mg/dlであった.意識回復後,左下腹部から大腿部にかけて自発痛を訴えたため,腹部X線を施行し,左恥骨部に骨融解像を認めた.骨盤部CT検査では,左内転筋群および腹直筋内を中心に多発するガス像を確認し,ガス産生筋膿瘍と診断.直ちに切開ドレナージ術を施行し,多量の膿を排出した.膿の培養検査から,E. coliが検出された.抗生剤の全身投与,インスリン注射による厳格な血糖のコントロールに努めた.その後,恥骨掻爬術を施行し,病理組織検査にて骨髄炎の所見を得た.恥骨骨髄炎を原発巣として,恥骨を起始部とする内転筋群および腹直筋に炎症が波及し,ガス産生壊疽に至ったと推察した.われわれは,恥骨骨髄炎に加え,左内転筋群および腹直筋ガス産生膿瘍を合併した2型糖尿病の稀な症例を経験し,その病態と進展に興味が持たれたため報告する.
報告
  • —インスリン療法患者の臨床像と血糖コントロールとの関連—(JDDM12)
    金塚 東, 川井 紘一, 平尾 紘一, 大石 まり子, 小林 正, 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)
    2009 年 52 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    「糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)」は2型糖尿病のインスリン療法症例における臨床的特徴について調査した.2006年に多施設で糖尿病診療専用ソフト,CoDiC®に登録された薬物療法中の22,307症例を対象とし,そのうち6カ月以上インスリン療法で治療された5,795症例について解析した.経口血糖降下薬療法症例に比べ,インスリン療法症例の診断時年齢は若く,罹病期間は長く,BMIは低値,HbA1cは高値であった.1日2回インスリン注射療法が最も多く処方され,次いで各食事時bolusインスリン療法,1日1回インスリン療法,basal-bolusインスリン療法が処方されていた.bolus療法とbasal-bolus療法症例の診断時年齢が若く,罹病期間は短かった.インスリン療法導入6カ月後にHbA1cが7%未満になった症例と比較して,8%以上症例は診断時年齢が若く,罹病期間が長く,BMIが高値であった.特にbolus療法とbasal-bolus療法症例の診断時年齢が著しく若年であった.
コメディカルコーナー・原著
  • 糸藤 美加, 松川 真由美, 影山 知子, 濱口 まさみ, 永井 美由紀, 大石 まり子
    2009 年 52 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/03/01
    ジャーナル フリー
    糖尿病合併症予防のために,糖尿病管理目標としてHbA1c値<6.5%が推奨されている.目標達成には,患者自身がHbA1c値を正しく自己評価し,行動変容する必要がある.本研究では患者自身のHbA1c値の認識を調査し,相対的評価による自己評価の変化を調べた.当院に通院中の65歳以下2型糖尿病220名を対象に対面式アンケート調査を行った.患者はHbA1c値を知っていたが,値に関係なく平均的コントロールと自己評価している者が多かった.HbA1cヒストグラム提示により相対的評価を知った後のHbA1c値自己評価は修正され,とくにコントロール不良群の認識が修正された.患者の疾患重要性認識は行動変容のための条件である.HbA1cヒストグラムは自己管理の良否を相対的・視覚的に理解するのに役立ち,行動変容への動機付けに役立つ教育指導ツールとして利用できる可能性が示唆された.
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