糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
26 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 菊岡 弘芳, 栗山 茂司, 坂本 健一, 里神 永一, 近藤 溪, 猪尾 和弘, 宮村 敬
    1983 年 26 巻 6 号 p. 611-616
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性網膜症とTRH負荷後のGH反応との関係について検討する目的で, 糖尿病患者48例を病歴および網膜症の程度により以下のごとく3群に分けた.1群: 推定罹病期間10年以内で眼底Scott IIIa以上の患考群10例.II群: 推定罹病期間11年以上で眼底Scott 0の患者群20例.III群: I・II群いずれにも属さない患者群18例.これら3群においてTRH500μg静注後の血中GH, PRL, TSHを測定した.また48例中14例にarginine (0.59/kg) 30分間点滴負荷を行い, 血中GH値および尿中GH排湿量よりGHclearanceratcを算出した.
    血中GH値の上昇が明らかな症例は1群では10例中5例, II群では20例中1例であった.血中GH値はTRH負荷後30分 (P<0.05), 60分 (P<0.02), 120分 (P<0, 02) において, II群に比し1群で有意に高値であった.基礎値と頂値の差も1群において有意 (P<0.02) に高値であった.TSH, PRLの反応には両群問で差はなく, HbA1の良否との関連においてもGHの反応に有意差を認めなかつた.arginine負荷時のGH clearance ratcにも有意差はなかった.
    以上よりTRH負荷後の血中GH値の上昇は下垂体レベルでのGHの反応を反映するものであり, TRH負荷後のGH分泌異常は糖尿病性網膜症の進展に関与している可能性があることを示唆するものであると思われる.
  • 望月 正武, 石川 真一郎, 小笹 春樹, 吉原 孝男, 田中 行夫, 笹生 文雄, 井上 修二, 阿部 正和
    1983 年 26 巻 6 号 p. 617-624
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の心筋梗塞後の予後と血糖のcontrol状態の関係は不明であり, 治療効果の判定を困難にしている原因に病型の相違や合併症の存在がある.そこで実験的糖尿病ラットを作製し, その心機能と治療効果を検討した.
    方法
    NIDDMの実験モデルに視床下部性肥満ラット (肥満群) を, IDDMの実験モデルにはstreptozotocinを静注した糖尿病ラット (DM群) を用い, これを前者は食事制限による減量 (減量群), 後者はinsulin注射 (DMI群) により治療した.次にworking heart preparationにてKrobs buffer (O2: CO2=95: 5) でその別出心をpacingg下で灌流した後, 一方向性バルブで虚血を誘発し, 肥満群, 減量群では20分, DM群, DMI群では10分間灌流した.さらに虚血とpacingを解除して前者は30分, 後者は20分間再灌流した.全灌流中, 最大収縮期圧 (PSP), 心拍数 (HR), coronary flow (CF) を経時的にモニターした.
    結果
    体重, 血清脂質 (TC, TG, FFA) は対照群に比べて肥満群で有意に増加, 減量群で有意に低下した.血糖値は対照群に比べてDM群で有意に増加, DMI群で有意に低下した.心機能 (PSP×HR) の回復率は対照群, 肥満群, 減量群でそれぞれ虚血前値の92.7, 27.5, 89.9%に, 対照群, DM群, DMI群ではそれぞれ100, 54.4,101.7%といずれも治療群で有意に回復した.
    結論
    肥満群, DM群共に虚血後再灌流時の心機能は障害されたが, これを治療することにより良好な機能の回復が得られ, その機序として治療による糖, 脂質代謝との関連が示唆された.
  • とくに膵組織アミラーゼ含量と血清アミラーゼの変動
    今村 浩一郎, 若杉 英之, 篠崎 博嗣, 井林 博
    1983 年 26 巻 6 号 p. 625-632
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Streptozotocin (STZ, 65mg/kg体重) 注射により糖尿病ラットを作成し膵アミラーゼ含量および血清アミラーゼ値を同時測定し, インスリン治療の膵外分泌におよぼす影響につき検討を加えた.インスリン治療 (NPH monocomponent insulin, 8単位/日) の影響はSTZ注射1日後開始群 (C群), 注射後2週目開始群 (D群), 非治療群 (B群) および正常対照群 (A群) について比較検討した.STZ糖尿病ラットはSTZ注射後1, 2, 4週目に実験に供したが, B群の膵組織アミラーゼ含量はそれぞれA群の12.1, 6.3, 0.7%, 血清アミラーゼはそれぞれ64.1, 79.3, 73.8%であった.
    インスリン治療の結果, 体重, 食餌摂取量, 飲水量および血糖値の推移から糖尿病状態がかなり良好にコントロールされた時期にC, D群の膵組織のアミラーゼ含量はA群の約半分 (それぞれ47.4, 42.5%) まで回復したが, 膵組織インスリン含量はB群と同様, なお著明な低値を示した.このとき血清アミラーゼも依然低値を示しており明らかな改善はみられなかった (C群60.6%, D群77.6%).以上の成績は糖尿病患者における膵外分泌能障害に対して適切なインスリン治療が血清アミラーゼ低下の改善効果をみとめないが, pancreozymin secretin試験による膵外分泌能低ドの改善を示す臨床的自験成績を支持するものと考える.
  • 丸山 太郎, 武井 泉, 谷山 松雄, 片岡 邦三, 松木 駿, 浜田 昇, 伊藤 国彦
    1983 年 26 巻 6 号 p. 633-637
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    膵ラ島細胞膜抗体 (ICSA) はインスリン依存性糖尿病 (IDDM) の発症早期に高率に認められるが, その意義は明らかではない.私たちはICSAの意義を明らかにする目的で, 自己免疫甲状腺疾患のICSAを検索し, 抗マイクロゾーム抗体, 抗サイコグロブリン抗体と比較した.
    I.インスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) にバセドウ病を合併した20例.II.糖尿病を合併しないバセドウ病, または慢性甲状腺炎でa) 抗マイクロゾーム抗体が×102400以上の高値を示す12例, b) 抗マイクロゾーム抗体が×25600以下の20例を対象とし, A.Lernmarkの方法によりBALB/Cマウスの膵ラ島細胞を抗原とする螢光抗体間接法でICSAを検索した.
    I.NIDDMにバセドウ病を合併した20例中1例, II. (a) 糖尿病を合併しない抗マイクロゾーム抗体高値の12例中4例にICSAを認めたが, II. (b) 抗マイクロゾーム抗体×25600以下の症例にはICSAを認めなかった.抗マイクロゾーム抗体高値例のICSA陽性頻度は, ほかの2群に比べ有意に高率であった (X2=4.57, 7.62, p<0.05, 0.01).
    ICSAが糖尿病を台併しない抗マイクロゾーム抗体高値の自己免疫甲状腺疾患で高率に認められたことは, ICSAの出現に免疫異常が密接に関与していることを示唆している.
  • 加齢の影響
    小田桐 玲子, 平田 幸正, 明石 弘子
    1983 年 26 巻 6 号 p. 639-645
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    健常者74名糖尿病患者233名につき年齢を加味した血清immunoreactive trypsin (=IRT) 濃度を検討した.
    1.健常者の平均血清IRTは30.9±13.5mg/mlであった.20歳代28.8±11.1ng/ml30歳代22.2±7.0ng/ml40歳代24.3±8.4ng/ml50歳代34.5±14.9ng/ml60歳代46.4±17.0ng/ml70歳代45.7±9.4ng/mlと加齢に伴い血清IRTは上昇し, ことに50歳代より高値となった.しかし糖尿病患者では加齢による一定の傾向は認められず, 各年代共健常者に比し低値であった.
    2.各年代別にみた短血清IRTと糖尿病性網膜症の有無には関係がなかった.
    3.糖尿病患者のアルコール飲酒歴の有無については, アルコールを飲んでいる者の方が飲まない者より血清IRTは高値の傾向であった.
    4.血糖コントロール状態の悪いもの, HbA1の高値のもの程血清IRTは低値となった.
    5.治療前後における血清IRTは血糖値, HbA1の改善に伴い上昇することが認められるが, インスリン依存型糖尿病では以然として低値にとどまった.
    以上のことより血清IRT濃度には年齢, アルコール, 血糖コントロール状態により変化するものでありこれらを考慮して判定する必要があろう.
  • 三家 登喜夫, 近藤 渓, 森山 悦裕, 南條 輝志男, 飯沼 情司, 里神 永一, 川嶋 愛己, 江本 正直, 宮村 敬
    1983 年 26 巻 6 号 p. 647-654
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者において, 空腹時血清trypsin (IRT) およびelastase I (IRE) をradioimmmoassayにて測定し, それぞれの糖尿病 (DM) における測定意義について検討した, 膵外分泌機能の指標としては, BT-PABA経口負荷 (PFD) にPABA経口負荷 (PABA) を併せて行い, それぞれの尿中PABA回収率の比 (PFD/PABA ratio) を用いた.
    正常者では, IRT, IREともに20歳以下の若年者では低値であり, 加齢とともに増加する傾向を認めた.IRT, IREともに, 急性膵炎では高値, 膵石症では低値であった.肝障害を有するDMでは, IREが高値, 腎障害を有するDMではIRT, IREとも高値であった.
    肝, 腎障害のないDMでは, IRTはtype I DMおよび空腹時血糖値が200mg/dl以上のtype II DMにおいて, それぞれage matched control群に比し有意の低値であった.またIRTとPFD/PABA ratioとの問には有意な正の相関が認められた.一方, IREはtype II DMで心電図上虚血性変化を有する群においてのみ, age matched control群に比し有意の低値であった.またIREとPFD/PABA ratioとの間には有意な相関は認められなかった.
    以上より, DMにおける空腹時血清trypsinは膵外分泌機能の指標として有用である.また血清clastasc Iと虚血性心病変合併との間に何らかの関連のある可能性が示唆された.
  • 松井 寿夫, 和田 攻, 真鍋 重夫, 牛島 義雄
    1983 年 26 巻 6 号 p. 655-660
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    トリフェニルスズ糖尿病とアロキサン糖尿病の糖・脂質代謝に関する比較検討をウサギを用いて行い, 次の結果を得た.
    1) アロキサンの静脈内投与後, 血糖は三相性の反応を示したのに対し, 水酸化トリフェニルスズ (TPT) 経口投与では血糖の上昇は初期から直線的に上昇した.
    2) アロキサソ糖尿病では血糖の上昇と一致して空腹時グルカゴン (IRG) 値の上昇がみられたが, TPT糖尿病ではグルカゴン値に変化がみられなかった.
    3) グルカゴンの上昇がみられないTPT糖尿病でも血中遊離脂肪酸 (FFA), β-ヒドPキシ酪酸 (β-HB), トリグリセリド (TG) の上昇が著明であったが, インスリン欠乏にグルカゴン上昇が加わったアロキサン糖尿病では更に高度のFFA, β-HB, TGの上昇がみられた.
    以上の結果から,(1) TPTのB細胞に対するインスリン分泌阻害作用は経口投与であっても急速に行われると考えられた. (2) TPT糖尿病でみられた血中FFA, β-HB, TGの上昇はインスリン欠乏の一次作用に基づくと考えられる. (3) アロキサン糖尿病ではグルカゴンの関与により, TPT糖尿病に比較して一層高度のFFA, β-HB, TGの上昇がみられ, グルカゴソが糖尿病増悪因子であることが示された.
  • 測定法の検討および臨床的意義
    杉山 博通, 関口 祐司, 宮野 龍美, 田中 明, 若林 哲雄, 内村 功, 小田倉 力, 前沢 秀憲
    1983 年 26 巻 6 号 p. 661-669
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    R-R間隔変動により心副交感神経機能を正確に評価するには, 従来行われている種々の検査方法のうちどれが最適かを比較検討した.またR-R間隔変動と糖尿病性合併症との関連を検討した.
    成人発症糖尿病36例, 対照36例について, 安静時・深呼吸時および立位時の連続100心拍のR-R間隔の標準偏差 (SD)・変動係数 (CV)・各呼吸周期中最大と最小のR-R間隔の差の平均 (m (max-min)) を求めた.また起立直後30拍目と15拍目または最大と最小のR-R間隔の比などを測定した.その結果, SDは心拍数の影響を, 普通呼吸法は呼吸回数の影響を受け易く, また立位では臥位に比してRえR間隔変動幅が小であった.立位直後のR-R間隔変動測定法は, 再現性・簡便さ・感度とも劣っていた.したがって, 測定条件としては, 臥位で1分間6回の深呼吸法を行い, CVまたはm (max-min) で表現する方法が最も適切であると考えた.また食塩摂取量の影響は認めなかった.
    Scott III以上の網膜症, 1日150mg以上の持続性蛋白尿, アキレス腱反射低下例ではいずれも, 年齢をマッチさせた対照群に比しR-R間隔変動の低下をみとめた.糖尿病群で, R-R間隔変動と起立時血圧変化量とは正相関を示し, 交感・副交感両系統の神経障害は並行して進行することが示唆された.
  • 神田 勤
    1983 年 26 巻 6 号 p. 671-679
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    著者らはすでに小腸性アルカリフォスファターゼアイソザイム (小腸性ALP) は, 遺伝的背景や脂肪摂取だけではなく, 糖尿病 (DM) の増悪と関連して出現することを報告してきた.本研究では遺伝的背景を統一し, 食餌性因子を除いた絶食状態で, 小腸性ALP出現を左右するDMの病態に検討を加えた.対象は血液型B又はOでABH分泌型に限り, 20歳以上の健常人 (N) 46例とDM教育入院患者 (DME) 170例, DMケトーシス (DM-K) 15例, DM性昏睡 (DM-C) 4例の入院時と入院治療2週間後の早朝空腹時血清を試料とし, ALP活性およびALPアイソザイムを分析した.小腸性ALP検出率はNで28.3%, DM-Eで51.2%, DM-Kで80%, DM-Cで100%であり小腸性ALPが出現する症例は, 未治療やDMコントロール不良の症例に多く, DM代謝状態の増悪とともに小腸性ALP検出率は上昇した.一過性に小腸性ALPを検出する群では, 小腸1生ALPを検出しない群に比し, Insulinogenic Indexが低く, 空腹時血糖値 (FPG) は有意に高かった.DM治療により両群間のFPGに有意差がなくなった入院治療2週間後には, 総ALP活性は低下し, 小腸性ALP検出率もDM全体で23.8%に低下し, N群と同率になった.
    以.上より小腸性ALPの一血中への出現に影響する因子として, 遺伝的背景や脂肪摂取のほかにDMの増悪があり, かつDMにおける小腸性ALPの血中への出現は一過性で, DMの代謝状態の改善により消失することを明らかにした.
  • 1983 年 26 巻 6 号 p. 681-695
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
feedback
Top