近年, 抗動脈硬化作用があるとしてHDL-コレステロール (HDL-C) が注目されているが, 糖尿病におけるその動態に関しては不明の点が多い. そこでわれわれは自然発症糖尿病チャイニーズハムスターを対象として血漿HDL-Cの動態を検討した. 併せて老化による影響や性差についても検討した. ハムスターは非糖尿病群 (n=76, 7.9±0.2ヵ月齢, FPG 62±2mg/dl), 糖尿病群 (n=39, 8.0±0.3ヵ月齢, 同416±9mg/dl) および老化非糖尿病群 (n=18, 25.3±0.6ヵ月齢, 同85±5mg/dl) の3群に分けた. HDLCの測定はRPL-42Tローター (日立) を用いる微量超遠心法によった.
結果は以下の通りである.
1) 糖尿病群において高脂血症と低インスリン血症がみられ, 糖尿病群の血漿HDL-C89±3mg/dlは非糖尿病群58±1mg/dlに比べて有意に高値を示し, さらにHDL-CとTCとの間に有意な正相関がえられた。
2) すべての群で血漿TC, HDL-Cは雄群の方が雌群に比べて高値を示す傾向にあった.
3) 電気泳動上, 糖尿病群でVLDL, LDL, HDLの増加傾向を認め, また超遠心法によりカイロミクロンの出現を認めた.
4) Gradient gel電気泳動法によるCHのHDL粒子の分析では, 平均分子量は約265,000と同定され, そのheterogeneityが確認された.
5) 老化群の血漿TC、HDL-C, FPGおよび血中過酸化脂質は非糖尿病群に比べて有意に増加した. 以上, 自然発症糖尿病および老化チャイニーズハムスターにおいてHDL-Cが上昇することが明らかとなったが, この機序については今後さらに検討が必要である.
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