糖尿病
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27 巻, 9 号
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  • 梅田 文夫, 井林 博
    1984 年 27 巻 9 号 p. 965-972
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    要約: 糖尿病性血管障害の成因として最近とくに流血因子の関与が注目される. 著者はストレブトゾトシン誘発糖尿病 (STZ) ラットの乏血小板血漿より得た血清 (PDS) とPDGFを含有する血小板可溶性蛋白成分 (PS) のラット継代培養血管壁平滑筋細胞 (VSMC) への3H-thymidine取り込み率によるDNA合成刺激活性を対照ラット群と比較検討した. STZラット群のPDS添加 (1-10%) でVSMC増殖刺激活性の有意低下を認めた. また80℃ 熱処理あるいは透析後のPDSでも同様に糖尿病群で有意の増殖刺激活性低下の所見を得た. 一方, STZラット, インスリン治療群のPDSではVSMC増殖刺激活性の正常化を認めたが, 2%STZラット群PDSにin vitro系でのインスリン添加 (10-1000μU) では正常化を認めえなかつた. しかし, STZラット PDS に FCS または正常ラット PDS (1-6%) を同時添加すると, FCSに比較してラット PDS 添加で速やかな増殖刺激活性の正常化を認めた. 以上の成績より STZ ラット PDS の VSMC 増殖刺激活性の低下はインスリン欠乏そのものによるのではなく, 二次的に惹起された各種代謝異常, 特に流血中の種族特異性を有する比較的熱に安定な, 高分子性の細胞増殖因子 (群) の減少によることが示唆された. 一方, ラット PS の VSMC 増殖刺激活性はヒトと比べ, 比較的低値であり, 発症7日後の STZ ラット PS ではその活性に有意の変動を認めえなかった.
  • 古庄 敏行, 丸山 博, 金沢 康徳
    1984 年 27 巻 9 号 p. 973-979
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    若年発症のIDDMを発端者とした, 162家系調査資料を用いて, IDDMの遺伝様式の解析を試みた.
    1. 発端者の同胞以外の近縁にNIDDMを有する家系 (資料1, 40家系), 発端者の同胞以外の近縁にNIDDMを全く有しない家系 (資料II, 125家系) に分けて分離比 (Ps) を推定したところ資料 (I) ではPs=0.0400±0.0039, 資料 (II) ではPs=0.0072±0.0031で, 単純優性遺伝の期待分離比0.5, 単純劣性遺伝の期待分離比0.25との差は, いずれも統計的に有意であつた. したがつて単純遺伝様式の仮説に適合しなかつた.
    2. 発端者の両親の近親婚率について調査したところ, 資料 (1) では0.0556, 資料 (II) では, 0.0183で, 東京地区の近親婚率0.0122~0.0711とほぼ同様であり, 近親婚による効果はみられない.
    3. IDDMの多因子性遺伝の仮説への適合性について検討したが適合しなかつた.
  • 発症年齢分布を複合正規分布と仮定した統計遺伝学的解析
    古庄 敏行, 金沢 康徳, 丸山 博, 吉丸 博志
    1984 年 27 巻 9 号 p. 981-992
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    発症年齢分布資料を用い, 複合正規分布を仮定して, 糖尿病の遺伝的異質性に関する統計遺伝学的分析を試みた.
    (A) 村地ら (1970) の糖尿病発症年齢分布の資料はインスリン依存型 (IDDM) と非依存型 (NIDDM) に分類されていないが, 男女それぞれに複合正規分布の仮説にはよく合致し, 単一の正規分布の仮説には適合しない。 このことは, 若年発症群と成人発症群という異質性があることを示している. 判定基準値は, 男で39.4歳, 女で33.4歳, 合計で38.6歳である. (B) 小坂ら (1978) のIDDMの発症年齢分布資料の場合, いずれの仮説にも適合しないが, 統計的有意水準からみると, 複合正規分布の方が確率は大きい. 判定基準値は18.0歳である. (C) 古庄ら (投稿中) の若年発症IDDMの資料では, 単一の正規分布の仮説には適合せず, 複合正規分布の仮説にはよく合致する. 判定基準値は5.8歳である. (D) 金沢らの資料のうち15歳以下の若年発症IDDMだけを用いて分析した場合も, 男女とも単一の正規分布の仮説には適合せず, 複合正規分布の仮説にはよく合致する. 判定基準値は, 男で7.8歳, 女で7.3歳, 合計で7.6歳である. (C) の結果と合わせて, 若年発症IDDMの中にもまた異質性があることを示唆している. これらの異質性は遺伝的なものと考えられるが, 今後調査例数を増し詳細な分析を試みると同時に, 臨床遺伝型の解析を試みる予定である.
  • IDDMを支配する遺伝子型のPenetranceを仮定した場合
    古庄 敏行, 吉丸 博志, 小坂 樹徳
    1984 年 27 巻 9 号 p. 993-1003
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    IDDMとHLA系との間に相関があることは内外の多くの報告でよく知られている. その相関の遺伝学的メカニズムとしては, HLA遺伝子とIDDMの発症を規定している遺伝子が連鎖し, しかも特定のHLA遺伝子と強い連鎖不平衡にあるという連鎖不平衡説が多くを占めている. しかしながら, 古庄ら (1982) はIDDMを常染色体性劣性遺伝と仮定し, 淘汰および近親婚を考慮して, IDDMとHLAとの連鎖不平衡係数を推定し, IDDMとHLAとの間の連鎖不平衡はみられないことを報告した. その後, 古庄ら (投稿中) によるIDDMの遣伝様式の分析で,(1) IDDMは常染色体性単純優性および単純劣性遺伝のいずれの仮説にも適合せず,(2) 著しく低い penetrance が推定された. そこでこれらの結果をふまえて, 淘汰および penetrance を考慮した上で, IDDMを常染色体性優性および劣性遺伝と仮定し, IDDMとHLA-Bw54, IDDMとHLA-DYTおよびIDDMとHLA-DRw4との間の連鎖不平衡係数を推定した. しかしながら, いずれも0との差は統計的有意水準に達せず連鎖不平衡の存在を示す証拠は得られなかった.
  • 古庄 敏行
    1984 年 27 巻 9 号 p. 1005-1015
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    多面発現は1つの遺伝子座位に支配される遺伝性症候群で, これに関する報告は多数みられる. しかし, ポリジ-ン系に支配される多因子性疾患の中に, 2つ以上のポリジ-ン系に支配される疾患が併発して出現する頻度が, それらの疾患をそれぞれ独立であると仮定した機会的合併の頻度に比べて高い場合がある。
    ポリジ-ン系の多面発現に関する研究はほとんどみられない. 本研究では今まで報告された資料や未発表資料を用い分析を試みた.
    (1) NIDDMと肥満,(2) NIDDMと高血圧症と肥満,(3) 血糖値と血圧値,(4) NIDDMとNarcolepsyと肥満,(5) NIDDMと後縦靱帯骨化症と肥満, のそれぞれの併発頻度がそれぞれの疾患が偶然併発したさいの期待頻度よりも高かった.
    以上のポリジ-ン系の疾患の併発頻度に関する研究成績から多面効果の概念がポリジ-ン系疾患にも応用できることが推測された. また, これらの成績にもとついて, ポリジ-ン系の多面効果に関する遺伝的モデルについて考察し, ポリジ-ンの特性についても論じた.
  • ラット単離膵島を用いた実験
    泉原 弥太郎, 小山 洋, 村上 哲雄, 渥美 久, 松尾 裕, 本田 利男
    1984 年 27 巻 9 号 p. 1017-1023
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    エタノールのブドウ糖刺激下におけるインスリン分泌抑制作用の機序を解明する目的で, ラットの単離膵島を用い, エタノールおよび, Ca++, cyclic AMP, テオフィリン・フェントラミンを添加し検討を行った. その結果154m Mのエタノールは, ブドウ糖刺激によるインスリン分泌の1相, 2相ともに抑制した.
    エタノールによるインスリン分泌抑制作用は, Ca++ (12m Eq/L), c-AMP (5m M), テオフィリン (2m M), フェントラミン (0.1m M) のいずれによっても解除された. 以上の成績から, エタノールのインスリン分泌抑制作用は, B細胞におけるカルシウムイオンの再分布あるいはc-AMP系を阻害して出現している可能性が示唆された.
  • 温度変化時のKinetic Study
    前川 聡, 小林 正, 渡辺 修明, 高田 康光, 繁田 幸男
    1984 年 27 巻 9 号 p. 1025-1032
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ヒト培養リンパ球 (RPMI-1788 line) を用いて, インスリン結合に対する温度変化の影響を検討した.
    生理的温度 (37℃) では, インスリン低濃度にて, インスリン結合は, 低温 (15℃) に比し, 有意に低下していた. (細胞1×107個当たり2.80±0.05%vs. 481±0.18%, 平均土SEM, n=6 p<0.01) この温度変化によるインスリン結合の減少は, Scatchard解析によると, 主に受容体親和性の低下であり, 受容体数の変化は, 認められなかった.
    インスリン結合のKinetic studyでは, 37℃ にて, 15℃ の場合に比し, インスリン結合の解離速度及び結合速度の亢進を認めたが, 前者が後者の約2倍亢進したため, 結果として Kiaetic studyより求めた受容体親和性は, 50%に低下していた.
    以上の実験結果より, 温度上昇によるインスリン結合の減少は, 受容体数の変化によるものではなく, 親和性の低下によるものであると考えられた.
  • とくにHDLコレステロールの上昇について
    衛藤 雅昭, 渡辺 清, 岩島 保法, 森川 秋月, 建部 高明, 石井 兼央
    1984 年 27 巻 9 号 p. 1033-1042
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年, 抗動脈硬化作用があるとしてHDL-コレステロール (HDL-C) が注目されているが, 糖尿病におけるその動態に関しては不明の点が多い. そこでわれわれは自然発症糖尿病チャイニーズハムスターを対象として血漿HDL-Cの動態を検討した. 併せて老化による影響や性差についても検討した. ハムスターは非糖尿病群 (n=76, 7.9±0.2ヵ月齢, FPG 62±2mg/dl), 糖尿病群 (n=39, 8.0±0.3ヵ月齢, 同416±9mg/dl) および老化非糖尿病群 (n=18, 25.3±0.6ヵ月齢, 同85±5mg/dl) の3群に分けた. HDLCの測定はRPL-42Tローター (日立) を用いる微量超遠心法によった.
    結果は以下の通りである.
    1) 糖尿病群において高脂血症と低インスリン血症がみられ, 糖尿病群の血漿HDL-C89±3mg/dlは非糖尿病群58±1mg/dlに比べて有意に高値を示し, さらにHDL-CとTCとの間に有意な正相関がえられた。
    2) すべての群で血漿TC, HDL-Cは雄群の方が雌群に比べて高値を示す傾向にあった.
    3) 電気泳動上, 糖尿病群でVLDL, LDL, HDLの増加傾向を認め, また超遠心法によりカイロミクロンの出現を認めた.
    4) Gradient gel電気泳動法によるCHのHDL粒子の分析では, 平均分子量は約265,000と同定され, そのheterogeneityが確認された.
    5) 老化群の血漿TC、HDL-C, FPGおよび血中過酸化脂質は非糖尿病群に比べて有意に増加した. 以上, 自然発症糖尿病および老化チャイニーズハムスターにおいてHDL-Cが上昇することが明らかとなったが, この機序については今後さらに検討が必要である.
  • 1984 年 27 巻 9 号 p. 1043-1049
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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