近年, 糖尿病患者の血管内皮細胞機能が障害されていることが報告されており, その原因物質として蛋白後期糖化生成物であるadvanced glycation endproducts (AGEs) が考えられている. 本研究では, ウシ血清アルブミン (BSA) を用いて作成したAGE-BSAを加えた培養液中でブタ大動脈内皮細胞 (内皮) を培養し, 細胞のglycosaminoglycans (GAGs) 産生・分泌とDNA合成 ([
3H]-thymidine取り込み) に対するAGEsの影響を検討した. GAGs産生・分泌量はAGEBSAを添加することで有意に減少し1mg/m
lの濃度で55時間添加では対照の86%(p<0.05), 73時間添加培養した時は非糖化BSA群 (対照) の75%(p<0.01) となった. さらに添加量を変化させると, 0.5mg/m
lではGAGsは対照の87%(p<0.05), 1mg/m
lでは対照の84%(p<0.05) となった (78時間培養). thymidine取り込みはAGE-BSAlmg/m
l, 48~60時間処置群で対照の68-44%(p<0.01) となった. これらのAGE-BSAの作用は, 抗酸化剤であるprobucolを加えることによって阻害された. 内皮が産生するGAGsのほとんどは血管. 壁で抗凝固性に働くheparan sulfate proteoglycan (HSPG) であることが知られているが, 本実験結果から, AGEsは内皮のDNA合成能とHSPG産生を抑制する可能性が考えられ, 血管壁凝固阻止機能等の内皮機能を障害する可能性が示唆された. また, これらのAGEsの作用機序に酸化ストレスが関与すると考えられた.
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