糖尿病
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62 巻, 10 号
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原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 川田 剛裕, 家光 浩太郎, 朝倉 太郎, 雨宮 光, 石川 雅, 伊藤 正吾, 金城 瑞樹, 金森 晃, 久保田 章, 篠田 和明, 高井 ...
    2019 年62 巻10 号 p. 649-658
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    イプラグリフロジン(Ipragliflozin;IP)投与による血糖コントロールと体組成への影響を検討した.2型糖尿病451例を対象としてIPを52週間投与する医師主導型・多施設共同・前向き介入研究であり,臨床検査値,血圧,体重,ウエスト周囲径,体組成を測定し,多重比較法を用いて有効性を解析した.また,安全性に関しても検討した.52週後の各種変化量はHbA1cが-0.9 %,体重が-2.8 kg,体脂肪量が-1.8 kg,除脂肪量が-1.0 kgであった(p<0.001).肝機能関連酵素,HDL-C,中性脂肪,尿酸,ウエスト周囲径,尿中アルブミン排泄量,血圧は有意に改善した.有害事象は120例に発現し,発現頻度2 %を超える主たるものは外陰部膣カンジダ症が12例,陰部掻痒症9例であった.IP投与による血糖コントロールや肝機能の改善,さらには体重や体脂肪の減少が確認され,実臨床での有用性が示唆された.

  • 若林 侑香, 良本 佳代子, 長友 昌志, 金丸 洋蔵, 野尻 宗子, 大橋 誠
    2019 年62 巻10 号 p. 659-666
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    インスリン頻回注射部位は皮下硬結触知の有無に関わらず表在超音波で皮下脂肪組織に低エコーや高エコー所見を呈することがあり,血糖不安定性の一因となる.注射部位変更による超音波所見や血糖コントロールの経時的変化の報告は少ないため,44名の検討をした.超音波所見のエコー輝度別に高エコー群(H群),混在群(M群),低エコー群(L群)とした.H群の40.7 %は硬結非触知であった.各群の平均HbA1cは注射部位変更前と比較し,2ヶ月後及び1年後に低下した.超音波再検はH群23名,M群9名,L群3名で実施し,H群の15例,M群の5例は2~48ヶ月後に高エコー所見が改善した.L群ではいずれの症例も改善を認めなかった.注射部位変更により血糖コントロールは改善することから,硬結非触知であっても血糖が不安定な場合,超音波検査により皮下脂肪組織変化を早期に発見することは重要である.

症例報告
  • 佐藤 愛, 石川 崇広, 前田 祐香里, 武田 健治, 横尾 英孝, 前澤 善朗, 横手 幸太郎
    2019 年62 巻10 号 p. 667-673
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は65歳の男性.27歳時に1型糖尿病と診断され強化インスリン療法を開始した.生活習慣の工夫とインスリン自己調節により厳格な血糖コントロールを続けてきた.X年8月,食前に睡眠をとったところ低血糖性昏睡となり救急搬送された.ブドウ糖投与により意識状態は速やかに改善した.病歴と入院時のHbA1c 5.9 %から日常的な低血糖の存在が疑われた.重症低血糖を回避するため,栄養指導やインスリン製剤の変更を行い,低血糖の危険性について改めて指導した.入院中の精査で,MMSE25点と軽度認知機能低下を認めたが,長い罹病期間にも関わらず細小血管合併症の進行は認めなかった.細小血管障害の予防における血糖管理の有用性と並んで,低血糖が高齢者の認知機能へ及ぼす影響を日常診療の中で体現した示唆に富む症例として,ここに報告する.

  • 堀内 達視, 大濱 俊彦, 土井 準, 栗原 愛, 斎藤 利比古, 道本 智, 田中 聡
    2019 年62 巻10 号 p. 674-679
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    74歳,女性.病院受診歴や健康診断受診歴がなく,糖尿病の指摘はなかった.X年5月上旬,倦怠感,食欲不振,口渇感を自覚した.症状が改善しなかったため5月中旬に近医を受診したところ,38 ℃台の発熱があり,随時血糖396 mg/dL,HbA1c 11.1 %,CRP 9.0 mg/dL,WBC 13000 /μL(好中球88 %),糖尿病に感染の併発が疑われ当院へ紹介された.来院時採血では血中アミラーゼ483 IU/Lと上昇しており,精査目的で造影CTを施行したところ,腎動脈分岐部に感染性動脈瘤を疑う所見がみられた.集学的治療,抗生剤加療にて感染のコントロールを行ったが瘤の拡大を認め,東京女子医大病院に転院搬送し外科的治療が施行された.本症例では,抗生剤投与前,投与後,術中検体において全て細菌培養陰性であり,起因菌が特定されなかったそのため抗生剤のde-escalationに難渋し治療も長期化した.

  • 大塚 隆史, 岡田 洋右, 鳥本 桂一, 稲田 良郁, 鈴鹿 佳南子, 瓜生 康平, 田中 良哉
    2019 年62 巻10 号 p. 680-685
    発行日: 2019/10/30
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は67歳女性.39歳時に2型糖尿病に対して加療開始されるも病識に乏しく,血糖コントロール不良であった.経過中に糖尿病性壊疽に対して左足趾切断術及び右下肢切断術が施行された.発熱・嘔気・腹痛・腰痛が出現して感染性胃腸炎が疑われて入院となったが抗生剤による治療効果が乏しかった.高齢で身体所見に乏しく,血液培養や2回目のCT検査等で弱毒常在菌Streptococcus agalactiae(GBS)が起因菌の両側腸腰筋膿瘍の診断に至った.GBSが起因菌となり,かつ両側腸腰筋膿瘍を呈することは稀だが,血糖コントロール不良の糖尿病を有する下肢切断者はGBS感染の危険因子であり,両側腸腰筋膿瘍をきたす可能性がある.高齢糖尿病患者は腸腰筋膿瘍の身体所見に乏しく,発熱や腰痛などを呈する症例では腸腰筋膿瘍を鑑別に挙げ,丁寧な診察や検査を繰り返して早期診断を行うことが重要である.

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