抗ヒスタミン作用と抗セロトニン作用をもつcyproheptadineに食欲充進, 体重増加作用のあることはすでによく知られている. Drash, A. ら (1966) は, 若年者を対象にして本剤を一定期間投与すると血中インスリンの動きとは無関係に, 空腹時血糖の低下がみられることを明らかにし, 本剤に末梢性の糖利用促進作用のあることを示唆した.ここでは, 糖代謝におよぼす本剤の影響をラットを用い,
in vivoならびに
in vitroの実験で検討した.
in vivoの実験は, Donryu系雄性ラット10匹 (250~3009) にcyproheptadine (0.1mg/1009) を3日間投与した後, 空腹時血糖, インスリン感性試験および経ロブドウ糖負荷試験を行い, それぞれを対照ラット (10匹) と比較した. 一方, in vitroの実験は, ラット6匹 (80~100g) を一群とし, 前述と同様にcyproheptadineを投与した後, 摘出横隔膜と副睾丸脂肪組織を用い, ブドウ糖の基礎摂取能とmediumに添加したインスリンの効果 (glucoseuptake) について対照ラツトと比較した.
cyproheptadine 3日間の経口投与により, ラットの空腹時血糖は投与群82mg/d
l, 非投与群95mg/d
lであり, 投与群において平均13±4mg/d
lの下降を認めた. しかしインスリン感性試験および経ロブドウ糖負荷試験 (血糖血中インスリン) の成績には両者間で有意差はみられなかった. これに対して,
in vitroの実験では, cyproheptadine投与ラットの摘出横階膜と副睾丸脂肪組織のブドウ糖基礎摂取能の増加傾向と, 脂肪組織におけるインスリン効果の有意の増大が認められ, 末梢性の糖利用の促進していることが明らかにされた.
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