糖尿病
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18 巻, 4 号
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  • 平田 幸正, 清水 雅彦, 湯本 東吉, 石津 汪, 安部 宗顕, 大内 伸夫, 市丸 喜一郎, 有道 徳
    1975 年18 巻4 号 p. 325-331
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン自己免疫症候群の2症例の切除膵について, 組織学的検査を行った, この2症例は, インスリン注射を受けたことがないのにかかわらず, その血清中に著明なインスリン結合抗体を有し, 激しい低血糖を示したものである. 第1例は52歳の男で, 低血糖に5年間罹患の後, 膵切除を受けたが, 膵島の数の増加のほか, B顆粒の減少, 膵島の線維化, 膵島内毛細血管の拡張などが認められた. 第2例は61歳の男で, 9ヵ月間低血糖が持続しており, 膵切除を受けたが, B穎粒に富んだ膵島細胞の著明な増殖により, 膵島は明らかな肥大を示した. なお第2例では, 膵外分泌部間質にリンパ球浸潤があり, 一部に炉胞形成をみた. 両者ともinsulitisの所見は示さなかったが, 両者間に上述のような組織所見の差が認められた. 臨床的な差は, 第1例では手術時すでに低血糖発作は起こらなくなっており, 第2例では手術直前まで低血糖発作を起こしていたことに示された.
  • 斎藤 玲子, 柏本 洋子, 赤沼 安夫, 小坂 樹徳
    1975 年18 巻4 号 p. 332-337
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    我々は肥満者の血中lecithin-cholesterol acyltransferase (LCAT) 活性は増加しており, カロリー制限により体重を減少させるとその活性は有意に低下することを前報した. 今回はこの現象がカロリー制限による直接の結果であるのか, またはadiposityにより密接に関係した現象であるのかを検討した. +20%以上の肥満者8例を入院管理下のもとに1日800カロリーの食事制限を2~4週間続けさせこの期間中のLCAT活性と血中脂質の変動を観察した.
    ヵロリー制限中のLCAT活性は8例中6例で低下した. これは食事制限開始1~2週間で最低値に達し前値の約20~40%の低下であった. 血中脂質もカロリー制限で低下傾向を認め, 特に総コレステロールとfree cholesterolの変動はLCAT活性の変動と有意に高い正の相関があった. 一方, 体重はカロリー制限中全例で低下したが, その変動とLCAT活性の変動との間には有意の関係は認められなかった. 以上より肥満者にカロリー制限を行うと血中脂質の低下とともにLCAT活性は低下したが, これは体重の減少に直接関係した現象というよりむしろ血中リボ蛋白代謝を介するものと想定された.
  • 池田 義雄, 斉藤 浩, 松浦 靖彦, 尾林 紀雄, 森本 泰雄, 佐野 隆志, 阿部 正和
    1975 年18 巻4 号 p. 338-343
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    抗ヒスタミン作用と抗セロトニン作用をもつcyproheptadineに食欲充進, 体重増加作用のあることはすでによく知られている. Drash, A. ら (1966) は, 若年者を対象にして本剤を一定期間投与すると血中インスリンの動きとは無関係に, 空腹時血糖の低下がみられることを明らかにし, 本剤に末梢性の糖利用促進作用のあることを示唆した.ここでは, 糖代謝におよぼす本剤の影響をラットを用い, in vivoならびにin vitroの実験で検討した.
    in vivoの実験は, Donryu系雄性ラット10匹 (250~3009) にcyproheptadine (0.1mg/1009) を3日間投与した後, 空腹時血糖, インスリン感性試験および経ロブドウ糖負荷試験を行い, それぞれを対照ラット (10匹) と比較した. 一方, in vitroの実験は, ラット6匹 (80~100g) を一群とし, 前述と同様にcyproheptadineを投与した後, 摘出横隔膜と副睾丸脂肪組織を用い, ブドウ糖の基礎摂取能とmediumに添加したインスリンの効果 (glucoseuptake) について対照ラツトと比較した.
    cyproheptadine 3日間の経口投与により, ラットの空腹時血糖は投与群82mg/dl, 非投与群95mg/dlであり, 投与群において平均13±4mg/dlの下降を認めた. しかしインスリン感性試験および経ロブドウ糖負荷試験 (血糖血中インスリン) の成績には両者間で有意差はみられなかった. これに対して, in vitroの実験では, cyproheptadine投与ラットの摘出横階膜と副睾丸脂肪組織のブドウ糖基礎摂取能の増加傾向と, 脂肪組織におけるインスリン効果の有意の増大が認められ, 末梢性の糖利用の促進していることが明らかにされた.
  • Gluconeogenesis, Ketogenesisに及ぼすTolbutamideおよび外因性Lactateの作用に対する長時間絶食の影響
    坂本 信夫, 堀田 饒, 吉田 正義, 佐藤 祐造, 長嶋 誠, 角田 博信, 井口 昭久, 野村 了
    1975 年18 巻4 号 p. 344-350
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    摘出ラット肝を牛赤血球浮遊液にて灌流した肝灌流法により, 糖新生機能およびケトン体産生機能を指標として長時間絶食時 (72時間) におけるスルフォニール尿素剤 (tolbutamide) および外因性lactateの肝効果を検討した.
    ウイスター系雄ラットを固形食にて飼育し, 72時間絶食後に肝を摘出し灌流に供した. lactateは灌流開始と同時に10mMの濃度で, tolbutamideは予備灌流30分後1.0mg/mlの濃度に添加した. 以後経時的に90分間にわたり採血し, 灌流液中のglucose, lactate, pyruvate, acetacetate, β-hydroxybutyrateを酵素学的に定量した. 得られた成績は以下の如くであった.
    1) 外因性lactateの添加は全灌流時間にわたり肝糖放出を著明に亢進せしめたが, lactate無添加群では灌流開始後30分間観察されるにすぎなかった. このlactate由来肝糖放出は, tolbutamide添加で著明に抑制された. 2) 外因性lactateおよびtolbutamideには, それぞれ抗ケトン作用が示されたが両者の併用によるadditive effectは認められなかった. 3) lactate/pyruvate比の変動はtolbutamide添加の有無により差は示さなかったが, 添加lactateの利用率はtolbutamideにより著明に抑制された. 以上の成績よりtolbutamideおよびlactateの肝における代謝効果について考察を加えた.
  • 大根田 昭, 堀米 賢, 佐藤 栄一
    1975 年18 巻4 号 p. 351-358
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    例のインスリノーマ症例について, 種々のインスリン分泌試験と手術時に得られた腫瘍の形態学的所見の対比を行って, その関連性を検討した.
    光顕所見上, 腫瘍実質細胞量と血管量を組み合わせてインスリン動員態勢の組織学的指標とした. 一方, 電顕所見上, β細胞顆粒を定型顆粒, 非定型顆粒およびそれらの混合型に分けて光顕所見と対比したところ, 定型頬粒より非定型顆粒症例において, 組織学的にはインスリンが動員され易い所見を呈していた. 細胞小器官のうち, 粗面小胞体とGolgi装置の発達度と空腹時の血糖, 血漿インスリン値およびその比1/Gをみると, 小器官の発達している腫瘍程血糖値は低く, インスリン値は高く, 1/Gは上昇していた. β細胞の顆粒型でみると, 定型顆粒で腫瘍は小さく, インスリン含有量は増加していた. また, 腫瘍中インスリンの免疫活性と生物活性を比較すると, 定型顆粒症例では免疫活性が高く, 非定型顆粒のものでは逆に低下していた. 空腹時血漿インスリンのBig率は定型顆粒で低く, 非定型顆粒で増加している. さらに, 種々のインスリン分泌刺激試験のうち, トルブタマイドおよびグルカゴンを投与した際のインスリン反応は, 定型顆粒症例で低く, 非定型顆粒症例で増加していた.
    これらの成績は, インスリノーマにおける血中および腫瘍中インスリンの生化学的所見と, 形態学的所見における関連性を示し, β細胞におけるイソスリンの生成, 貯蔵放出の機序に関して示唆を与えるものである.
  • 田中 亮一, 島 健二, 沢崎 憲夫, 森下 寿々枝, 垂井 清一郎
    1975 年18 巻4 号 p. 359-364
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    これまで, 消化管グルカゴンのインスリン分泌能に関して, 種々報告がなされているが, その成績は必ずしも一定していない. これは, 用いられた消化管グルカゴンの純度に問題があったためと考えられる. そこで我々は, 豚小腸より消化管グルカゴンをKennyの方法を用いて酸-アルコール抽出を行い. さらにCMセルロ_ス, つづいてaffinity chromatographyを用いて精製した. インスリン分泌促進能は, ラット膵切片を用いるin vitro系において検討した. amnitychromatographyにより、蛋白あたりのlmmunoreactive glucagon (IRG) 含量は, 酸-アルコール粗抽出物に比して約170倍に精製され. この製剤中におけるセクレチン, パンクレオザイミン, インスリン含量は, それぞれ測定感度以下であった. 膵グルカゴン250mμg/mlでは明らかにラット膵切片よりのインスリン分泌を促進するにもかかわらず, affinity chromatographyにより精製された消化管グルカゴソは. 10.50.250mμg/mlのいずれのIRG濃度にても, インスリン分泌促進能を示さなかった.
  • 富長 将人, 平田 幸正, 仲村 吉弘
    1975 年18 巻4 号 p. 365-371
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Schlichtkrullらにより抗原性の少ないインスリン製剤として開発されたmonocomponent insulin (MCインスリン) を糖尿病患者に使用し, その抗原性を従来の市販インスリン製剤と比較した.
    従来の市販インスリンよりMCインスリンに転換した13例の患者では, 血中インスリン抗体は低下傾向を示し血中総インスリン量も著明に減少した. すなわち, MCインスリンへの転換前の血中総インスリン量を100%とし. これに対する百分率で示すと, MCインスリンへの転換時6カ月で42.7±8.92%(n=13), 1年後には36.7±10.55%と低下した. これらの患者にMCインスリンから再び従来の市販インスリンに転換した後の血中総インスリン量は再び増加傾向を示した. つぎにMCインスリンにより新しくインスリン治療を開始した患者6例についてみると, そのうち3例にインスリン抗体産生が認められた. その3例中1例はかつてインスリン注射の既往があり, この例では短期間に著明な抗体の出現があり一種の既往反応と考えられた. 残りの2例中1例は徐々に抗体の増加をみ, 他の1例は一度生じた抗体が再び痕跡程度にまで減少した.
    MCインスリンに対し, 抗原性を全く否定することはできないが, 従来の市販インスリン製剤に比し, 抗原性は低いと考えられた.
  • 川合 厚生, 葛谷 信貞
    1975 年18 巻4 号 p. 372-378
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ルココルチコイドによってもたらされる高インスリン血症の機序について, デキサメサゾン (Dex) 1回および3日間連続注射ラットを用いてしらべた. Dex 50μg/100g B. W. を1回皮下注射後12時間目にすでに, 3回注射群と同程度の明らかな高インスリン血症が認められた. 両群共, 血糖もまた顕著な増加を示したが, Dex 3回および1回投与ラット, および無処置対照ラットそれぞれの血中インスリン値対血糖値の比I/Gは一定せず, 上記の順位で大きかった. Dex 1回投与ラットの脂肪組織では, 添加インスリンの糖代謝促進作用は抑制されず, 3回注射群のそれでは, 生理的濃度のインスリンに対してのみ拮抗作用が認められた. 上記3群から採り出したラット膵片にブドウ糖3mg/mlを添加してin vitroのインスリン分泌をみると, Dex投与2群におけるインスリン分泌は, 明らかに対照群のそれを凌駕していたのみならずDex処置ラット膵では, グルカゴンおよびアミノフィリンに対するインスリン反応も亢進していた. しかしトルブタマイド (3.3mg/ml) に対する反応は対照群と変わらなかった.
    上記の成績から, Dexによって極めて早期にもたらされる高インスリン血症は, 高血糖や, 末梢組織のインスリン感性低下を介して起こるよりも, このステロイドが, 特定のインスリン分泌刺激に対する膵ラ氏島の感受性を高めることに由来するものと推定される.
  • アンケート調査による
    三原 俊彦, 平田 幸正
    1975 年18 巻4 号 p. 379-385
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    昭和43年・44年・45年の3年間に死亡した糖尿病患者について, 全国の官公立病院を主としたアンケート調査を行い, 集計された1,885名のうち, 糖尿病の罹病期間および死亡年齢がともに記載された1,739名を対象とし, 推定発症年齢および死亡年齢と死因との齢こついて淵を行った発症年齢が50歳未満の各群では男女とも腎症による死亡者が最も多く, 50歳以上で発症したものでは脳血管障害による死亡者が最も多数を占めた.発症年齢が25歳未満の小児・若年糖尿病死亡者66例では, その大部分が40歳未満の死亡であり, さらに, 死因の大部分は腎症, 糖尿病昏睡, 感染症であり, 脳血管障害, 虚血性心疾患, 悪性新生物, 肝硬変による死亡はみられなかった.なお, 若年発症糖尿病死亡症例の場合, 糖尿病昏睡死症例は発症後比較的早期に死亡する傾向があるのに対し, 腎症死症例では発症後比較的長い年月を経て死亡するという傾向がみられた.死亡年齢と死因との関係をみると, 30歳未満死亡例では糖尿病昏睡, 30~59歳死亡例では腎症, 60歳以上死亡例では脳血管障害による死亡者が最も多かった.糖尿病発症時の平均余命に対する糖尿病罹病年数の百分率を生存期間率で示し, 糖尿病昏睡および糖尿病性腎症で死亡した症例について生存期間率を比較した.これでみると, 昏睡死症例では腎症死症例に比し生存期間率が有意に低く, 腎症死症例では男性に比し女性の生存期間率が有意に低いという成績を示した.
  • 杉山 悟, 河野 泰子, 川元 孝久, 枦木 秀生, 園田 智子, 山下 俊作, 川 明
    1975 年18 巻4 号 p. 387-393
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    同一人に50g OGTT (GTT), アルコール単独負荷およびアルコールと糖の同時負荷 (AGTT) を行い, 血糖, IRI, 血清脂質, ヒト成長ホルモン (HGH) および血漿コーチゾール (CS) を測定し, 次の結果を得た.
    1) アルコール単独負荷では血糖, IRI, 血清脂質に有意の変動はなかった.2) GTT正常群では, アルコール負荷により耐糖能の低下と血糖に対応したIRI上昇がみられた.3) 軽症糖尿病群では, AGTTにおいてGTTに比し血糖の有意の低下 (p<0.01) がみられたが, IRIはGTT, AGTT間に有意差がなかった.4) FBS 140mg/dl以上の糖尿病群およびSU剤治療群のGTTとAGTTとにおいては, 血糖, IRIとも有意差がなかった.5) GTT境界型群では, 血糖レベルは49例を全体としてみるとAGTTとGTTに差はなかった.しかしこの群はアルコール負荷によって耐糖能の悪化したもの16例, 不変18例, 改善したもの15例が観察された.これら3群間には, 肥満度, 肝障害の有無, 飲酒歴およびIRI反応に有意の差はみられなかった.6) アルコールの同時負荷はGTT時にみられた血清総コレステロール, 血清トリグリセライド, 血清遊離脂肪酸, 血清HGHおよび血漿コーチゾールの変動に影響を与えなかった.従って, 上述したアルコール同時負荷による耐糖能の変化は, これらの脂質やホルモンを介するものとは考え難い.
  • インスリンおよびC-peptideについて
    豊田 隆謙, 川真田 文章, 上畑 滋, 工藤 幹彦, 阿部 寛治, 木村 健一, 後藤 由夫
    1975 年18 巻4 号 p. 394-401
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    radioimmunoassayのデーターを電子計算機で自動処理することは理論的には可能とされておりradioimmunoassayが開発されて以来, そのための多くの関数が考えられてきた.われわれはRodbardの関数を用い, 2抗体法によるインスリンおよびC-peptide測定の自動処理について検討した.従来行われてきた手書きの標準曲線からの「読みとり値」と電子計算機で算出された「自動処理値」はよく相関し (インスリン: r=0.99485, C-peptide: r=0.99850), 回帰式はインスリンではY= 0.956X+1.98, C-peptideではY=1.12X十4.0であった.さらにインスリン測定に関しては測定値の補正を試み, 電子計算機iにより補正された値ともよく相関して, 少なくともradioimmunoassayが適正に行われている限りデーターの自動処理が可能であり, 大量の試料を迅速かつ適正に処理しうると云う結果を得た.このことは将来radioimmunoassayが適正に行われているかどうかをコンピュターに判断させることも可能であることを示唆している。
  • 肥満の代謝異常と脂肪組織の形態的変化との関連性について
    佐々木 英継, 佐野 隆志, 小山 勝一, 阿部 正和
    1975 年18 巻4 号 p. 402-409
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肥満の病因論の観点から, 肥満における代謝異常と脂肪細胞の形態的変化との関連性を検討することが本論文の目的である.
    ヒトの脂肪細胞の形態的変化を観察する目的で, 手術時に得た腹壁皮下脂肪組織片を2%四酸化オスミウム液を用いて脂肪細胞を分離固定し, 脂肪細胞の数と大きさを決定した.対象者の脂肪細胞の数は, 体脂肪量を脂肪細胞の脂質含量で割ることによって求めた.体脂肪量はMartinssonの用いた式を利用して計算によって得た.その結果, 軽度および中等度の肥満は, 脂肪細胞の大きさとの関連があるという成績を得た.
    なお, 脂肪細胞の大きさから肥満を分類すると, 2つのタイプに大別された.その一つは
    脂肪細胞の肥大型であり, 他は正常型であった.後者は肥満の発症が幼若年代であり, 脂肪細胞の数の増加していることが明らかになった.脂肪細胞肥大型肥満では, 脂肪細胞正常型肥満とは対照的に, ブドウ糖負荷後の高インスリン反応, 耐糖力低下および空腹時血中遊離脂肪酸の増加を伴っていた.
    脂肪細胞の肥大と高インスリン反応および代謝異常との因果関係については不明であり, 今後の検討を要するが, 目下のところでは脂肪細胞の肥大は, 過剰に分泌されたインスリンの作用によってひき起こされた2次的なもののように思われる.
  • 肥大脂肪細胞の脂質分解に関する検討
    佐々木 英継, 佐野 隆志, 小山 勝一, 阿部 正和
    1975 年18 巻4 号 p. 410-417
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    肥満における代謝異常と脂肪細胞の形態的変化との関係について先に報告した。
    ここでは, ヒトの摘出した脂肪細胞の形態的変化, 特に脂肪細胞の大きさと.その細胞の代謝活性との関連性について検討を行った.
    ヒト摘出脂肪細胞は腹壁皮下脂肪組織から手術時に得た。代謝活性は, 脂肪細胞からのグリセロール放出量であらわした.
    肥満では, 脂肪細胞の大きさがいつも増大していた。肥満の脂肪細胞は, 非肥満の脂肪細胞より, そのbasal lipolysisは高い割合を示した.しかし, 高濃度ノルエピネフリンやdibutyril cyclic AMPによる刺激の際の脂質分解は, むしろ減少していた.更に吟味すると, basal lipolysisの充進は, 脂肪細胞の大きさといちじるしい関連があった.ノルエピネフリンとdibutyrll cyclic AMPによる刺激では, その脂質分解反応は脂肪細胞の大きさの増加とともに増加する傾向を示した.しかし, 大きな脂肪細胞が多数を占める場合には, 脂肪細胞の脂質分解反応はむしろ減少することが明らかになった.
    このように肥大した脂肪細胞が多い場合に弱い脂質分解反応を示すという知見は, 脂質分解の活性化機構が, なんらかの要因によって抑制されていることを示唆している
  • 特にインスリン治療と経口剤治療との比較
    斎藤 玲子, 柏本 洋子, 大森 安恵
    1975 年18 巻4 号 p. 418-426
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    長期間インスリンおよび内服剤で継続治療を行っている糖尿病患者139名の血中脂質を分析し血糖のコントロールの良否別にわけて比較検討した.血中総脂質, 中性脂肪, 総コレステロールはいずれも内服剤でコントロール不良の群が内服剤コントロール良好群およびインスリン治療群に比し明らかに高値を示した.遊離脂肪酸は各治療群の間で大差は認められなかった。総脂質および各脂質の脂酸構成はパルミチン酸の増加, オレイン酸の増加, リノール酸の減少を認めたが, これは血中脂質の著明な高値を示した内服剤コントロール不良群でもっとも顕著であった.
    なお対象を選ぶ際には肥満や明らかな動脈硬化症やその他血中脂質の増加をきたすとされている諸疾患を除外したが, 高血圧や心電図ST・T異常者は除ききれず内服剤コントロール不良群にもっとも高率に含まれていた.このことと同群の血中脂質が異常高値を示したこととの関連性も否定はできないが, 今後内服剤治療を長期間続ける場合には, 十分良いコントールが得られなければ血中脂質の改善は乏しいということに注意すべきである.
  • 佐藤 徳太郎, 奥山 牧夫, 斉藤 毅, 古山 隆, 佐藤 隆夫, 本間 一男, 安田 圭吾, 菊地 正邦, 吉永 馨, 玉井 信, 原田 ...
    1975 年18 巻4 号 p. 427-433
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性合併症は一次性糖尿病のみならず二次性糖尿病や実験糖尿病動物においてもみられる.さらに, 病因ならびに病態において一次性糖尿病と異なる脂肪萎縮性糖尿病においても糖尿病性合併症のみられることは, 合併症の成因に糖質代謝障害を含む代謝障害が強く関与していることを示唆する
    我々は本症の6例を経験し, うち3例に糖尿病性合併症を認めたのでその臨床経過ならびに合併症の詳細について検討した.
    症例はいずれもcongenital typeで糖尿病は脂肪萎縮に遅れて発症した.糖尿病性合併症は糖尿病発見後0~5年に発症し, 網膜症, 腎症, 神経症などが認められた.2例にTriopathyを認めた.尿蛋白は全例に陽性で糖尿病発見0~10年の間に出現した.腎機能は1例でGFRが70.8ml/minと軽度に低下していたが他の成績に異常を認めなかった.糖尿病性腎症の存在は腎生検により組織学的に確認され, 1例に結節性病変がみられた.糖尿病性網膜症は2例にみられ糖尿病発見と同時または5年に発症しScottIa~IIaの所見であった.1例に片眼性の増殖性変化が認められた末梢神経症は2例にみられ末梢神経伝導速度の低下を伴っていたうち1例に自律神経障害による発汗異常もみられた.
  • 中野 昌弘, 伊東 三夫, 森 勢伊, 山本 登士, 浜崎 利孝, 平田 幸正, 富長 将人, 見坊 隆, 仲村 吉弘
    1975 年18 巻4 号 p. 434-439
    発行日: 1975/07/31
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    早朝空腹時の低血糖発作をくり返して起こすようになったインスリン自己免疫症候群の21歳の女性を副腎皮質ホルモンで治療した.患者にはインスリン使用歴はないのに, 血清中にインスリン結合抗体の存在が認められ, 平田の報告したインスリン自己免疫症候群に一致していた.
    患者磁清より抽出したインスリンは, 21,500μU/mlと異常高値を示し, 血清中のインスリン結合抗体は, 牛よりも人および豚インスリンとの結合力が強く, また抗体のlight chainはカッパー型のみであった.
    インスリン抗体抑制の目的で副腎皮質ホルモンの投与を行い, 血中インスリンの減少をみると共に低血糖発作も起こさなくなり, 現在順調に経過している.
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