妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus;GDM)の臨床的意義として,①妊娠合併症の増加,②母体の将来の2型糖尿病発症を含めた疾患発症の増加,③次世代の耐糖能低下や肥満を含めた疾患発症の増加といった短期・中期・長期にわたる問題点があげられる.すなわちGDMは,母児共に妊娠中のみならず長期的な合併症の発症とも関連する点より診断を含めた管理は重要であるといえる.GDMは妊娠時に初めて発見された耐糖能低下である.GDMの診断基準は,heavy-for date(HFD)児といったGDMの望ましくない妊娠アウトカムと関連する血糖値のカットオフ値を求めることにより設定するが,当然,GDMの診断を行い,治療介入することにより望ましくない妊娠アウトカムの発生率を下げることができれば望ましい.本稿では,GDMの診断に関する現在の運用法と問題点につき概説する.
2型糖尿病の治療において,健康情報記録(PHR)であるスマートフォンアプリ「Welbyマイカルテ」(以降PHR)を活用して,HbA1cと体重の低下効果を検討した.2型糖尿病患者のうち24ヵ月以上PHRを利用した118例(男性97例,女性21例)を対象とした.評価項目は,PHR利用開始から24ヵ月間のHbA1c,体重のベースライン値との差とした.さらにPHR利用頻度別(15回/月以上または未満)に2群にわけて比較検討した.全例においてHbA1cは7.2 %から6.8 %へと有意に改善した.高利用群では7.1 %から6.4 %へと高い改善率を示したが,低利用群では有意な変化は認められなかった.体重も全例および高利用群で有意な低下が認められた.PHRの活用により生活習慣改善に対する意識が向上し,HbA1cが改善することが示唆された.
69歳男性の2型糖尿病患者,併存疾患に遺伝性毛細血管拡張症があり.炭水化物の制限を意識して4ヶ月後,血糖コントロール悪化と意識障害で入院した.入院後,高アンモニア血症及び門脈大循環シャントの診断に至った.筋肉量の低下が生じないようBCAA製剤投与を行い,緩下剤投与・メトホルミン投与などに加えて難吸収性抗菌薬であるカナマイシンを開始し高アンモニア血症と意識障害の改善を認めた.蛋白質摂取の量や質,排便コントロールは肝性脳症と糖尿病に共通の課題であり,本症例のような肝硬変を背景としない肝性脳症を来した糖尿病症例の予後改善には,複合的な視点で治療を考えることが有用と考えられる.