日本人一般地域住民における80歳高齢者の生命予後に対する糖尿病と骨評価指数(QUS法のStiffness値)の影響を明らかにするため,福岡県北九州市近郊に住む80歳519名で12年間の生存期間と死因(全死亡,肺炎死,循環器死,悪性腫瘍死)を糖尿病なし+Stiffness高値群(I群,n=334),糖尿病なし+Stiffness低値群(II群,n=129),糖尿病あり+Stiffness高値群(III群,n=48),糖尿病あり+Stiffness低値群(IV群,n=8)の4群で比較した.Kaplan-Meier法では,全死亡,肺炎死,悪性腫瘍死において,I群に対しIV群の累積生存率が最も低かった.Cox回帰分析では,I群に対しIV群のハザード比は全死亡で3.39倍,肺炎死で6.14倍,悪性腫瘍死で5.04倍であった.骨評価指数の低下と糖尿病は独立に,そして相加的に生命予後に影響すると考えられた.
【目的】75gOGTTの男女差を調べる.【方法】2008年11月~2015年5月に当院で75gOGTTを行いHbA1c値が6.0~6.4 %の375名(男性146名,女性229名)について血糖値を男女間で比較した.【結果】男性は0,30,60,120分血糖値のすべてで女性よりも有意に高値を示した.各血糖値を目的変数とした重回帰分析は,性別,Insulinogenic index(II),HOMA-IRが4点の血糖値で,身長が60,120分値で有意な独立変数であった.判定区分別では,境界型の0,30,60分値で男性が,120分値で女性が有意に高値を示した.正常型は境界型と同じ傾向を示したが有意差を認めなかった.糖尿病型は120分値で男性が高い傾向を示したが有意差を認めなかった.各区分のHbA1c値に男女差はなかった.【結語】糖尿病型では境界型で見られた血糖値の男女差が消失した.
本研究は後ろ向き研究で,シタグリプチンを中心とした治療によりHbA1c 7 %未満を目指し,開始後60ケ月間経過観察ができた519例を対象に開始時からのHbA1c・体重の変化や,60ケ月時点でHbA1c 7 %未満達成患者と8 %以上の患者の患者背景の違いを検討した.さらに,多重ロジスティック回帰分析を用いてHbA1c 7 %未満達成に関連する要因を検討した.
HbA1cは7.7±0.9 %から60ケ月後7.1±0.9 %と有意な低下を認めたが,体重は有意差を認めなかった.HbA1c 7 %未満達成群ではHbA1c 8 %以上の群に比べ,有意に年齢は高く,体重の減少幅が大きく,開始時のHbA1cは低く,罹病期間が短く,60ケ月後の併用薬剤数が少なかった.またHbA1c 7 %未満達成の要因として開始時のHbA1c,SU薬の有無や開始時からの体重の増減が関連しており,シタグリプチンの使用の際には体重の管理の重要性が示された.
外来通院中の糖尿病患者230名において,初回から2年後に測定した糖尿病セルフケア運動自己効力感尺度(ESESD)は,2年後に測定したHbA1cと負の関係性を有していた(p=0.022).また2年後から初回のHbA1cを引いた変化値は,2年後から初回のESESD点数を引いた変化値と負の関係性を有していた(p=0.049).糖尿病患者93名において,教育入院前に比較して,後に測定した糖尿病セルフケア自己効力感尺度(SESD)及びESESDは,高値を示した(p<0.001,p<0.001).1年後から入院時のHbA1cを引いた変化値は,入院後のESESDから前の点数を引いた変化値と負の相関を示した(p=0.010).自己効力感の上昇は,血糖コントロールの改善に繋がり,SESD及びESESDを用いた自己効力感測定は,セルフケア支援のための有意義な情報である.