糖尿病
Online ISSN : 1881-588X
Print ISSN : 0021-437X
ISSN-L : 0021-437X
55 巻, 10 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
原著
診断・治療(食事・運動・薬物治療)
  • 川崎 恵美, 朝倉 俊成, 柄沢 仁美, 影向 範昭
    2012 年 55 巻 10 号 p. 753-760
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    臨床での懸濁インスリン製剤の保管環境と混和状態を評価した.その結果,20~24 ℃,水平・上下に往復させる方法(R-T1)が最も混ざりやすく,理論値に近かった.製剤別では,二相性プロタミン結晶性インスリンアナログ水性懸濁注射液のノボラピッド50ミックス注フレックスペン(50MIX),ノボラピッド70ミックス注フレックスペン(70MIX)が極めて混ざりにくく,結晶濃度のばらつきも大きかった.このことから,懸濁製剤を完全に懸濁するためには,使用中は低温保管を避け,冷たくなった場合は手のひらで20~24 ℃に温めて混和する,混和はR-T1を用い,1セットごとに結晶の塊の有無を確認しながら2セット以上行い,結晶の塊がなくなるまで混和することが必要であると考える.
  • 紅林 昌吾, 長尾 綾子, 大月 道夫, 金塚 東, 川井 紘一, 平尾 紘一, 小林 正, 糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)
    2012 年 55 巻 10 号 p. 761-767
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    Dipeptidyl peptidase(以下DPP)-4阻害薬が登場したが,本薬を含む多剤併用療法の実態は未だ明らかではない.我々は本薬の開始状況を調査し,DPP-4阻害薬を追加した多剤併用療法の有効性について検討した.対象は本薬開始6ヶ月間の経過観察が行われた2型糖尿病患者1656例で,DPP-4阻害薬を追加した多剤併用症例が61.5 %を占めた.併用薬種類数は1/2/3剤が31/50/18 %で,スルホニル尿素薬とビグアナイド薬との3剤併用が最多であった.経口薬の前治療が有る併用群全体では,6ヶ月後HbA1c値は7.75±1.00 %から6.96±0.92 %まで改善した(p<0.01).併用薬の種類数(1-3)別と頻用された組み合わせ別に6か月間のHbA1c低下幅を比較すると,有意差を認めなかった.本薬を追加する併用療法において,併用薬種類数や薬剤組み合わせによらず,ほぼ同等の血糖コントロールの改善が得られた.短期間の治療成績に基づいた後ろ向き研究であるが,DPP-4阻害薬を含む多剤併用療法の有用性が観察された.
患者心理・行動科学
  • 税所 芳史, 伊藤 裕
    2012 年 55 巻 10 号 p. 768-773
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の治療中断は合併症の進行につながることから治療中断に関わる指標を明らかにすることは重要である.今回我々は外来通院中の2型糖尿病患者に対するアンケート調査を行い,過去の治療中断意思の有無と糖尿病治療満足度質問表(DTSQ)による糖尿病治療に対する満足度との関連を検討した.その結果,治療中断意思ありと回答した患者ではDTSQスコアは有意に低かった(21.6±6.9 vs. 26.2±6.2, P=0.006).Receiver operating characteristic解析において,DTSQスコアは治療中断意思の有意な予知因子となり(曲線下面積0.696, P=0.006),最適カットオフ値は22.5(感度63.2 %,特異度70.8 %)であった.患者の治療満足度と治療中断意思とは関連する可能性がある.
症例報告
  • 大堀 哲也, 犬飼 浩一, 今井 健太, 安田 重光, 神垣 多希, 小野 啓, 栗原 進, 片山 茂裕, 粟田 卓也
    2012 年 55 巻 10 号 p. 774-780
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    本症例は32歳男性,高血糖と足壊疽にて当院形成外科に入院し,インスリン治療中に重症低血糖を発症し,GCS(E1, V2, M2)の意識障害が遷延するに至った.発症当日のMRIでは,拡散強調画像にて両側深部白質および尾状核の高信号を認め,低血糖脳症と診断した.第3病日には同部位の高信号が増強するも,第7病日には減弱傾向となった.第20病日から意識障害の回復を認め,第29病日,拡散強調画像の高信号はほぼ消失した.その後も順調に回復し,4か月後には歩行,会話も可能となり自宅退院となった.一般的に重症低血糖脳症が遷延した場合予後が悪く,不可逆的な脳実質の変化や高度な萎縮を来たして最終的に死亡に至るケースも稀ではない.本症例では,拡散強調画像での異常信号は深部白質と尾状核に限局し,可逆的変化を辿った.それに伴い意識回復に至っており,低血糖脳症の予後を考えるうえで貴重な症例と考え報告する.
  • 佐々木 真弓, 原田 範雄, 佐藤 広規, 豊田 健太郎, 濱崎 暁洋, 長嶋 一昭, 藤本 新平, 稲垣 暢也
    2012 年 55 巻 10 号 p. 781-785
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.乾性咳漱,口渇,多飲,多尿を自覚し,体重減少(-3 kg/3日)も認めたため当科入院となった.初診時HbA1c 6.5 %(以下HbA1cはJDS値で記載),随時血糖488 mg/dl,空腹時血清C-ペプチド0.2 ng/ml,尿ケトン体陽性(3+)より劇症1型糖尿病と診断した.グルカゴン負荷試験では負荷前,負荷後ともに検出感度以下,クラスII HLAハプロタイプはDR4-DQ4を有していた.膵島関連自己抗体glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体,insulinoma-associated antigen-2(IA-2)抗体ともに陽性であり,血中膵外分泌酵素の著明な上昇を認めない点が劇症1型糖尿病として非典型的であった.既存症に全身性強皮症を有した.GAD抗体とIA-2抗体両方が陽性を示した劇症1型糖尿病は稀であり,貴重な症例であると考え報告する.
  • 吉嵜 友之, 本田 宗宏
    2012 年 55 巻 10 号 p. 786-792
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    症例は91歳男性.60歳時に2型糖尿病と診断され,78歳時にインスリン治療を開始.当院初診時,61単位のインスリンを使用していたにもかかわらず,HbA1c 10.6 %(NGSP値)と血糖コントロールは不良であった.腹部の診察でインスリン注射部位に弾性硬の腫瘤を認め,精査目的で入院した.腹部MRI検査で腫瘤はT1およびT2強調画像で低信号を示し脂肪抑制画像で信号が抑制されず,皮膚生検ではCongo-Red染色で橙染する淡好酸性無構造物質であり,インスリン注射による局所的アミロイド沈着と診断した.インスリン注射部位を変更したところインスリン必要量は著明に減少した.健常皮膚とアミロイド沈着部位にインスリンを注射し比較検討した結果,アミロイド沈着部位では健常皮膚と比べて,血中総インスリン値が著明に低値であり,インスリン吸収が著しく低下していた.局所的アミロイド沈着におけるインスリン吸収率を検討した例はなく,貴重と考え報告する.
  • 長田 侑, 鈴木 恵一郎, 中島 玲子, 堀地 直也, 沢 丞
    2012 年 55 巻 10 号 p. 793-797
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    症例は92歳,女性.認知症のため老人施設に入所中.糖尿病の指摘歴はなかった.2011年6月9日から食思不振,10日から頻呼吸を認め,当院に救急搬送された.尿ケトン(2+),随時血糖値986 mg/dl,アニオンギャップ開大を伴う代謝性アシドーシスを認め,糖尿病性ケトアシドーシスと診断し,インスリン治療を開始し軽快した.HbA1c 6.4 %(以下HbA1cはNGSP値で表記(Diabetol Int 3(1):8-10, 2012. ))と上昇が乏しく,インスリン分泌能は枯渇しており,膵島関連抗体は陰性で,劇症1型糖尿病の診断基準に合致した.われわれの検索した範囲では,本例は他の病型を含めた1型糖尿病における国内最高齢での発症報告例となる.認知症を有する高齢者の劇症1型糖尿病では,本例のように典型的糖尿病症状を来たさない症例もあり,診療の上で留意すべきと思われた.
  • 西野 雅之, 那須 鉄史, 中尾 隆太郎, 増井 由毅, 松本 幸, 山本 康久, 玉置 真也, 庄野 剛史, 辰田 仁美, 細 隆信, 南 ...
    2012 年 55 巻 10 号 p. 798-802
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    82歳男性.左大腿骨頚部骨折受傷時に2型糖尿病を指摘,以後当院内科にて2型糖尿病で通院中であった.7月初旬ごろから37度程度の微熱と食欲低下を認め,市販の消化剤を内服しても症状の改善がなく,7月17日朝から突然嘔吐を繰り返したため当院救急受診となった.腹部CT検査にて小腸ガスの貯留,血液検査にて炎症反応,血糖値上昇を認めたため,イレウスの診断にて入院.翌日,下腹部痛の増悪を認め腹部CT検査にて骨盤腔内遊離ガス様所見を認め,消化管穿孔を疑い試験開腹術を施行した.手術所見では消化管穿孔は認めず,膀胱壁の握雪感,浮腫状変化を認めた.膀胱鏡検査で粘膜下に気泡の貯留を認め気腫性膀胱炎と診断.尿道カテーテル挿入,抗生剤投与,絶食のうえ血糖コントロールはインスリンで行った.炎症反応の軽快,膀胱壁のガス像も消失し退院となった.今回われわれは消化管穿孔と鑑別が困難であった気腫性膀胱炎の1例を経験したので報告する.
  • 金森 岳広, 竹下 有美枝, 御簾 博文, 加藤 健一郎, 太田 嗣人, 金子 周一, 篁 俊成
    2012 年 55 巻 10 号 p. 803-808
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    症例はCMT病の48歳,男性.45歳時から口渇・多飲多尿を認め,46歳時の検診でHbA1c 10.8 %(NGSP)を認めた.当科に第一回入院時,身体所見で内臓脂肪型肥満(体重84 kg, BMI 28.1 kg/m2,腹囲101 cm)と四肢遠位部の筋萎縮を認め,高インスリン正常血糖クランプ検査はMCR 4.38 ml/kg/分と末梢組織における高度のインスリン抵抗性を示した.また,肝生検にて肝線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と診断した.食事・運動療法とインスリン療法を開始し,1年半の外来経過中に19.6 kgの減量(体重64.4 kg, BMI 21.8 kg/m2,腹囲75.5 cm)に成功し,HbA1c 5 %台の良好な血糖コントロールを得た.第二回入院時にMCR 6.86 ml/kg/分とインスリン抵抗性の著明な改善を認め,肝生検ではNAFLDの所見が消失した.CMT病合併糖尿病も肥満を伴う症例では,食事・運動療法による減量がインスリン抵抗性の改善と血糖コントロールに有効と考えられた.
  • 二宮 大輔, 長谷部 晋士, 仙波 尊教, 酒井 武則, 上村 重喜
    2012 年 55 巻 10 号 p. 809-814
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    症例は77歳男性,高血圧で加療中.腰痛に対してロキソプロフェンナトリウムの投与1カ月後に低血糖による意識障害で救急搬送された.低血糖時のIRIは196.6 μU/mlと高値,抗インスリン抗体陽性,HLA遺伝子型DRB1*04:06を有しインスリン自己免疫症候群と診断した.分割食への変更のみでは低血糖発作が続くためαグルコシダーゼ阻害薬を開始したところ低血糖の頻度は減少した.その際に持続血糖モニターにてαグルコシダーゼ阻害薬の投与による血糖低下の抑制を確認しえたので報告する.
委員会報告
  • 今川 彰久, 花房 俊昭, 粟田 卓也, 池上 博司, 内潟 安子, 大澤 春彦, 川崎 英二, 川畑 由美子, 小林 哲郎, 島田 朗, ...
    2012 年 55 巻 10 号 p. 815-820
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/16
    ジャーナル フリー
    劇症1型糖尿病診断基準を一部改訂し,劇症1型糖尿病診断基準(2012)として提示した.本疾患において,急激な血糖上昇という疾患の本態を表現し,かつ見逃しを防ぐために,感度の高い基準が必要である.そこで,劇症1型糖尿病382例の発症時HbA1c値より,感度100 %となる最小のHbA1c値を算出し,「8.7 %(NGSP値)未満」という値を得た.この値はROC解析でも最適値であることから,新診断基準に採用した.その他,注釈として,「劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は,必ずしもこの数字(発症時HbA1c 8.7 %(NGSP値)未満)は該当しない.」,参考所見に「HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている.」,を加えた.他の項目については,現行診断基準の改訂を必要とする根拠となるようなデータは得られなかった.また,スクリーニング基準は引き続き有効と考えられるので,今回の改訂の対象とはせず,2004年に策定した基準を引き続き用いることとした.
地方会記録
feedback
Top