1型糖尿病は,本邦では比較的まれな疾患であるが,糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で診断されることが少なくない.我々は,当科で管理中の1型糖尿病患者で初診時の血液ガス検査の結果が確認できた47例をDKAの有無および重症度別に分類し,初発時の臨床症状,臨床経過,血液検査結果を解析した.重症DKAを発症した例は全例糖尿病と診断される前に活気不良,腹痛,嘔吐など非特異的な症状を主訴に医療機関を受診し,胃腸炎や感冒と診断されていた.非特異的な症状から糖尿病の可能性を疑うことは困難であったと思われるが,事後の問診で多飲・多尿・体重減少を認めていたことが判明している.丁寧に問診して多飲・多尿が判明し,DKAをきたさずに診断された例もみられた.したがって,感冒症状や胃腸症状を主訴に受診された場合にも1型糖尿病を念頭に置いた問診をすることが重要と考えられた.
症例は68歳男性.2型糖尿病に加えて幽門側胃切除術の影響から顕著な食後高血糖があり,血糖コントロールに難渋していた.61歳時にはインスリン導入となったが,インスリンアレルギーが疑われ中止となり,その後食事療法の徹底に加えインスリン以外のあらゆる薬物療法が行われたがコントロール困難であった.67歳時,皮膚テスト陰性であったインスリングルリジンを導入した際も局所性・即時型アレルギーが再現した.インスリン療法が必要であるため対症療法で治療継続したところ,アレルギー症状の寛解に続いて,低親和性・高結合能を有するインスリン抗体に起因した臨床的に重大な低血糖が生じた.ステロイド治療により血糖コントロールは改善したが,本症例では,局所性インスリンアレルギー出現時の治療継続が,減感作療法による副作用と同様,インスリン抗体の惹起,血糖不安定性をきたす可能性が示唆されたためここに報告する.