本研究はSAP導入後の効果を検討するため,CSIIからSAPに変更後1年以上経過した1型糖尿病22症例を解析した後ろ向き観察研究である.HbA1cはSAP前と比較して6ヵ月(6M)では不変,12Mで有意に低下した(各々7.6±0.7 %,7.4±0.9 %,7.1±0.9 %).6Mの時点でHbA1c 0.1 %以上低下した群を6M低下群,変化なし又は0.1 %以上上昇した群を6M不変・上昇群と定義したところ,6M不変・上昇群で0MのHbA1cが有意に低値で,重回帰分析では基礎インスリン比率の変化(6M)がHbA1c変化量(6M)の有意な決定因子として採用され,負の相関を示した.また,6M不変・上昇群では0MのSMBGで低血糖頻度が有意に高く,1Mで有意に低下した.臨床的にSMBGでの低血糖が多い症例ではSAP導入後にHbA1c上昇を呈す事もあり,注意を要する.
近年,2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬による肝機能改善効果を示す報告が散見される.しかし,肝線維化指標に与える影響は未だ明らかではない.本検討では外来にてSGLT2阻害薬が開始され,6ヶ月以上追跡可能であった2型糖尿病患者138例(年齢58±10歳,BMI 29.3±4.4,HbA1c 8.1±1.1 %)を対象に,6ヶ月間における肝機能推移とともに肝線維化指標であるFIB4 indexの推移を後ろ向きに調査した.結果,AST,ALT,γGTPは有意な改善を認めた(p<0.005).一方,FIB4 indexは全集団においては有意な変化を認めなかったが(p=0.338),投与開始時に肝機能異常(ALT≥36 U/L)を有する群においては有意な改善を認めた(p=0.008).以上より,SGLT2阻害薬は肝機能異常を有する2型糖尿病患者の肝線維化指標の改善に有用である可能性がある.
Remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)症候群とは,急性関節痛・四肢末端の圧痕性浮腫を特徴とする炎症性疾患であり,DPP-4阻害薬の副作用として報告されているが,高リスク群や量依存性の有無などの詳細は不明である.我々は,DPP-4阻害薬内服中にRS3PE症候群が発症・増悪した6例(シタグリプチン3例,ビルダグリプチン2例,リナグリプチン1例)を経験した.男性3例,年齢中央値72.5歳,HbA1c中央値7.6 %.全例で膠原病の合併または家族歴を認めた.2例はDPP-4阻害薬の種類変更後に発症し,1例は同一DPP-4阻害薬の増量後に発症した.RS3PE症候群発症は,膠原病の合併や家族歴との関連が疑われ,患者側のリスク状態の変化や被疑薬増量に伴い発症する可能性が示唆された.
日本糖尿病学会の「女性糖尿病医をpromoteする委員会」は,糖尿病医の働き方や生活時間の現状について2017年5~6月にアンケート調査を行った.対象は糖尿病専門医5,298名で,1,566名(男性1,003名,女性563名)からの回答を得た.男性の94 %,女性の72 %が常勤であり,診療科科長は男性21 %に対して女性7 %,研修指導医も男性23 %,女性13 %で共に女性で少なかった.1日の時間配分では,勤務時間は男性10.7時間,女性8.5時間,睡眠時間は男女ともに6.3時間,家事は男性1.0時間,女性3.3時間,育児・介護は男性0.7時間,女性2.8時間で,特に育児世代では男性1.4時間,女性4.9時間と女性で有意に長かった.今後の女性糖尿病医の活躍,男性糖尿病医の過重労働抑制,男女ともに糖尿病医としてキャリアアップするために,職場環境の整備,学会による支援の必要性などが認識された.