糖尿病
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66 巻, 9 号
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原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 羽鹿 由里子, 川口 祐司, 濱崎 健司, 久米田 靖郎
    2023 年 66 巻 9 号 p. 667-674
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル 認証あり

    経口セマグルチドは注射でない点で導入しやすいGLP-1受容体作動薬であるが,実臨床における高齢者の有効性と安全性は不明なままである.そこで当院で経口セマグルチドを開始した高齢2型糖尿病患者39例を後ろ向きに観察し,内服継続困難なため中止となった7例を除く32例の最終解析を行った.主要評価項目は,投与12週後・24週後のHbA1c,BMIの変化,個々目標HbA1c達成率とした.平均年齢は76.0±4.8歳,平均BMIは27.7±5.1 kg/m2であった.24週後に全体群でHbA1c,BMIが有意に低下し,副次評価項目のLDLコレステロールは全体群と7 mg継続群で有意な低下を認めた.24週後の個々の目標HbA1c達成率は68.8 %であった.日本人高齢2型糖尿病患者に対する経口セマグルチドは,3 mgや7 mgでも個々の目標HbA1cを達成することが可能である.

患者心理・行動科学
  • 稲垣 聡, 松田 友和, 阿部 梢, 加藤 憲司
    2023 年 66 巻 9 号 p. 675-685
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル 認証あり

    2型糖尿病をもつ人の食事療法および運動療法の実態とそれに関連する特性や心理的特徴を明らかにするために,調査会社に登録する人を対象にインターネットを用いた質問紙調査を実施した.510名が調査に参加し,食事療法の平均実施頻度は週3.4日で,運動療法の平均実施頻度は週2.2日であった.食事療法も運動療法も実施の最頻値は0日であった.二項ロジスティック回帰分析の結果,食事療法の実施は,飲酒習慣がないこと,年齢が若いこと,高い自己効力感,高い自律的動機と関連していた.運動療法の実施は,BMIが低いこと,教育入院経験があること,合併症があること,自己注射が無いこと,高い自律的動機と関連した.自律的動機は,食事療法・運動療法のいずれとも関連する唯一の因子であった.本研究により,運動療法や食事療法の関連する特性や心理的特徴が明らかになり,特に自律的動機を高める療養支援の重要性が示された.

症例報告
  • 山守 育雄
    2023 年 66 巻 9 号 p. 686-690
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル 認証あり

    16歳時に1型糖尿病を急性発症.速効型+NPHインスリンでHbA1c 5-6 %で推移.33歳時に低血糖昏睡で入院.BMI 16.7 kg/m2,FPG 94 mg/dL,HbA1c 5.5 %,GA 13.2 %,sCPR 0.33 ng/mL,UCPR 12.8 μg/日.抗GAD抗体陽性,抗IA-2抗体陽性.網膜症・腎症なし,神経障害軽度.インスリンリスプロ13単位/日,インスリンデグルデク隔日1単位で退院.35歳時デグルデクを3日毎に1単位に減量.36歳時インスリンアスパルトに変更.37歳時デグルデク休薬.アスパルト13単位/日のみで4カ月後の間歇スキャン式グルコース測定でTAR 3 %,TIR 94 %,TBR 3 %,8カ月後のHbA1c 6.1 %,GA 14.9 %.やせ型でインスリン感受性が良好なことに加え食事・運動習慣が基礎インスリンなしでも良好な血糖コントロールの要因と考えられた.

  • 横山 太陽, 岡内 幸義, 懸髙 知子, 久堀 元博, 塩出 俊亮, 伊藤 直彦, 岩橋 博見
    2023 年 66 巻 9 号 p. 691-696
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル 認証あり

    症例は47歳男性.半年前の体重が115 kgと高度肥満を呈していたが,過去の健診で耐糖能異常を指摘されたことはなかった.6ヶ月前から20 kgの体重減少を来し,2ヶ月前より口渇・多尿を自覚.入院3日前より左顔面および左上肢の不随意運動が出現し,近医受診した際に血糖595 mg/dL,HbA1c 15.0 %と高値を認めたため,同日当院に紹介され,入院となった.入院当日の頭部CTで右レンズ核に高吸収域,第14病日に撮像したMRI T1WIで同部位に高信号を認め,糖尿病性舞踏病(以下DCと略す)の診断に至った.血糖コントロールおよびハロペリドールの内服により症状は改善,第419病日のT1WIで高信号域の消失を認めた.DCは血管障害との関係が指摘され,高齢で多く発症するとされるが,高度肥満を併存する血糖コントロール不良の糖尿病例で舞踏運動を呈した時には若年でもDCの可能性を考慮する必要がある.

  • 牟田 大毅, 岩瀬 正典, 井手 均, 青谷 領一郎, 平田 詩乃, 髙木 可南子, 酒匂 哲平, 由比 智裕, 宇都宮 英綱, 大隈 俊明 ...
    2023 年 66 巻 9 号 p. 697-704
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル 認証あり

    症例は56歳の男性で頭痛,嘔吐,意識障害のため救急搬送された.血圧192/100 mmHg,血糖233 mg/dL,HbA1c 10.8 %,蛋白尿12.0 g/gCr,血清アルブミン2.1 g/dL,eGFR 41 mL/min/1.73 m2,右下1/4盲を認めた.頭部MRIのFLAIR,T2強調画像で両側側脳室周囲白質に慢性虚血性変化が認められたが,その他には異常信号域は認められなかった.arterial spin labeling(ASL)では左側頭葉から後頭葉にかけて過潅流状態であった.Posterior Reversible Encephalopathy Syndrome(PRES)と診断し,降圧治療とインスリン治療を施行した.経過中,無症候性の微小脳梗塞を発症したが,過灌流は改善し,右下1/4盲は改善した.ASLはPRESの診断に有用である.

委員会報告
  • 後藤 温, 大橋 健, 野田 光彦, 能登 洋, 植木 浩二郎, 井上 真奈美, 西村 理明, 高橋 信, 井岡 達也, 大島 正伸, 藤林 ...
    2023 年 66 巻 9 号 p. 705-714
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル 認証あり

    日本糖尿病学会と日本癌学会は専門家による合同委員会を設立し,2013年に発表された「糖尿病と癌に関する委員会報告」では,医師・医療者への提言および国民一般(患者を含む)への提言も取りまとめられた.2016年には「糖尿病と癌に関する委員会報告 第2報」において,糖尿病患者における血糖管理とがん罹患リスクについての検討がまとめられた.第3報となる本委員会報告では,日本癌治療学会,日本臨床腫瘍学会との拡大委員会を設置し,がん主治医として診療にあたる医師と糖尿病専門医として血糖コントロールを担当する医師に対して実施したアンケート調査「がん治療中の糖尿病管理に関する医師の意識調査」の結果を報告する.本調査により,がん主治医と糖尿病専門医との間に血糖コントロール目標,血糖コントロールの重要性,化学療法中の血糖コントロールに際するガイドラインの必要性について,認識が共通していることが明らかとなった.

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