糖尿病
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66 巻, 12 号
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コンセンサスステートメント
  • 1型糖尿病における新病態の探索的検討委員会, 島田 朗, 川﨑 英二, 阿比留 教生, 粟田 卓也, 及川 洋一, 大澤 春彦, 梶尾 裕, ...
    2023 年 66 巻 12 号 p. 807-814
    発行日: 2023/12/30
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

    改訂された緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準(2023)で,緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)と診断された症例はインスリン治療を行う.緩徐進行1型糖尿病疑い例は,インスリン非依存状態にあることから,より柔軟な治療選択が可能であるが,SU薬の使用は避ける.インスリン治療は内因性インスリン分泌能が保持されるとのエビデンスがあるが,必ずしもすべての症例にインスリンを早期から使用するべきというエビデンスはない.DPP-4阻害薬,BG薬については,治療選択肢となり得る.その他の血糖降下薬については,今後の検討課題である.いずれの薬剤を選択した場合でも,経時的に膵β細胞機能を評価し,慎重な経過観察を継続することが望まれる.内因性インスリン分泌の低下が疑われる場合には,速やかにインスリン治療を導入するなどの対応によって,インスリン依存状態への進行抑制に資する治療への変更が望まれる.

原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 伊藤 みか, 四方 雅隆, 古賀 正史
    2023 年 66 巻 12 号 p. 815-819
    発行日: 2023/12/30
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

    我々はHPLC法で測定したHbA1cの偽高値を契機にδ鎖異常ヘモグロビンのHb A2-Niigataの複数例を報告した.今回,Hb A2-Niigata 5例のHbA1cおよびLA1c+をHPLC法で測定し,対照の非糖尿病例,糖尿病例の各50例と比較した.Hb A2-NiigataのHbA1cは非糖尿病例に比し有意に高値であったが,糖尿病例とは有意差を認めなかった.一方,彼らのLA1c+は非糖尿病例と有意差を認めず,糖尿病例に比し有意に低値を示した.彼らのHbA1c/LA1c+比は非糖尿病例および糖尿病例に比し有意に高値を示した.HbA1c/LA1c+比のカットオフ値を3にすると,高感度,高特異度でHb A2-Niigataの診断が可能であった.HbA1cの偽高値が疑われる例に対して,HbA1c/LA1c+比はHb A2-Niigataの一次のスクリーニング検査として有用である.

  • 山田 佳彦, 岡元 燈紀子, 江藤 瑠麻, 横山 太一, 穴井 元暢
    2023 年 66 巻 12 号 p. 820-827
    発行日: 2023/12/30
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

    2型糖尿病患者の心血管疾患リスク因子に対してSGLT2阻害薬の薬剤間差を直接比較した前向き試験はこれまで実施されていない.今回,2型糖尿病患者にトホグリフロジンとエンパグリフロジンをそれぞれ12週間投与する前向きランダム化クロスオーバー試験を実施した.主要評価項目は試験薬投与後の血中NT-proBNPの薬剤間差とした.副次評価項目は試験薬投与後の心血管疾患リスク因子(血糖関連指標,体重,血圧等),腎機能検査値等の薬剤間差,及び副作用とした.NT-proBNPの変化は薬剤間の差は認めなかった.ほとんどの臨床検査項目に薬剤間差は認めなかったが,トホグリフロジンはエンパグリフロジンに比しeGFRの低下は有意に軽度だった.また試験期間中に重篤な副作用の発生はなかった.2型糖尿病患者の各種心血管リスク因子に対してトホグリフロジンとエンパグリフロジンの直接前向き比較で同等の効果が示された.

病態・代謝異常・合併症
  • 湯川 千鶴子, 伊藤 裕之, 井上 英行, 高木 昭房, 三浦 小百合, 西尾 謙一, 五十嵐 萌香, 井筒 琢磨, 松本 涼子, 安徳 進 ...
    2023 年 66 巻 12 号 p. 828-838
    発行日: 2023/12/30
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

    高尿酸血症には尿酸の産生亢進のみならず排泄低下も関与する.尿中尿酸排泄の評価方法として尿中尿酸/クレアチニン比(UUA/UCr)を日本人2型糖尿病患者470例で測定し,尿中尿酸排泄に関係する因子を検討した.UUA/UCrは平均0.46±0.18で,UUA/UCrの低値と関係する患者背景は男性,eGFR低下,尿酸生成抑制薬使用であった.UUA/UCrは正尿酸血症群(0.51±0.17)に比して,高尿酸血症かつ尿酸生成抑制薬の未使用群(0.44±0.16),尿酸生成抑制薬の使用群(0.28±0.13)で有意に低下しており,UUA/UCrが0.5未満の例は正尿酸血症群(51 %)に比して,高尿酸血症かつ尿酸生成抑制薬の未使用群(69 %),尿酸生成抑制薬の使用群(94 %)で増加していた.男性や尿酸生成抑制薬使用下の2型糖尿病患者では,尿酸降下薬処方に際して一考が必要である.

患者心理・行動科学
  • 影浦 直子, 中村 小百合, 堀田 由季佳, 織田 千賀子, 近藤 彰, 鈴木 敦詞, 須釜 淳子, 竹原 君江
    2023 年 66 巻 12 号 p. 839-849
    発行日: 2023/12/30
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

    大学病院に入院した成人糖尿病患者のヘルスリテラシーに関連する因子を明らかにするため,無記名自記式調査票を用いた横断的観察研究を行った.調査項目には,ヘルスリテラシー尺度,コミュニケーション・スキル尺度,日本語版ソーシャル・サポート尺度を用いた.解析対象は54例であり,ヘルスリテラシーの3つの下位尺度ごとに重回帰分析を行った.その結果,機能的ヘルスリテラシーと有意な関連を示した因子は,家族や大切な人からのサポートであった.伝達的ヘルスリテラシーと有意な関連を示した因子は,インターネット役立ち度とコミュニケーション能力,大切な人からのサポートであった.批判的ヘルスリテラシーと有意な関連を示した因子は,糖尿病教室受講歴とインターネット役立ち度,コミュニケーション能力であった.介入可能な因子に働きかけることによりヘルスリテラシーが向上する可能性がある.

症例報告
  • 押領司 虞子, 松田 やよい, 阿部 隼希, 日野 有美香, 長尾 敏彦, 山下 彩織, 中尾 裕, 坂本 竜一, 大中 佳三, 小川 佳宏
    2023 年 66 巻 12 号 p. 850-855
    発行日: 2023/12/30
    公開日: 2023/12/30
    ジャーナル 認証あり

    67歳男性.糖尿病歴なし.腎癌肺転移に対しニボルマブとイピリムマブ併用療法開始し14日後に免疫関連副作用(immune-related Adverse Events:irAE)による破壊性甲状腺炎を発症し,65日後に糖尿病性ケトアシドーシスを発症し,救急搬送後の随時血糖1234 mg/dL,HbA1c 9.1 %,グルカゴン負荷後の血中CPR測定感度未満,膵島関連自己抗体は陰性であり,またヒト白血球抗原(HLA)検査でDRB1*04:05-DQB1*04:01のヘテロ接合を認めた.本症例を含めたirAEでの1型糖尿病発症自験例4例を比較したところ,全症例において日本人における1型糖尿病発症との関連が示されているDRB1*0405もしくはDRB1*0901のHLAハプロタイプを示し,抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体併用療法では抗PD-1抗体単独治療と比較し発症までの期間は明らかに短縮していた.

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