糖尿病外来を併設している当院心療内科を受診した患者に “くいしんぼう”, “いやしんぼう”, “のんべい” という食行動に関連した擬人格の有無をアンケー卜調査用紙を用いて, 平成11年3月に, 任意に行ったところ, 149名の糖尿病患者 (男性96名, 女性53名) が回答した. 14名の摂食障害 (全員女性) を除いた145名の恐慌性障害, 不安神経症, うつ病, 身体表現性障害, 機能性甲状腺疾患など, 非糖尿病患者 (男性44名, 女性101名) を対照とした.“くいしんぼう”, “いやしんぼう”, “のんい” は糖尿病男性患者でそれぞれ36.4%, 25.0%, 39, 6%, 糖尿病女性患者で50.9%, 50.9%, 5.7%, 対照男性患者で18.2%, 9.1%, 18.2%, 対照女性患者で31.7%, 22.8%, 12.9%であった.“くいしんぼう” と “いやしんぼう” のどちらかを有すると回答した患者は, 糖尿病男性患者48.9%, 糖尿病女性患者83.0%, 対照男性患者25.0%, 対照女性患者42.6%であった. これらの擬人格は「好きな食べ物や飲み物が目の前にある時に出現しやすい」と回答したものが糖尿病男性患者45.7%, 糖尿病女性患者84.6%, 対照男性患者64.7%, 対照女性患者59.2%にみられた.
これらの擬人格のうち, “くいしんぼう” を持つ糖尿病患者はそうでない患者に比して, HbA
1cやBMIが有意に高値であることが判明した. また, 対照患者においても, “くいしんぼう” を有する患者はそうでない患者に比してBMIが有意に高値であったことから, 過去あるいは現在において悪しき食習慣を患者は “くいしんぼう” と陰喩している可能性がある.
今回の調査から, 実に多くの糖尿病患者が食行動と関連する擬人格を有していることが判明した. この擬人格を治療対象とした “くいしんぼう” というメタファーを用いた治療は理にかなった方法と考えられる.
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