わが国の糖尿病および非アルコール性脂肪性肝疾患(以下NAFLDと略す)の食事療法はカロリー制限食が中心であるが,近年,糖質制限食の有効性も報告されている.本研究では,2型糖尿病に伴うNAFLD患者に対する糖質制限食の効果を検討した.糖質制限食群は糖質を1日70~130 g,カロリー制限食群は1日総エネルギー摂取量を標準体重×25 kcal/kgとして,全患者28名を無作為に割り付けて3ヶ月間の比較試験をした.結果,介入後3ヶ月では,各群とも,腹部単純CT検査による肝脾CT値比の有意な上昇,内臓脂肪面積,AST,ALT,体重およびHbA1cの有意な低下が認められた(P<0.05).また,2群間では,内臓脂肪面積が糖質制限食群で有意に低下していたが,その他の項目には有意差は認められなかった.2型糖尿病に伴うNAFLDの糖質制限食はカロリー制限食と同等の改善効果があることが示された.
76歳男性.54歳時に糖尿病と診断され内服加療を受けていた.2013年にインスリングルリジンが,2015年2月に二相性インスリンアスパルトが開始された.2016年4月より早朝低血糖と日中の著明な高血糖の繰り返しが出現した.空腹時血糖値39 mg/dL,IRIは1546.4 μU/mL,インスリン抗体は高濃度で検出されScatchard plotで低親和性,高結合能の性状を示した.著しい血糖変動はこのインスリン抗体によるものと診断し,インスリンを中止しデュラグルチドの投与を開始した.早朝低血糖はすみやかに消失し,その後徐々にIRI値とインスリン抗体の低下が認められた.日中の高血糖改善のためα-GIやSU薬を投与したが効果不十分でトホグリフロジン投与が有効であった.インスリン抗体出現による著明な血糖変動に対し,GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の併用が有効であった症例を経験した.
症例は75歳男性.3ヶ月でHbA1cが急上昇(5.9→8.8 %)したため紹介となった.空腹時低血糖,食後高血糖,高インスリン血症,抗インスリン受容体抗体陽性を認めインスリン受容体異常症B型と診断した.Flash Glucose Monitoring(FGM)で外来血糖変動を評価した結果,内服なしでは血糖値(平均±標準偏差)188±91 mg/dL,低血糖割合(血糖値70 mg/dL未満)16 %に対しダパグリフロジン,エンパグリフロジン,ミグリトール内服下ではそれぞれ146±82,140±70,142±61 mg/dLといずれも改善し特に食後血糖が低下した.低血糖割合は22,24,16 %と前者2剤は増加したがミグリトールでは増加しなかった.食後高血糖を伴う本疾患においてはミグリトールは低血糖を増加させず食後血糖を低下させることから3剤の中では最も有用であると考えられる.
症例は26歳男性.2002年に自閉症スペクトラムのため内服開始するも改善せず,2010年より清涼飲料水を毎日6-12 L摂取していた.精神疾患治療薬の調整で飲水量は減少傾向だったが,2016年7月,体重減少から高血糖が判明し当院紹介となった.随時血糖377 mg/dL,HbA1c 16.9 %,尿中ケトン体陽性であり清涼飲料水ケトーシスの診断で入院,インスリン療法を開始した.退院後は清涼飲料水の多飲なく血糖値は正常化し,糖尿病薬は早期に離脱できたものの1日3 L程度の多飲は遷延した.後に中枢性尿崩症の合併が判明し,デスモプレシンにより飲水量の更なる減少を認めた.長期の多飲により抗利尿ホルモン分泌低下を来す病態が報告されている.特に清涼飲料水を多飲している症例において,多飲の適切な診断・治療は糖尿病の発症予防および改善に寄与する可能性があり重要と考えられた.