糖尿病
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66 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
受賞講演
原著
診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 朝長 修, 朝長 弘平, 林田 香奈子, 森 美幸, 牛久保 江理子, 上松 祐子, 永田 真弓, 水沼 亜樹, 沼田 祐美, 窪田 真美, ...
    2023 年 66 巻 7 号 p. 513-520
    発行日: 2023/07/30
    公開日: 2023/07/30
    ジャーナル 認証あり

    インスリン投与中の1型糖尿病(T1DM),2型糖尿病(T2DM)の治療にて健康情報記録(PHR)アプリ「シンクヘルス」利用患者のHbA1c低下効果を後方視的に検討した.シンクヘルスを利用した49例(T1DM/T2DM:35例/14例)を対象とし,利用開始後4カ月間のHbA1c,体重,Body Mass Index(BMI),インスリン投与量の変化を評価した.また,利用頻度別(15回/月以上:高頻度利用群,15回/月未満:低頻度利用群)に評価した.全体では,HbA1cは開始時7.65±0.83 %から4カ月後7.50±0.87 %へ有意に低下した.高頻度利用群では最大0.28 %有意に低下し,利用開始後4カ月間を通して有意な低下を維持したが,インスリン投与量や体重,BMIなどは変化を認めなかった.糖尿病の病型に依らずインスリン投与中の患者でPHRの利用によりHbA1cが改善することが示唆された.

症例報告
  • 張 舜愷, 渡辺 康子, 山本 詞子, 遠坂 直希, 栗原 宏, 鈴木 祥司
    2023 年 66 巻 7 号 p. 521-531
    発行日: 2023/07/30
    公開日: 2023/07/30
    ジャーナル 認証あり

    58歳女性.2週間前からの食思不振,その後の嘔吐,ふらつきで救急搬送された.血糖値281 mg/dLと著明高値でなかったが,HbA1c 10.4 %,尿ケトン3+,代謝性アシドーシスを認め正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(euDKA)と診断した.FT4 6.72 ng/dL,FT3 14.01 pg/mLの甲状腺中毒症を認め,消化器症状と頻脈から甲状腺クリーゼの疑い例とした.インスリン投与と輸液でアシドーシスは改善した.甲状腺中毒症に対しβブロッカー,ヨウ化カリウム丸を投与し,バセドウ病と診断後チアマゾールを開始した.空腹時血中Cペプチドは3.2 ng/mL,抗GAD抗体,抗IA-2抗体共に陰性で2型糖尿病と診断した.本症例はeuDKAと甲状腺クリーゼ疑いが合併した症例であり1型でなく2型糖尿病であり,昨今問題となっているSGLT2阻害薬の内服もなく稀で示唆に富む症例と考えられた.

  • 田中 奈那, 原 久美子, 小牧 佳世, 佐久間 博也
    2023 年 66 巻 7 号 p. 532-537
    発行日: 2023/07/30
    公開日: 2023/07/30
    ジャーナル 認証あり

    症例は29歳男性.25歳時に2型糖尿病,脂質異常症,肥満症と診断され,治療を開始したが,仕事の忙しさを理由に自己中断を繰り返していた.外食中心の食生活を送り,清涼飲料水を約1.5 L/日摂取していた.受診4日前からの倦怠感,前日からの嘔吐を主訴に近医を受診し,意識障害,高血糖を指摘され,当院へ救急搬送された.随時血糖値1243 mg/dL,尿中ケトン体陽性,β-ヒドロキシ酪酸13144 μmol/L,代謝性アシドーシスを認め,糖尿病ケトアシドーシスの診断で当科へ入院となった.急性膵炎と特発性食道破裂を合併しており,大量輸液,インスリン持続静注に加え,抗菌薬,プロトンポンプ阻害薬の投与などの保存的治療を行い,良好な経過が得られた.糖尿病ケトアシドーシスに急性膵炎と特発性食道破裂を合併した稀な1例を経験したので報告する.

  • 大江 宣春, 奥下 由紀子, 古賀 正史
    2023 年 66 巻 7 号 p. 538-544
    発行日: 2023/07/30
    公開日: 2023/07/30
    ジャーナル 認証あり

    我々はHbA1cが偽高値を示した症例を経験し,新規のヘモグロビン修飾機序がその原因と考えられた.症例は72歳男性.高速液体クロマトグラフィ法(HA-8180,アークレイ社)で測定したHbA1cが7.9 %と高値のため,当科を受診した.空腹時血糖は基準値であったが,75 g経口ブドウ糖負荷試験で糖尿病型を示した.生活習慣改善の指導および抗糖尿病薬の投与を行うもHbA1cは殆ど低下しなかった.経過中に受けた健康診断でHbA1c(酵素法)が5.2 %であったため,抗糖尿病薬を中止し,精査を行った.酵素法,免疫法およびアフィニティ法で測定したHbA1c,グリコアルブミンおよび1,5-アンヒドログルシトールは全て基準値であった.全てのグロビン遺伝子に変異を認めなかったため異常ヘモグロビン症は否定された.本例のHPLC法で測定したHbA1cの高値は新規のヘモグロビン修飾機序によるものと考えられた.

  • 田中 芳子, 福山 貴大, 日髙 竜太郎, 辰元 為仁, 内田 あいら, 相良 陽子, 玉井 秀一, 當時久保 正之, 明比 祐子, 廣松 ...
    2023 年 66 巻 7 号 p. 545-551
    発行日: 2023/07/30
    公開日: 2023/07/30
    ジャーナル 認証あり

    症例1は56歳,女性.2年前に糖尿病と診断されHbA1c 7 %前後であった.意識障害にて救急搬送された際,BG 1,407 mg/dL,HbA1c 17.1 %,尿ケトン陽性,血液ガスpH 7.15,S-Amy 2,506 U/LよりDKAおよび急性膵炎と診断.血清CPR<0.03 ng/mLであったが,膵島関連自己抗体陰性でインスリン治療後に食後CPR 3.49 ng/mLへ回復したため急性膵炎に起因するDKAと診断.症例2は24歳,女性.1週間前より心窩部痛あり近医を受診.S-Amy 729 U/Lと膵腫大より急性膵炎と診断され3日後に当院へ紹介.前医のBG 166 mg/dLであったが,来院時682 mg/dL,尿ケトン陽性,血液ガスpH 7.24にてDKAと診断,HbA1c 5.8 %,CPR< 0.03 ng/mLで膵島関連自己抗体陰性でありインスリン治療後もCPRは回復せず劇症1型糖尿病と診断.急性膵炎を合併したDKA症例では経時的に内因性インスリン分泌能を評価することがDKAの成因を鑑別するうえで重要である.

地方会記録
委員会報告
  • 島田 朗, 川﨑 英二, 阿比留 教生, 粟田 卓也, 及川 洋一, 大澤 春彦, 梶尾 裕, 小澤 純二, 高橋 和眞, 中條 大輔, 能 ...
    2023 年 66 巻 7 号 p. 587-591
    発行日: 2023/07/30
    公開日: 2023/07/30
    ジャーナル 認証あり

    日本糖尿病学会「1型糖尿病における新病態の探索的検討委員会」において,緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準の改訂を行った.必須項目は,1)経過のどこかの時点で膵島関連自己抗体が陽性であること,2)原則として,糖尿病の診断時,ケトーシスもしくはケトアシドーシスはなく,ただちには高血糖是正のためインスリン療法が必要とならないこと,3)経過とともにインスリン分泌能が緩徐に低下し,糖尿病の診断後3ヶ月を過ぎてからインスリン療法が必要になり,最終観察時点で内因性インスリン欠乏状態(空腹時血清Cペプチド<0.6 ng/mL)であること,の3項目で,これら全てを満たす症例を「緩徐進行1型糖尿病(definite)」と診断する.1)および2)のみを満たす場合は,インスリン非依存状態の糖尿病であり,「緩徐進行1型糖尿病(probable)」とした.

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