糖尿病
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41 巻, 12 号
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  • 伊藤 利之, 東 滋, 久田 欣一
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1063-1071
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者において, 123I-metaiodobenzylguanidine (123I-MIBG) 心筋スキャンで集積低下を認めることが報告され, 心臓の交感神経障害の可能性が示唆されている.そこで当病院に入院した糖尿病患者43名 (平均年齢58.9±16歳) に123I-MIBG心筋スキャンを施行し, その集積欠損の程度を3グループに分け, それぞれの群での糖尿病の臨床像, 合併症特に神経障害, 心臓合併症とを比較検討した.心筋スキャンは, 123I-MIBG集積異常のない正常群 (n=18) と, 遅延像で下壁欠損を生ずるMIBG異常I群 (異I, n=15), 早期より明らかな下壁欠損を認める異常II群 (異II, n=10) に分類した.MIBG欠損が著明な症例ほど糖尿病歴が長く, 正常群4.6年に対し異I群10.4年, 異II群15.0年と有意の差を認めた. HbA1cも正常群6.5%に対し, 異I群7.5%, 異II群7.6%と高値傾向であった.糖尿病合併症は異II群で著しく高頻度にみられ, 網膜症は異II群にのみ10人中6人に, 腎症は異II群に10人中7人に, 自律神経症状は異II群にのみ10人中3人に認められた.神経伝導速度は異II群で有意の低下を認め (正52.6m/秒vs.異II41.5m/秒), 心拍変動係数も異II群で有意に減少していた (正3.18%vs. 異II 1.71%).高血圧・心肥大は, いずれの群も20~30%と同程度に合併しており, 血圧, 心胸廓比は3群間で有意差を認めなかった.ホルター心電図上, 異II群において心房細動が2例認められたが, 心室性期外収縮はどの群でも数例にLown分類でI-II度程度を認めただけであった.MIBG洗い出し率 (WR) は異II群で有意の著しい亢進をみた (正10.4%vs. 異II 24.9%).以上, 今回の検討では123I-MIBG欠損が著しいほど合併症の進行している症例が多くみられ, 正常群・異1群に比し異II群で著しく高頻度であった. また異常群においても心肥大, 高血圧が有意に多いことはなく, 致死的な不整脈やQTc延長も認められず, 心合併症との関連は明らかではなかった.予後の判定に関してはさらなる検討を要する
  • 第1報アルブミンクレアチニン比のpoint of no returnは?
    山口 多慶子, 溝上 哲也, 鉄谷 多美子, 吉村 健清
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1073-1081
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    随時尿のアルブミンクレアチニン比 (A/C) を指標とし, 9年間 (1986~1995) 継続測定したNIDDMの107例を対象として, A/Cの可逆性の時期を推測し, また腎症の進展に高血糖および高血圧は経年的にどのように関与したかを検討した.初年時のA/C (mg/g.crea.) をA (<30), B (31~100), C (101~300) およびD (>301) の4群に分け9年後の推移をみた.A/Cの不変は60.0%でA, B群のみであった.B-Aへの改善は29.2%, C, D群からの改善はなかった.Dへ進行したのはA, B群から27.1%, C群からは92.9%であつた.血管合併症による死亡はDへ進行してからであった.終年時のA/Cから改善, 不変群と悪化群に分け血圧および血糖コントロールを経年的に比較した.悪化群において収縮期血圧は9年を通じ, 拡張期血圧は4年目から, 血清クレアチニンは7年目から, 高血圧の有症率は9年を通じ有意に高かった.空腹時および食後2時間血糖の平均値, 高血糖の有症率は悪化群において前半の4年間において有意に高かった.しかし後半の5年間は不変群と悪化群の間に有意差を認めず高血糖の有症率も差がなかった.腎症における可逆性の時点はA/Cが100mg/g.crea.であった.高血圧は9年間を通じて腎症の進展に, また高血糖は前半の4年間において, それぞれ関与が明らかであった.
  • 第2報アキレス腱反射消失例の検討
    水本 博章, 田宮 宗久, 井上 篤, 松田 彰, 松谷 久美子, 伊古田 明美, 紅粉 睦男, 小泉 茂樹, 真尾 泰生
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1083-1088
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    急激な血糖改善時, 高率に網膜症の悪化を認めるアキレス腱反射 (ATR) 消失例について血糖改善の方法を検討した.対象はNIDDM84例である. 1年後の網膜症で判定し, 無網膜症 (NDR) から単純性網膜症 (SDR) または前増殖性網膜症 (PPDR) への変化, またはSDRからPPDRへの変化を悪化とした. 血糖改善の指標としてHbAic改善率= (入院時-3カ月後) HbA1c/入院時HbA1c×100と空腹時血糖 (FBG) 改善率 (入院時~2週後) FBG/入院時FBG×100を用いた.年平均HbA1cは入院後3カ月毎の平均として検討した. 84例中27例 (32%) が悪化した.HbA1c改善率とFBG改善率は有意に相関 (r=0, 71p<0.0001) し, それぞれ30%以上の改善群で有意に悪化した。HbA1c改善率が30%以上で年平均HbA1cが8%以上の群で悪化率は13例中10例 (77%) と最も多く, HbA1c改善率が30%未満で年平均HbA1cが8%未満の群で悪化率は15例中1例 (7%) と最も少なかった。ATRが消失したNIDDM例では急激な血糖改善を避け, 年平均HbA1cは8%以下が目標と示唆された.
  • 香野 修介, 今村 洋一, 小路 眞護, 林 秀樹, 山田 研太郎, 野中 共平
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1089-1094
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    [目的] さまざまな血糖コントロールの糖尿病患者およびインスリノーマ患者に対し低血糖誘発試験を行い, インスリン拮抗ホルモン分泌動態や低血糖症状を観察し, 低血糖閾値を検討した.[成績] 1回/月以上の低血糖の既往がある群は, ない群より明らかに閾値は低下していた.また閾値上昇群 (健常者閾値平均+2SD以上) のHbA1cは閾値低下群 (平均-2SD) に比べ著明に高く, HbA1cとエピネフリン分泌閾値とは平行していた.インスリノーマ患者の低血糖閾値は著明に低下していたが術後上昇し, 逆に血糖コントロール不良者の閾値は上昇していたが約1カ月間血糖コントロールすると低下傾向となった.[結論] 低血糖閾値は持続的な高血糖により上昇し, 低血糖の既往によりそれは低下する.そして低下した低血糖閾値は低血糖を回避することで, 逆に上昇した低血糖閾値は血糖コントロールにより改善傾向へ向かうと思われる.
  • 北澤 光孝, 石井 隆, 西澤 誠, 山下 尚洋, 中野 茂, 木越 俊和, 津川 龍三, 石川 義磨, 内田 健三
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1095-1101
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    症例は, 52歳女性.46歳時にはじめて糖尿病, 高血圧症を指摘されたが自覚症状なく通院加療を自己中止し経過した.1997年1月に発熱および血尿を主訴に来院し, 精査加療のため入院した.体格は全身痩身.意識は清明.体温38.7℃.血圧98/64mmHg.脈拍98/分・整.検尿で糖・蛋白・潜血陽性.血糖562mg/dl.CRP55mg/dl.Cr2.6mg/dγ.腹部X線で骨盤腔内にbeaded necklace状のガス像を認めた.尿・血液からE.coliとKlebsiellaが検出された.SBT/CPZを投与したが17時間後敗血症性ショックにて死亡した.剖検ではガス貯留が膀胱粘膜・粘膜下組織に認められたが筋層には認められなかった.腎臓は腫大・変形し, 腎皮質で尿細管の基底膜外側にガス貯留が認められた。X線学的および病理組織学的に気腫性膀胱炎の合併が証明された稀な1例であり報告した
  • 著しい全身性アテローム性動脈硬化症
    鴨井 久司, 薄田 浩幸, 金子 博, 池沢 嘉弘, 高木 正人, 佐々木 英夫
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1103-1109
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    既報のCogan症候群にインスリン依存型糖尿病 (IDDM) を合併した症例の剖検成績を報告する. 症例は42歳の男性.27歳でIDDMを発症し, インスリン治療中の34歳時にCogan症候群が発見された.副腎皮質ホルモン投与にもかかわらず聴力と視力は完全に喪失した. 35歳時微量アルブミン尿が出現し, 40歳時に血中クレアチニンが上昇して, 41歳時ネフローゼ症候群を呈した. この間, インスリン治療と降圧剤の服用は断続的であり, 常に高血糖状態 (HbA1c: 8-10%) と高血圧, 高脂血症が持続した. 剖検では膵臓ラ島のβ細胞が減少していたが, 硝子化や炎症を認めなかった. 腎には高度の糖尿病性腎症と左腎の乳頭壊死を認めた. 全身動脈および大動脈には著しいアテローム性動脈硬化症を認め, 明らかな臓器特異性は認められなかった. 心臓には左室肥大と線維素性心膜炎が認められた. 免疫学的機序により発症する全身性血管炎であるCogan症候群を伴ったIDDMの病理所見の特徴が高度の全身性アテローム性動脈硬化症であったことは, 動脈硬化症の発症・進展にCogan症候群病態の関与ないしその基礎的免疫学機序が関与していることが示唆され, 興味深い.
  • 千原 和夫, 水野 石一, 多田 真輔, 船田 泰弘, 岡崎 路子, 井口 元三, 飯田 啓二, 田井 茂, 高橋 裕, 内山 敏行, 置村 ...
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1111-1116
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    症例は47歳, 女性. インスリン依存型糖尿病 (IDDM), 慢性甲状腺炎, 白斑, 爪真菌症を合併しており, 自己免疫疾患の検索目的にて入院となった. 入院時, 血糖コントロールは不良. 自己抗体は, 甲状腺関係以外は陰性, 膵島細胞抗体, 抗GAD抗体もともに陰性であったが, IDDM発症後8年と長期間が経過していたためと考えた. 慢性甲状腺炎, IDDMを合併しており多腺性自己免疫症候群IIIA型と考えた.この他, LHRH負荷にてLH, FSHの基礎値, 反応性ともに低下, LHRH連続負荷後に基礎値, 反応性ともに回復したことから視床下部性ゴナドトロピン分泌不全症と診断した. その後, 血糖コントロールを良好に保ち, 約2年後に再検したところLH, FSHの基礎値の上昇, LHRHに対する反応性の回復を認め, 正常閉経後婦人のパターンをとり, 原因として血糖コントロール不良が考えられた. IDDMにはしばしば無月経等の性腺機能低下が合併することがあり, この病態を考える上で貴重な症例であると思われた.
  • 林 啓子, 森田 展彰, 川井 紘一, 山下 亀次郎
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1117-1122
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    「わかっているけれど出来ない」という糖尿病患者の言動の背景にある心理構造を分析し, 効果的な指導方法を検討した. 糖尿病指導項目の中から15項目を選択し, おのおのに「A: 必要性を承知しているか (以下A)」, 「B: 嫌悪感が生じるか (以下B)」, 「C: 困難を感じるか (以下C)」, 「D: 実行できているか (以下D)」 という4側面の質問を設定した.各質問への回答は得点が高いほど肯定的回答が得られるように点数を配分した.糖尿病患者91名の回答結果から「A」は「B」のみと相関があった (p<0.01).「B」「C」「D」は互いに有意な相関があり (p<0.01), 3側面の関係が患者の実行に影響することが示唆された. またこれら3側面とHbA1cとは負の相関を示した (p<0.05). 項目別4側面質問の回答スコアの相関から, 15項目は, (1) 必要性を指導すべき項目 (例: 禁煙), (2) 感情面への配慮が必要な項目 (例: 間食), (3) 困難性の明確化が必要な項目 (例: 食事療法), (4) 共感的態度が必要な項目 (例: 睡眠) に分類できた. 以上の結果より, 一方的に知識を与えること以上に患者の感情や生活状況, 病態を考慮した個別指導の有用性が示唆された.
  • 藤沼 宏彰, 星野 武彦, 渡辺 裕哉, 熱海 真希子, 山崎 俊朗, 清野 弘明, 菊池 宏明, 阿部 隆三
    1998 年 41 巻 12 号 p. 1123-1128
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    当院に入院し運動指導を受けた糖尿病患者339例を対象に, 退院半年後の運動実施状況を調査した. アンケート調査の回収率は77.9%(うち有効回収率74.0%) であった.退院半年後における運動実施率は男性70.7%, 女性70.4%とともに70%を超えていた. 50歳以上の年代では運動実施率が高く, 若い年代ほど低い傾向にあった. 実施種目はウォーキングが中心で, 時間や頻度から運動療法として十分有効なものであると推察された. 実施者のほとんどが運動を楽しく行っており, 運動による事故や怪我の報告はなかった. 運動をしていなかった人の70%は運動不足を感じており, 運動が出来ない理由としては時間的な問題が最も多かった. 季節別では春期, 特に男性で実施率が低くかった. 冬期には室内自転車を利用するなど, 工夫して運動を実施している様子がうかがえた. この調査により, 比較的多くの患者が退院半年後の時点でも運動を実施していることが明らかとなった.
  • 1998 年 41 巻 12 号 p. 1129-1137
    発行日: 1998/12/30
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
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