糖尿病
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64 巻, 9 号
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原著
病態・代謝異常・合併症
  • 森田 あい, 鈴木 亮, 青山 倫久, 山内 敏正, 門脇 孝
    2021 年 64 巻 9 号 p. 479-486
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    2017年4月1日から同年8月31日までに東京大学医学部附属病院を受診した1型糖尿病225名を年齢で層別化し(65歳未満群,65-74歳群,75歳以上群),高齢化の実態と重症低血糖既往に関連する因子について検討を行った.高齢者の割合は全体の36.0 %を占めた.75歳以上群では他の年齢群と比較してHbA1cが有意に高値であった.重症低血糖あり群では重症低血糖なし群と比較して血清Cペプチド値が有意に低かった.高齢者群では定期外来受診時採血の血糖値低値と重症低血糖既往の関連が乏しかった.本結果から,1型糖尿病では内因性インスリン分泌能の枯渇が重症低血糖と関連すると考えられるが,高齢1型糖尿病では重症低血糖リスクが高い群の抽出が困難であった.1型糖尿病の高齢化に対する対応は急を要し,今後さらなる検討が必要である.

症例報告
  • 竹内 結, 川﨑 元樹, 佐藤 文紀, 櫻田 麻耶, 西田 賢司, 本多 泉, 山田 哲也, 辻野 元祥
    2021 年 64 巻 9 号 p. 487-492
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    39歳女性.妊娠29週の75 g経口ブドウ糖負荷試験が3点陽性となり,妊娠糖尿病と診断した.血糖自己測定で食前血糖90-100 mg/dL台,食後2時間血糖90-120 mg/dL台であり,妊娠33週にインスリンデテミルを導入し血糖値は安定した.妊娠37週4日頃より200-400 mg/dL台の急峻な血糖上昇を認め,倦怠感,口渇などを来し妊娠38週1日に当院を再診した.随時血糖値537 mg/dL,HbA1c 6.4 %,pH 7.084,HCO3 4.7 mmol/L,尿ケトン3+,Cペプチド≦0.03 ng/mLであり,劇症1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスと診断し同時に子宮内胎児死亡が確認された.インスリン持続点滴を開始し,第4病日より強化インスリン療法に移行し第14病日に退院した.妊娠糖尿病の経過中に劇症1型糖尿病を来した報告は我々の知る限り無く,貴重な症例と考え報告する.

  • 石井 康大, 小林 卓矢, 平間 紀行, 江口 英行
    2021 年 64 巻 9 号 p. 493-501
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は51歳男性,生来健康で健診の受診歴がなかった.半年前から口渇,多飲,多尿を自覚していた.突然の嘔吐,意識障害で救急搬送され,血糖979 mg/dL,HbA1c 11.5 %,pH 6.94,尿ケトン4+と糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の診断で入院した.炎症反応高値,胸部CT検査でhalo signを伴った多発肺結節を認め,β-グルカン高値,血清アスペルギルス抗原陽性より,侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)と診断した.DKAは輸液とインスリン持続点滴により改善したが,IPAは真菌薬の投与で改善がなく,ACTH 4.2 pg/mL,Cortisol 30.7 μg/dLの検査値から精査を行い,クッシング症候群と診断した.第24病日からメチラポンの治療を開始し,IPAも軽快した.高血糖を伴ったIPAに対し,クッシング症候群の診断と治療を行う事によって救命しえた貴重な1例であり,報告する.

報告
  • 瀧澤 裕樹, 小川 理, 西田 藍
    2021 年 64 巻 9 号 p. 502-505
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    令和元年房総半島台風後,千葉県内で最長26日間の停電が発生した.台風通過後,鴨川市では真夏日が3日連続した.この状況で冷蔵庫内に保管の未使用インスリン製剤に不適切な温度管理となったものが存在すると考えられた.今回,停電時の保管状況を明らかにするために無記名質問票調査を行った.質問項目は,停電の有無,停電の期間,停電時の未使用製剤保管状況,再冷蔵となった製剤の有効性,安全性は未確認であることを知っているか,とした.結果は回答数67.停電率71 %.停電期間平均3.2日(0.2-10日).保管状況は,そのまま冷蔵庫保管が79 %,保冷剤,クーラーボックスに移動して保管が11 %,冷蔵庫から出して放置が10 %であった.停電期間,気温,保管状況から,不適切な温度管理となった製剤が一定数存在したことが推定された.停電,気温を考慮した災害時のインスリン保管に関する啓発が必要である.

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