糖尿病
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34 巻, 9 号
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  • 朝山 光太郎, 宮尾 晃代, 雨宮 伸, 土橋 一重, 加藤 精彦
    1991 年 34 巻 9 号 p. 759-765
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    29例のIDDM患児の血清中脂質, アポリポ蛋白および高比重リポ蛋白亜分画コレステロール (HDL2-CとHDL3-C) を測定した.HDL2-CとHDL3-Cの定量は微量超遠心分画法によった.患児の総コレステロール (TC) とトリグリセリド (TG) 値は正常であり, HDL2-Cが選択的に上昇していてHDL3-Cには変動がなかった.アポA1は正常で, アポA2とアポBは低下していた.HDL2-C/アポA1と (TC-HDL-C)/アポBは上昇していた。ヘモグロビンA1cと相関した指標はTGとHDL3-Cであった.TGはTC, 動脈硬化指数およびアポBとも正相関, HDL2-C/アポA1とは負の相関をし, 脂質代謝の指標としての重要性が示された.TCとHDL3-Cの間にも有意な相関が認められた.患児における正脂血症, HDL2-C上昇, アポB低下は何れも動脈硬化促進とは逆の変動であったが, HDL2とHDL以外のリポ蛋白の双方に, 主要構造蛋白に対するコレステロールの相対的増加が示唆され, 重要な所見思われた.
  • 小林 正登, 堀田 饒, 小森 拓, 羽賀 達也, 洪 尚樹, 榊原 文彦, 坂本 信夫
    1991 年 34 巻 9 号 p. 767-774
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン非依存性糖尿病の治療にSU剤が汎用されている.SU剤の血糖降下作用の一つとして膵外作用が種々検討されているが, そのメカニズムは未だはっきりしていない.我々は新しく開発されたSU剤HOE490の肝代謝への影響を正常ラット単離肝細胞を用いて検討し以下の成績がえられた.1) HOE490はalanineをはじめとした糖前駆物質からのgluconeogenesisを抑制した.2) alanineとpalmitate共存下の肝ケトン体産生をHOE490は有意に濃度依存性に抑制した.3) 0.5mM HOE490の肝糖放出抑制効果は1.5mM tolbutamideと1mM buforminの効果に匹敵した.4) HOE490は [U-14C] alanine,[1-14C] glutamate,[1-14C] pyruvate,[1-14C] glucose,[1-14C] palmitateからの14CO2産生を有意に亢進させたが, tolbutamideではそのような効果が認められなかった.
    以上よりHOE490の肝糖放出抑制, 肝ケトン体産生抑制の作用のメカニズムの一つとしてTCA cycleの活性亢進が考えられた.
  • 別所 寛人, 松本 元作, 松本 英作, 角谷 佳成, 大星 隆司, 西村 進, 三家 登喜夫, 近藤 溪, 南條 輝志男
    1991 年 34 巻 9 号 p. 775-780
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    我々はIV型コラーゲンに対する測定系を新たに開発し, 糖尿病患者における測定意義について報告してきた.今回, 健常者群 (N) と糖尿病患者群 (DM) において血清IV型コラーゲン濃度 (IV-C) とラミニンの血清濃度 (La), さらに血清III型プロコラーゲンペプチド濃度 (P-III-P) を同一検体で測定し, 各測定値間の相関性ならびにN, DM群間での差異を検討した.その結果, IV-C, La, P-III-Pの3群間で, それぞれ有意な (p<0.01) の正の相関関係が認められた.また, IV-CとLaではNとDM間で有意差 (p<0.01) を認めたが, P-III-Pでは両群間で有意差を認めなかった.またDMでは持続性蛋白尿群において蛋白尿陰性群に比べ, IV-CとLaで有意な (p<0.05) 高値であったが, P-III-Pでは蛋白尿との関連は認められなかった.DMにおいてIV-C, Laの上昇を観察するとともに, 両値が蛋白尿の程度を反映することを認めた.以上より糖尿病患者において基底膜構成成分の血中濃度を測定する意義が示唆された.
  • 中村 高秋, 日高 秀樹, 繁田 幸男
    1991 年 34 巻 9 号 p. 781-788
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖化HDLをin vitroにて作成し, コレステロール逆転送活性を検討した.ヒト線維芽細胞, マウス腹腔内マクロファージ細胞を14CコレステロールラベルLDLまたはアセチルLDLで標識し, HDLと反応孵置して細胞内放射活性の変化を観察した.
    細胞内放射活性はヒト線維芽細胞で, HDL250μg/ml存在下に対照HDL, 糖化HDLで1.06±0.05, 1.28±0.10 (μgLDL/mg prot), マクロファージで0.70±0.01, 1.66±0.08 (μgアセチルLDL/mg prot) と糖化HDLで有意にコレステロール逆転送活性が低下していた.この減少はコレステロールエステルの減少によるものであった.酵素法にて測定した細胞内コレステロール含量もHDLとの孵置により減少し, 糖化変性時のグルコース濃度に依存して逆転送活性は低下した.
    これらは, 糖尿病患者の動脈硬化症にHDLの低下のみでなく, 過血糖によるHDLの糖化変性も役割を演じている可能性を示唆している.
  • 梗塞部位およびその大きさに関する検討
    大庭 建三, 大崎 良一郎, 春山 勝, 武内 寛, 中野 博司, 山下 直博, 妻鳥 昌平, 板垣 晃之, 早川 道夫, 大友 英一
    1991 年 34 巻 9 号 p. 789-794
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    老年期の軽度耐糖能異常例 (n=415) の脳梗塞の特徴を明らかにする目的で, 剖検例についてその発症部位および大きさを耐糖能正常型群 (n=67) と比較検討した.高血圧症を合併した軽度耐糖能異常群に基底核・内包の中等大梗塞巣の合併頻度が耐糖能正常型群に比し有意に高率であった (13.6% vs 3.0%, P<0.05).基底核, 白質および皮質の小梗塞およびその多発の頻度は正常型群と軽度耐糖能異常群との問に差はなかったが, 軽度耐糖能異常群において高血圧症群が非高血圧症群に比し有意に高率であり, これは耐糖能正常型群においても同様の傾向であった.小脳および橋病変はいずれも低頻度であり, 耐糖能別, 高血圧症合併の有無別に差はなかった.軽度耐糖能異常例の穿通枝領域の梗塞病変は高血圧症の合併により, より高度となることが示唆された.一方, いずれの部位においても小梗塞の発症と軽度耐糖能異常との関連は弱く, 高血圧症の影響が大であった.
  • 野村 誠, 鹿野 勉, 馬屋原 豊, 直 克則, 大橋 誠, 末吉 建治, 仲野 孝, 中島 泰子, 河盛 隆造, 鎌田 武信, 阿部 裕
    1991 年 34 巻 9 号 p. 795-802
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症の進展と共に貧血を併発した, 他の腎疾患の既往の無いNIDDM症例5例 [糖尿病罹病平均: 18±3年, 平均年齢: 61±6歳, 血清クレアチニン (s-Cr): 4.7±1.6mg/dl, 血中尿素窒素: 56±9mg/dl, 赤血球数 (RBC): 245±23×104/mm3, 血色素濃度 (Hb): 7.9±0.8g/dl] に対して, エリスロポエチン (EPO) を28週に亘り毎週3000から9000単位静脈内投与し, 貧血並びに腎機能等への影響を経時的に検討した.その結果, 1) RBCならびにHbはそれぞれ12週後325±17+×104/mm3, 10.1±0.6+g/dlと有意に増加し以後28週まで維持された.2) s-Crの逆数値の回帰直線の傾きはEPO投与後において有意に減少し (-0.005±0.016+ vs-0.038±0.009dl/mg・month), 腎機能低下速度の緩和を認めた.3) EPO投与後著明な一日尿蛋白排泄の低下を認めた (49.7±14.3+%, +: P<0.01).以上, 糖尿病性腎症による貧血症に対してもエリスロポエチンは有効であり, 腎機能に対して悪影響のない事を認めた.
  • 青木 雄次, 柳沢 康敏, 小口 寿夫, 古田 精市
    1991 年 34 巻 9 号 p. 803-808
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    尿蛋白陰性のインスリン非依存性糖尿病 (NIDDM) 患者27例において, 腎血行動態と血糖および尿中プロスタグランジン (PG) レベルとの関係を検討した. 非糖尿病対照者9例より求めたglomerular filtration rate (GFR) およびfiltration fraction (FF) のmean+2SDである142ml/min/1.48m2および0.35を超えたNIDDM患者は, GFR, FFともに5例であった.NIDDM患者全体では, 空腹時血糖値とGFRおよびFFとの間に有意の相関がみられた (ともにr=0.39, P<0.05).また, FFは尿中thromboxane B2 (TXB2) とr=-0.42 (P<0.05), 尿中6-keto-PGF1α/TXB2比とr=0.39 (P<0.05) と有意に相関した. 以上の成績より, NIDDM患者においても高血糖によりglomerular hyperfiltrationの状態を呈することがあり, このhyperfiltrationに腎由来のPGが部分的に関与している可能性が示唆された.この腎血行動態とPGとの関係は, IDDM患者で知られている関係とは異なっているようであった.
  • 伊藤 直人, 花房 俊昭, 沖田 考平, 大原 俊子, 伊藤 秀彦, 宮川 潤一郎, 稲田 正己, 今井 康陽, 桂 勇人, 山本 浩司, ...
    1991 年 34 巻 9 号 p. 809-815
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    症例は24歳, 男性.1990年4月23日全身倦怠を自覚, 口渇, 体重減少, 上腹部痛も出現したため近医受診, 高血糖 (468mg/dl) を指摘され, インスリン療法を開始された.当科入院時FPG148mg/dl, HbA1c 7.8%, 尿中CPR 9.9μg/日, ICA陰性.発症2カ月後の生検膵組織の免疫組織化学的分析により, 1) 膵島の萎縮, 2) B細胞の著減, 3) 膵島細胞と血管内皮細胞におけるMHCクラスI抗原発現の増強, 4) 一部膵島に散在性に数個のT, Bリンパ球, マクロファージの浸潤が認められた.本例では, モノクローナル抗体と抗膵ホルモン血清を用いた二重蛍光抗体法により, 通常の光顕では検出し得ないわずかな細胞浸潤の存在が証明された.膵島炎の頻度が少ない日本人IDDMの病態分析において, このような二重染色を用いた免疫組織化学的方法が有用と考えられる.
  • 石川 万佐子, 栗林 忠信, 石川 智信, 久富木 庸子, 西田 紀子, 伊藤 浩史, 河野 正
    1991 年 34 巻 9 号 p. 817-824
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    歳女性.腸閉塞・肝硬変で入院中インスリン注射の既往がないにもかかわらず, 自発性低血糖を認めた.血中総インスリン4100μU/ml, 遊離インスリン9.4μU/ml, 125Iインスリン結合率72%と高値であり, インスリン自己免疫症候群と診断した.発症後8カ月経っても抗体価は高値を持続し, 低血糖を起こすためにステロイド治療を開始した.その後抗体価は低下し, 低血糖症状は軽快したが, 薬剤を漸減すると再び低血糖を起こし, 充分に治癒しえなかった.発症後20カ月目に気管支肺炎・肝硬変の悪化にて死亡した.剖検では, 膵臓は軽度萎縮し, 尾部に1cmの仮性嚢胞が見られた.AZAN染色で軽度の慢性膵炎と思われる像も認めた.また抗インスリン抗体染色では, 膵島の大小不同もみられ, 一部, 膵管上皮と思われる細胞にも陽性であった.インスリン自己免疫症候群の病理所見は比較的稀であると考え, ここに報告した.
  • 木下 芳一, 西山 勝人, 石戸 聡, 北嶋 直人, 伊東 俊夫, 稲留 哲也, 猪尾 力, 千葉 勉
    1991 年 34 巻 9 号 p. 825-831
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性ケトアシドーシスによる昏睡に, myoglobinuriaによる急性腎不全とDICを合併したまれな例を経験したので報告する. 症例は糖尿病歴のない64歳の女性. 急激に発症した意識混濁のために緊急外来に搬送された. 意識は昏睡状態で血糖1395mg/dl, 動脈血ガス分析では, pH7.01, HCO-37.7mEq/lと代謝性アシドーシスを呈し, 尿中, 血中にケトン体の増加を認め糖尿病性ケトアシドーシスによる昏睡と診断した. また尿は褐色で, 血中, 尿中に大量のミオグロビンを認め, CPK, アルドラーゼも著しく高値でrhabdomyolysisを合併していると考えられた. 患者は入院後, 急性腎不全と, DICを併発したが, 血液透析, ヘパリン等の投与にて治癒, 退院せしめえた. 退院後も患者は, IDDMの状態がつづき, インスリン治療をおこなっている.
    糖尿病性ケトアシドーシスはmyoglobinuriaによる急性腎不全やDICをきたしやすく適切な早期診断治療が必要である.
  • 鏑木 孝之, 戸谷 理英子, 植田 太郎, 本渡 栄津子, 中西 克枝, 大和田 一博, 新城 孝道, 平田 幸正
    1991 年 34 巻 9 号 p. 833-839
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    高度の変形や特異な骨折をきたした糖尿病性Charcot footの3症例を経験した.症例1は立方骨の足底への異常突出により当該部の足底潰瘍を生じたCharcot footで, フットプリントでは潰瘍を中心に異常圧力分布が認められた.症例2, 3は糖尿病性腎不全により, それぞれ血液透析導入後および直前の患者であったが, 両例ともCharcot footに特異な踵骨骨折をきたした症例である.3例とも血糖コントロールは長期にわたり不良で, 著明な神経障害を有し, 足部の脱臼や骨折の存在にもかかわらず無痛性であった.フットプリント・テストによる圧力分布異常の早期発見と, 靴型装具による圧力分布の正常化および歩行パターンの矯正などの専門的なフットケアがCharcot footの対策として重要である.
  • 特にその画像診断について
    竹村 洋典, 則武 昌之, 土屋 一洋, 島内 武英, 久貝 信夫, 清水 健, 相田 真介, 下村 裕, 亀井 力, 永田 直一
    1991 年 34 巻 9 号 p. 841-846
    発行日: 1991/09/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリン非依存型糖尿病に化膿性脊椎炎を合併した症例を報告し, 化膿性脊椎炎の画像診断に関し文献的な考察を加えた.76歳の男性.1974年より糖尿病にて加療中であったが, 血糖コントロールは不良であった.1988年9月16日, 発熱と突然の腰痛が出現し, 化学療法にも関わらず発熱が持続するため同年10月7日当院に化膿性脊椎炎の疑いにて入院.99mTc骨シンチおよび67Gaシンチで第2・第3腰椎に異常集積を認め, Magnetic Resonance Imagingの所見から第2腰椎を中心とする化膿性脊椎炎と診断された.化学療法により症状は一時改善に向かったが, 10月下旬に肺炎を併発して死亡した.本邦における糖尿病に化膿性脊椎炎を合併した症例の報告は稀であるが, 今後増加する可能性があり, 予後が必ずしも良好とはいえないため, 腰痛を訴える糖尿病患者では各種画像診断の特徴を把握して早期に診断・治療を開始することが重要である
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