肝生検により組織診断を下しえた各種肝疾患患者について15項目の臨床所見 (年齢, 空腹時血糖, IRI, IRI/G, T. Bil, SGOT, SGPT A1.P., LAP, γ-GTP, ICG, ALb., γ-Glob, Chol. TG) を用いて主成分分析を行い, 肝障害, 耐糖能, 脂質代謝障害を表現すると解釈できる3主成分を得た.
個々の症例についてこれら3主成分のscoreを算出し, 二次元座標上での各症例の分布を検討すると慢性活動性肝炎例は肝障害が著明であるにもかかわらず耐糖能障害を示すことは少なく, 経口糖負荷時の血糖, IRIおよびIRI/Gと空腹時の血中遊離脂肪酸を検討することにより, この病態については高血糖, 高インスリン血症の共存を高血清遊離脂肪酸にもとづく末梢インスリン抵抗に対するインスリンの代償性過剰分泌反応と考察した.
肝硬変症については肝障害, 耐糖能障害がともに著明であり, 慢性非活動性肝炎, 脂肪肝においてはともに肝障害の程度は肝硬変, 慢性活動性肝炎に比し軽度であるが耐糖能障害の程度とよく相関するという成績であった.
脂肪肝における脂質代謝障害の程度と耐糖能障害の程度間には有意の相関は認められず, 脂肪肝の成因分析については血清脂質に加えて肥満, 飲酒量, 摂取総カロリーについての検討が必要と考えられた.
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