他動式体幹運動機器が糖代謝に及ぼす影響について,正常血糖クランプ法により検討を加えた.被験者は健常者9名(男性6名,女性3名)で,インスリン作用の指標となるグルコース注入率(Glucose Infusion Rate:GIR)は,安静時に比して本機器を使用した運動後(30分)では有意に増大し(p<0.05),運動終了30分後には,安静時程度のレベルとなった.本機器による運動は,腹部や大腿周囲,体幹深層筋群の筋収縮が誘発され,エネルギー消費が高まり,骨格筋への糖取り込みが亢進することを示唆している.
本研究の目的は,糖尿病患者におけるエンドオブライフケアの看護援助指針の開発を目指して文献検討を行い,ケアの方向性をあきらかにすることである.国内外33件の糖尿病患者のエンドオブライフケアに関する文献を精読し,「糖尿病患者におけるエンドオブライフケアの方向性」を示す内容を抽出した.元ラベルを作成し,質的統合法(KJ法)で分析をした.その結果,6つのシンボルマークが導き出され,【最期まで良好な身体を保つための支援:薬剤調整とフットケアによる急性合併症の回避】と【最期まで平和と尊厳を保つための支援:患者と家族のニーズに重点をおいた症状コントロールとエンパワメントアプローチ】が両輪となる理論構造が導き出された.糖尿病の専門家は,身体的な支援を最期まで継続し続けること,心理,社会,スピリチュアルな支援として,患者と家族の声に耳を傾け,ニーズを記録し,共有し,ケアをし続けることが強調された.
症例は36歳タイ人男性.健診でHbA1c高値および小球性低色素性貧血を指摘され来院した.空腹時血糖値87 mg/dL,HbA1c 10.9 %と乖離が認められ,異常Hb症などが疑われたため精査を開始した.非鉄欠乏性の小球性貧血でありサラセミアを疑いHb遺伝子の検査を行った結果,[--/αTα]型のαサラセミア症(HbH症)であることが判明した.不安定HbであるHbH(β4)の変性物がHbA1cと共溶出したために,偽高値となったものと解釈された.αT遺伝子はHb Constant Spring [HBA2:c.427T>C,つまりHbCS:α2 codon142 TAA(Stop)→CAA(Gln)]であった.Hb CSはHPLCではHbA分画(洗い出し分画)に溶出されたものと思われた.血糖値,HbA1c値乖離が見られた際には,Hb異常症の可能性などを考慮して診断を進めていく必要がある.