糖尿病
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32 巻, 4 号
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  • 雨森 正記, 安田 斎, 園部 正信, 寺田 雅彦, 山下 真木夫, 畑中 行雄, 吉川 隆一, 繁田 幸男
    1989 年 32 巻 4 号 p. 223-227
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者における6回深呼吸後の心拍数増加現象について検討した.対象は健常者45例, 糖尿病患者60例である.方法は1分間6回の深呼吸を行い, 深呼吸終了後の安静時呼吸中の心拍を含めた100回心拍の解析を行い, 深呼吸後の心拍増加の有無と副交感神経機能 (安静時及び深呼吸時の心拍変動) 及び交感神経機能 (起立による血圧変化) との関係を検討した.その結果, 常に深呼吸後に深呼吸中の最大心拍を越えた群 (以下増加群) と越えなかった群 (以下非増加群) とに分けると, 増加群は糖尿病患者のみ認められ, 十分に再現性も認められた.糖尿病患者では, 増加群は交感神経機能, 副交感神経機能いずれも非増加群よりも有意に良好であった.以上より深呼吸後の心拍数増加現象は, 糖尿病患者に特異的であり, 定量的解析や種々の自律神経機能検査と比較検討することにより新しい自律神経機能検査法となる可能性が示唆された.
  • 加瀬 知男
    1989 年 32 巻 4 号 p. 229-236
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    容積脈波計に2個の微分回路を接続して得られる加速度脈波 (accelerated plethysmography; APG) の糖尿病患者での変化を検討した.糖尿病患者群でも従来の報告同様年齢および血圧と波型変化との間に有意の相関を認めたが, 正常者群に比較し相関係数は共に低値に留まった.正常者との差を生じた要因について治療法別に加速度脈波係数値を検討すると食事療法14.0±6.7 (mean±SE), 経口剤治療群-16.0±2.9, インスリン治療群-24.2±2.5と正常値31.8±6.5に比して有意の低値を示した.そこでAPG計測済の糖尿病患者116名について血糖control状態, atherogenic index, 腎機能, 数種のhormone, 心機能, 神経伝導速度を検討した.検討した全項目とCo-APG値との単相関では神経伝達速度, 血圧, 年齢等と高い相関を示し, 重相関分析では神経伝導速度, 年齢との偏相関係数高値を認め加速度脈波が糖尿病では神経障害に伴って変化する可能性が示唆された.
  • ラット摘出膵灌流におけるInsulin放出および膵外分泌刺激の検討
    藤井 正俊, 大槻 眞, 中村 隆彦, 岡林 克典, 谷 聡, 藤澤 貴史, 小出 亮, 馬場 茂明
    1989 年 32 巻 4 号 p. 237-242
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    消化管機能賦活剤として臨床的に用いられているaclatonium napadisilate (AN) の, insulin放出および膵外分泌に及ぼす作用を, ラット摘出膵灌流標本を用いて検討した.ANは, 0.1μM以上の濃度でinsulin放出刺激作用を示し, 1.0μM以上では膵外分泌を刺激し, その膵内外分泌刺激作用はAN濃度依存性に増強した.さらにANのinsulin分泌刺激作用に及ぼすglucoseの影響を検討したところ, ANによるinsulin分泌はglucose濃度の上昇にしたがって増加した.
    ANのinsulin分泌および膵外分泌刺激作用はムスカリン受容体拮抗薬であるpirenzepineで抑制されたが, cholecystokinin受容体拮抗物質であるproglumideでは影響を受けなかった.これらの結果はANがムスカリン受容体を介してinsulin放出ならびに膵外分泌を刺激することを明らかにした.
  • 板橋 秀雄, 佐藤 晃, 竹村 喜弘
    1989 年 32 巻 4 号 p. 243-249
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者のMg平衡を知る目的で血清Mg, 尿中Mg排泄能, 尿中β2-microglobulin (β2MG), NAG, LAP, Mg負荷試験による貯留率を治療前後で測定した.その結果糖尿病群で血清Mg低下, 尿中Mg排泄量増加, 尿中β2MG, NAG, LAPの増加を認め治療後に血清Mg上昇, 尿中Mg排泄量低下, 尿中NAG, LAPの減少を認めた.FBGと腎Mg排泄能, NAGと腎Mg排泄能には有意の正相関を認めた.治療法別ではinsulin群で治療後の血清Mgの上昇を認めず, 腎Mg排泄能にも有意な変化はなかった.Mg負荷試験では治療前には貯留率に統計的な差はなかったが, insulin使用群では治療後貯留率の有意な上昇が認められたことよりinsulin治療により一時的にせよ血清Mgの低下が促進されることが示唆された.
  • 5年間の経過観察による
    鶴岡 明, 倉林 倫子, 三浦 順子, 蔵田 英明, 荒井 慶子, 塚原 暁, 阪本 要一, 池田 義雄
    1989 年 32 巻 4 号 p. 251-256
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血糖の自己測定 (以下SMBGと略す) を施行したインスリン非依存型糖尿病 (以下NIDDMと略す) の血糖コントロールと糖尿病性慢性合併症の進展を5年間にわたり調査し, SMBGの有用性を検討した.
    対象は, インスリンにて治療されていて, 5年以上SMBGを施行しているNIDDM (以下SMBG+と略す) 28例とSMBGを施行していないNIDDM (以下SMBG-と略す) 28例である.両群間で, 性・年齢・糖尿病罹病期間・インスリン治療期間および肥満度に有意の差を認めていない.
    HbA1は, SMBG+では開始前10.1%が5年後9.7%と不変であったが, SMBG-では9.3%が10.4%へと有意に悪化した (p<0.01).
    1日の体重当たりのインスリン使用量は, SMBG+では開始前0.45Uから5年後0.53Uへと, SMBG-でも0.40Uから0.46Uへと有意に増加した (p<0.05).インスリン処方は, SMBG+に混合頻回注射例がより多くみられた (p<0.01).慢性合併症については, SMBG+において網膜症の進展と尿蛋白陽性者の増加が防止される傾向にあった.
    以上より, SMBG+のNIDDMにおける血糖コントロールがSMBG-に比較してより良好に維持され, 合併症の防止がなされうる傾向にあることを示した.
  • 笹岡 利安
    1989 年 32 巻 4 号 p. 257-265
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近親婚の両親より出生した23歳, 27歳のインスリン受容体異常症の姉妹例の妹より得られた培養リンパ球, 線維芽細胞を用い, インスリン抵抗性の機序の解明を行った.インスリン結合は各々, 正常の20%, 27%と著明に減少し, 受容体親和性の低下がその原因であった.患者インスリン受容体のαサブユニットの分子量は, インスリン受容体前駆体に一致する210 KDの分子量を示し, 正常のαサブユニットは認めなかった.一方, IGF-I受容体は正常であった.本インスリン受容体自己燐酸化能の検索では, インスリン結合の低下に比例したATPの取り込みを認めた.線維芽細胞でのαアミノイソブチル酸の取り込みは, インスリン結合の低下を反映し, 容量反応曲線の右方偏位を示した.このインスリン受容体蛋白に0.025%のトリプシン処理を行うと, インスリン結合, 自己燐酸化, およびαアミノイソブチル酸の取り込みはすべて正常化した.本症例のインスリン抵抗性は, 本受容体蛋白が前駆体のままであり, その切断障害が原因であることが示された.
  • 末梢神経障害について
    森 豊, 横山 淳一, 岡 尚省, 野原 勉, 栗田 正, 桑田 隆志, 宝意 幸治, 蓮沼 武雄, 持尾 聰一郎, 西村 正彦, 池田 義 ...
    1989 年 32 巻 4 号 p. 267-272
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    自然発症糖尿病モデルWBN/Kobラツトにおける末梢神経障害について電気生理学的及び形態学的に観察し, 糖尿病性神経障害の疾患モデルとしての有用性を検討した.雄性WBN/Kobラットは生後9ヵ月齢の時点で既に対照Wistarラットに比して運動神経伝導速度 (MNCV) が有意に低下しており, 月齢がすすむとともに両者のMNCVの成績は開大し, 17ヵ月齢では両者の差は約10m/secに達した.形態学的には, 生後19ヵ月齢糖尿病発症ラット (n=6) の坐骨神経における単位面積当たりの有髄神経線維密度は7917±1617/mm2であり, 同齢対照Wistarラット (n=5) の14300±1587/mm2に比して著明に減少していた.また, 有髄神経線維の直径のヒストグラムでは糖尿病発症WBN/Kobラットは, 大径・小径線維を問わず径の小径化, ピークの平低化を示した.以上, 自然発症糖尿病モデルWBN/Kobラットは糖尿病性末梢神経障害の疾患モデルとして有用と思われた.
  • 長期Prospective Follow Up Study
    野村 誠, 星山 俊潤, 松島 洋之, 今野 英一, 石田 成伸, 河盛 隆造, 鎌田 武信
    1989 年 32 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症患者11例において, 腎症の進展阻止に及ぼす蛋白制限の効果を, 30カ月にわたりprospectivefollow up studyにて検討を行なった.
    腎炎の既往を有さない, ネフローゼ症候群を呈さない糖尿病性腎症症例を対象とし, 蛋白制限食 (標準体重当たり0.8-1.0g/kg, 上限40g/日) の効果を, 蛋白非制限食群と比較した.平均血清creatinine値は, 蛋白制限群 (n=5, 1.8±0.3mg/dl), 蛋白非制限群 (n=6, 2.0±0.2mg/dl) であった.また, 本研究開始時において, 両群間には種々の臨床成績, 年齢, 罹病期間, 血清K値, 血中尿素窒素 (BUN), 血清creatinine (Cr), 血圧, に差を認めなかった.
    30カ月の間, 両群間における, 血糖血圧のコントロールに差はなかったが, BUN, Cr値の著明な上昇が蛋白非制限群において, 認められた.一方, 蛋白制限群では, 有意な変動は認められなかった.
    以上の結果より糖尿病性腎症において, 早期よりの蛋白制限食は, 血糖, 血圧コントロールと同様に腎症進展防止に対して有効な治療法の一つであることが示唆された.
  • 腸間膜灌流実験による研究
    藤井 克己
    1989 年 32 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    第7週雌Sprangue-Dawleyラットをストレプトゾトシンにより糖尿病を誘発し腸間膜灌流実験を用いてeicosanoid (以下PGと略す) 産生能の変化について検討した. (1) 糖尿病群は, 非糖尿病群に比べ有意に6-kete-prostaglandin F (以下6KFと略す), thromboxane B2 (以下TxB2と略す) の亢進並びに6KF/TxB2比の低下を認めた. (2) 糖尿病群にインスリン治療を行なうと, PG産生が非治療群に比べて有意に低下した. (3) 非糖尿病群ラットの灌流液中に500mg/dlのブドウ糖を添加するとTxB2の有意の増加と6KF/TxB2の有意な低下を認めた. (4) しかし, 糖尿病群ラットの灌流液中にインスリンを添加してもPGの有意な変動は認めなかった.B.腸間膜血管組織の脂肪酸分析の結果, 糖尿病群は非糖尿病群に比べ16: 0, 16: 1, 18: 1n-6の減少ならびに18: 0, 18: 3n-6, 20: 3n-6, 22: 5n-3, 22: 6n-3の増加を認めた.以上, 糖尿病ラットではPG産生能の亢進が認められ, その原因としてインスリン不足, 高血糖の関与が示唆された.
  • 村上 透, 奥 淳治, 早川 富雄, 杉本 恒明
    1989 年 32 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    われわれは52歳男性インスリン非依存性糖尿病の右大腿部に生じたfocal spontaneous muscle infarctionと思われる1症例を経験した.糖尿病罹病歴10年, 治療は食事療法, 網膜症 (+), 神経障害 (+), 昭和62年2月中旬両下肢に虚血によると思われる冷感, 痛み出現, 下旬改善.3月10日右大腿部筋肉の痛み, 15日腫瘤 (10×13cm) に気付き来院安静にて3カ月後腫瘤の完全消失臨床経過とCT所見によりfocal spontaneous muscle infarctionとそれに続発した血腫と診断された.Focal spontaneous muscle infarctionの成因は不明であるが, 文献上は病理所見上病変部筋肉内のsmall arteryないしcapillaryの広い範囲の血管に硬化性変化を認めそれが重要な因子であると考えられている.本症例は生検は行われなかったが, CTで同様な病変部筋肉内血管の変化を認めた.
  • 服部 良之, 笠井 貴久男, 平岩 正基, 江本 達志, 曽 振武, 下田 新一
    1989 年 32 巻 4 号 p. 291-293
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Using cultured endothelial cells from porcine aorta, we studied the effects of glucose and insulin on the release of immunoreactive endothelin (ET), a novel vasoconstrictor. Glucose concentrations of 27.5 and 55 mM inhibited ET release by more than 50%. Insulin (0.2-20ug/ml) and insulin-like growth factor 1 (IGF-1)(1×10-10-1×10-8M) stimulated ET release in a dose dependent manner. Twenty μg/ml of insulin and 1×10-8M of IGF-1 increased the amount of released ET by approximately 40%. These results suggest that ET release from vascular endothelial cells may vary in the presence of diabetes.
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