血糖コントロール不良の2型糖尿病患者21名において,入院によりBasal-bolus treatment(BBT)で血糖コントロールを改善した後,Insulin Degludec/Insulin AspartとDulaglutideを併用し,切り替えを検討した.切り替え後,インスリン必要量は51 %に減少し,平均血糖値,M値も有意に低下し,食事負荷試験のC-peptide(2時間値)は有意に上昇した.切り替え12ヶ月後のHbA1cは11.0±1.8 %→7.0±1.5 %(p<0.01)へ有意に低下した.さらに外来でBBT施行中の患者13名において切り替えを行った.HbA1cは12ヶ月後も有意差を認めず(7.3±0.7 %→6.9±1.0 %,ns),体重は有意に低下した(69.2±15.0→67.3±13.0 kg,p<0.01).本併用療法によりBBTから簡便な,ほぼ1日1回注射に切り替える事が可能で,しかも血糖コントロールの改善を認めた.
本研究は,糖尿病に対する回避の程度とセルフケア行動の関連を確認し,心理的柔軟性のパターンによってセルフケア行動に違いがあるか検討を行うことを目的とした.124名の2型糖尿病患者に対し,糖尿病に対する心理的態度やセルフケア行動の程度について質問紙調査を実施した.その結果,糖尿病に対する回避の程度が高い者は糖尿病に関する心理的負担が高く,情動的摂食や外発的摂食の傾向も高かった.また,階層的クラスター分析を行った結果,行動先行型,非行動型,行動柔軟型の3つのクラスターが生成された.中でも人生の価値が明確でそれに応じた行動がとれるが,不安や思考への適切な対処が難しい「行動先行型」の患者は,日常での運動頻度が高い一方,心理的負担や情動的摂食の程度も高く,心理的問題の存在が示唆された.2型糖尿病患者には心理的状態に応じたセルフケア行動の特徴があり,それを考慮した糖尿病教育が必要であることが示唆された.
15歳女児.在胎週数37週0日,1,511 g,子宮内発育不全で出生.血族結婚なし.10歳時,学校検尿で尿糖陽性を初めて指摘された.初診時,身長-1.76 SD,肥満度-24 %,多毛,黒色表皮腫,歯列不整を認め,高血糖,HbA1c高値,高インスリン血症,抗GAD抗体・抗インスリン抗体陰性であった.インスリン受容体異常症を疑い,インスリン受容体遺伝子の解析を行ったところ,両親からのexon12内に複合ヘテロ接合体変異を認め,Rabson-Mendenhall症候群と診断した.食事,運動療法,ビグアナイド薬,α-グルコシダーゼ阻害薬で改善ないためIGF-I製剤を導入した.IGF-I治療効果を報告する.
46歳男性,BMI 39.4 kg/m2,罹病歴16年の2型糖尿病でインスリン及びエクメット配合錠HDⓇで加療されていた.以前メトホルミンで左下腿,背部に皮疹が出現したとの申告があったが,エクメット配合錠HDⓇでは皮疹は認めていなかった.喘息発作のため当院呼吸器内科入院となり,血糖管理目的に当科併診となった.エクメット配合錠からリラグルチド及びメトホルミン塩酸塩錠TEⓇに切り替えたところ,変更後10日目にメトホルミンでの薬疹出現部位と同じ場所に皮疹が出現し,固定薬疹の診断となった.エクメット配合錠HDⓇとメトホルミン塩酸塩錠TEⓇの相違点を考慮すると,薬剤の有効成分ではなく,添加物によるアレルギーが疑われた.該当添加物を含まないメトホルミン後発医薬品では薬疹を認めなかった.薬剤アレルギーの原因として添加物による可能性もあると認識することが重要と考えられた症例を経験したので報告する.
症例は58歳男性.木村氏病にてステロイド服用中.約1年前より肺腺癌術後再発のため化学療法を行っていた.X年11月に発熱,呼吸苦を主訴に受診し,ニューモシスチス肺炎の診断で入院となった.ステロイドの増量とST合剤内服を開始したが,発熱,皮疹が出現し,ST合剤を中止し,第10病日よりペンタミジン200 mg/日の点滴へ変更した.症状は軽快したが,第17病日早朝に低血糖を認めたため,ペンタミジンの副作用を疑い,薬剤を中止し,持続血糖モニターの装着を行った.深夜から早朝にかけて低血糖に対し,夜間のみ持続的にブドウ糖投与を行い,第27病日には低血糖は消失した.ペンタミジンは時に低血糖を来すことが知られているが,血糖管理に関する報告は少ない.今回我々はペンタミジンによる夜間低血糖の管理に持続血糖モニタリングが有用であった1例を経験したので報告する.