近年では,糖尿病医療の進歩に伴い合併症や寿命が改善しているにも関わらず,糖尿病を持つ人が受けるスティグマは変わっていないように思う.スティグマを払拭するためには,社会において糖尿病に関する正しい知識の普及活動が必要である.同時に患者がセルフスティグマを乗り越えることができるよう支援していくことも必要である.糖尿病を持つ人が受けるスティグマを,1型糖尿病46年の経験と医師としての経験から綴ってみた.糖尿病を持つ人が生きやすい社会を目指して今後も活動を続けていきたい.
近年,インスリンアナログ製剤が広く用いられているが,これら使用者の抗インスリン抗体を測定し,その有無と臨床像を検討した.初めてのインスリン治療に際し,同一製剤(ヒト:22名,アスパルト:31名,リスプロ:23名,グラルギン:23名)を1年間以上使用している2型糖尿病患者を対象に,抗インスリン抗体を放射免疫測定法(抗原:ヒトインスリン)で測定した.その結果,抗体陽性者はヒト:0 %,アスパルト:58.1 %,リスプロ:39.1 %,グラルギン:34.8 %であった.アナログ使用者で,体格指数,HbA1c,インスリン治療期間,併用糖尿病薬の有無で補正した検討で,1日インスリン投与量は,抗体陽性群で有意に(p=0.009)多かった.その増加分は陰性群の34.3 %であった.以上より,アナログ使用患者では,かなりの高頻度で抗インスリン抗体が認められ,治療に際しより多くのインスリンを必要としていた.
症例は77歳男性.糖尿病の既往はない.横行結腸癌術後再発に対してX-1年10月より免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブを開始後,X年1月全身倦怠感,食欲低下,口渇多飲を主訴に当院を受診.随時血糖341 mg/dL,HbA1c 7.6 %,尿中ケトン体(2+),pH 7.341と糖尿病ケトーシスを認め,緊急入院となった.空腹時血清Cペプチド0.22 ng/mL,抗GAD抗体陰性であり,劇症1型糖尿病と診断した.またACTH値正常を伴うコルチゾール低値を認め,負荷試験を経て続発性副腎皮質機能低下症と診断した.さらに甲状腺機能低下症も認めた.強化インスリン療法,ヒドロコルチゾン,レボチロキシン投与を順次開始した.本例はペムブロリズマブにより3系統の内分泌障害をほぼ同時発症した極めて稀な1例である.内分泌学的免疫関連有害事象を管理する上で示唆に富む症例と考え,文献的考察を交えて報告する.
糖尿病ケトアシドーシス(DKA)を発症し当院に搬入された2型糖尿病の69歳男性.血糖1153 mg/dLに対し血中Cペプチドは感度以下で膵島関連自己抗体は陰性であった.当初2型糖尿病治療中の劇症1型糖尿病発症を疑ったが,DKA改善後にインスリン分泌能が回復し,過去に糖尿病ケトーシスで入院しインスリン治療後1カ月で離脱した経緯からKetosis-prone type2 Diabetes(KPD)と判断した.発症時は清涼飲料水ケトーシスや1型糖尿病とKPDの区別が難しく,詳細な問診や病態安定後のインスリン分泌能の再評価が重要となる.また,DKAの再発や経年的にインスリン分泌能の低下例が報告されており,本疾患の臨床的特徴を理解し,体重管理や通院治療についての患者教育が肝要である.最近1型糖尿病の1亜型の可能性も示唆されており,疾患の啓蒙と今後の更なる症例蓄積,遺伝子解析など病態の解明が望まれる.