糖尿病
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59 巻, 12 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
疫学
  • 松田 彰, 川崎 竜平, 油井 綾子, セーボレー 純子, 田淵 麻衣, 込山 敦子, 筒井 侑希, 廣瀬 朗子, 吉川 由佳里, 桂 奈緒 ...
    2016 年 59 巻 12 号 p. 775-781
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2016/12/30
    ジャーナル フリー

    Non-communicable diseases(NCD)の発症は遺伝素因と環境の相互作用以外に胎生期から幼少期の栄養環境に影響される.当時の成育状況を調査票で調べ代謝指標との関連を検討した.対象は733名(男297女436名,68.9±11.1歳,BMI 22.6±3.4)で,幼少期の貧しい栄養環境,低出生時体重,小学校入学時の低身長に関連を認めた. HbA1cは出生時体重と線形的な負の関連を示し,HbA1cが5.8 %以上になるオッズ比は3.5 kg以上と比べ2.5 kg以下は約4倍であった(odds ratio=4.03;95 %CI:1.20~13.6;P<0.024).約70年前の負の栄養環境が将来のNCDの誘因となる可能性を改めて示唆した.糖尿病の未病化の先制医療は出生時体重を高く保つことであると考えた.

診断・治療(食事・運動・薬物)
  • 内田 順子, 壁谷 悠介, 及川 洋一, 田中 肇, 渥美 義大, 大澤 昌也, 香月 健志, 河合 俊英
    2016 年 59 巻 12 号 p. 782-790
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2016/12/30
    ジャーナル フリー

    近年,Sodium-glucose cotransporter 2(以下SGLT2と略す)阻害薬による肝機能の改善効果が注目されているが,十分に検証されていない.本研究では,SGLT2阻害薬イプラグリフロジンを新規に処方した2型糖尿病患者150名のうち,処方開始後継続して経過を追跡できた94名について,6か月間における肝機能の推移を調査した.結果,投与開始6か月後の時点において,AST,ALT,γGTPの有意な低下がみられた(p<0.05).また,体重,HbA1cも有意に低下していた(p<0.05).次に,投与前後6か月間の体重変化率を3分位に分けて3群間で比較したところ,3群いずれもAST,ALT,γGTPの有意な低下がみられたが,これらの低下の程度は3群間で有意差を認めなかった.以上より,イプラグリフロジンは2型糖尿病患者で体重変化と独立した肝機能の改善効果を有する可能性が示唆された.

病態・代謝異常・合併症
  • 木村 和樹, 石坂 正大
    2016 年 59 巻 12 号 p. 791-797
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2016/12/30
    ジャーナル フリー

    本研究は糖尿病多発神経障害(DP)に伴い低下する身体機能・構造項目を二項ロジスティック回帰分析で検討した.対象はDM患者100例とした.身体機能・構造項目は,前方および後方10 m歩行速度,開眼片脚立位,Timed Up & Go Test(TUG),30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),下腿周囲長(CC)とした.DPは「糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準案」を用いた.二項ロジスティック回帰分析よりCCの萎縮と後方歩行速度の低下が抽出された.ROC曲線より,カットオフ値はCCが33.75 cm,後方歩行速度が0.905 m/sであった.非高齢患者はCS-30の減少,高齢患者は後方歩行速度の低下が抽出された.DPを有する非高齢患者は下肢筋力低下を生じ,加齢に伴いCCの萎縮を認めた.DPを有する高齢患者はTUGや後方への動的バランスが障害され,後方歩行速度の低下と関連があった.

症例報告
  • 奈良橋 俊子, 金澤 昭雄, 鈴木 瑠璃子, 福村 由紀, 藤谷 与士夫, 綿田 裕孝
    2016 年 59 巻 12 号 p. 798-804
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2016/12/30
    ジャーナル フリー

    症例は77才男性.71才より糖尿病で通院加療中,2011年5月,HbA1c 9.8 %と1ヵ月間で血糖コントロールが悪化し,インスリン導入となった.2012年4月さらに,コントロールが増悪し,糖尿病教育入院となり,この際,腹部単純CTでは明らかな膵臓の画像的異常を指摘できなかった.2013年2月の人間ドックにて膵体尾部萎縮と主膵管拡張を認め,IgG4 1410 mg/dLと高値で,同年3月,自己免疫性膵炎疑いにて精査加療目的のため入院.精査の結果,自己免疫性膵炎と診断し,プレドニゾロンの治療開始となった.糖尿病の経過中に特に誘因なくコントロールの増悪をきたし,2011年,2012年と画像的検索を施行しながらも,膵臓の画像的変化が軽微であり,明らかな異常と認識されることができなかった.血糖コントロールの増悪から自己免疫性膵炎診断まで約1年10か月と長い経過を要し,警鐘的事例のため報告した.

  • 春口 誠治, 竹邉 聖, 米村 栄
    2016 年 59 巻 12 号 p. 805-810
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2016/12/30
    ジャーナル フリー

    26歳女性.24歳時に胃癌に対し,胃全摘術施行.術後,ダンピング症状を呈し,分割食にて症状消失していた.妊娠判明後,分割食でもダンピング症状出現し,当科外来受診.外来にて持続血糖モニター(CGM)を施行し,食後300 mg/dLを超える高血糖とその後の急激な血糖低下による低血糖を認めた.血糖コントロール目的に入院し,6分割食の食事療法のもとCGMを装着した.その結果,食事開始から40~50分後に著明な高血糖,120分後に低血糖になっていたため,超速効型インスリン導入した.インスリン導入後も食直後の急峻な血糖上昇が抑制できなかったため,CGMの血糖変動を見ながら,インスリン注射タイミングを変更し,さらに食事摂取時間を延長することで,ほぼ目標血糖内にコントロールされた.退院後も良好なコントロールで,妊娠39週で健児を得た.ダンピング症候群の妊婦の血糖コントロールにCGMが有効と考えられる.

  • 大黒 晴美, 重田 真幸, 南方 瑞穂, 日高 尚子
    2016 年 59 巻 12 号 p. 811-818
    発行日: 2016/12/30
    公開日: 2016/12/30
    ジャーナル フリー

    症例は42歳女性,39歳時に乳癌のため右乳房全摘術・腋窩リンパ節郭清術を受けた.トリプルネガティブタイプと診断され,さらに化学療法・放射線療法を受けて標準治療を終了した.患者は治療継続を希望して化学療法を続け,この過程で抗PD-1抗体投与を受けたが同薬最終投与4週後に高血糖・ケトアシドーシスのため1型糖尿病と診断された.血糖値366 mg/dL,HbA1c 9.5 %,βヒドロキシ酪酸7581 μmol/L,血中Cペプチド値測定感度以下,抗GAD抗体・抗IA-2抗体は陰性だった.抗PD-1抗体は既存の化学療法に抵抗性である悪性腫瘍の一部に有効とされるが1型糖尿病を含む自己免疫疾患を引き起こす可能性がある.同薬投与に伴う1型糖尿病と診断された症例の多くでは発症直後より内因性インスリン分泌枯渇が認められている.本例にも同薬投与歴があることより副作用の可能性があると考えた.

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