糖尿病性末梢・自律神経障害を伴うインスリン依存型糖尿病 (IDDM) 症例にみられた糖尿病性下痢に対するsomatostatin analog: Sandostatin (SMS) の効果について検討した. 症例は39歳と36歳男性で, SMS (50μg, 2~4×/日, s. c.) により, 両例の1日便量・回数, 脂肪便は速やかに著明に改善し, 2週後には血糖, 中性脂肪, 遊離脂肪酸モチリン, ガストリン, グルカゴンとカテコラミンの低下傾向と, 胃排泄および腸管通過時間の遅延, D-xylose吸収試験とPFD試験上の改善をみた. 同時に起立性低血圧は改善し, 血中総蛋白, 脂質レベル, 体重は増加した. さらに, 両例に2~7カ月間のSMS長期投与を行ったところ上記効果は持続してみられ, 副作用もなく, 血糖コントロールは不変であった. このような下痢のみならず消化吸収の改善をももたらした興味深い臨床効果は, 本薬の示す消化管運動および腹部内臓循環への直接作用によると考えられた.
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