糖尿病およびその細小血管障害の病態を検討する目的で, 60名の糖尿病患者を対象に血液レオロジーに影響を与える赤血球膜シアル酸 (SA) と血清シアリダーゼ (SDase) 活性を測定した. 赤血球膜SAは酵素法, 血清SDase活性は螢光基質法を用いた. 糖尿病患者において赤血球膜SAは有意に低下し, 血清SDase活性は有意の上昇を認めた. 加えて, 細小血管障害合併糖尿病では赤血球膜SA低下, 血清SDase上昇の程度は増大し, 細小血管障害との関連を推測させた. また, 食事療法のみ (D), 経口血糖降下薬, インスリン療法 (In) の3群に分類するとD群とIn群において, 赤血球膜SAは有意な低下, 血清SDase活1生は有意な上昇が認められた. さらに, 赤血球膜SAと血清SDase活性は空腹時血糖, HbA
1と相関し, 血糖との関係を推定させた.
これらの事実より, 赤血球膜SAの低下はその陰性荷電の減少により, 赤血球凝集を引き起こし, 微小循環不全のために, 糖尿病およびその細小血管障害を悪化させると考えられた. さらに, これらの成績から, シアル酸代謝の測定は, 糖尿病治療の上で有用な臨床的パラメーターとなりうると思われた.
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